少女と、魔力の渦 3
魔力の渦から魔物が現れたことをランさんたちに言ったら凄く心配された。
フレネとウェアと一緒に向かったから、そんなに心配しなくても大丈夫だよとは言ったけれど無理はしないようにとは言われた。
こうやって心配されると何だか嬉しくなる。心配するって大切にしてくれているって証だもんね。
でも今回は大丈夫だったけれど、もっと危険な魔物が飛び出してくる可能性もあるから……そのあたりはちゃんと気を付けないと!!
「ねぇ、ウェア、もっと魔物出てくる可能性高いかな?」
「そうね。もしかしたらもっと危険な存在も出てくるかもしれないわ」
「……そうなると困るね。はやくどうにかしないと」
「そうね。ああいう魔物が出てくる可能性は低いとは思うけれど……。でも出るかもしれない」
魔物が出てきたら大変なことになる。私たちの住んでいる村の人たちは大体が戦える人ばかりだ。だからよっぽど強い魔物以外は大丈夫だと思うけれど……。
「魔力の渦をどうにか出来たら、良いこと起こりそうだよね」
「そうね。住めるようにはなるけれど……、でもあまりにも住みやすい場所になったらそれはそれで今、この地に来ていない魔物や人たちが溢れそうな気もするわ」
「……そっか。住みやすくするってことは、私たちだけにとってじゃなくて周りにとってもそうなるんだよね」
「そうよ。レルンダは『神子』だからともかく、他の人たちはそういう人たちに襲われたら大丈夫か分からないと思うわ」
「うん」
この土地はああいう風に魔力の渦があって、人が住めない土地で、だからこそ良い部分もあるともいえるのだろう。
私たちがこの場所で暮らしていることって、外の世界ではそこまで知られているわけではない。
私が『神子』であることを知られれば、私を狙う人もいるかもしれない。
それに『神子の騎士』だって、他とは違う力を持っていて……、もし大国から狙われるなんてことになったら、前のような状況にならないとは限らない。私たちはもう誰も失わないためにここにいるから、そういう失うかもしれない状況はそもそも作りたくない。
魔力の渦は早く浄化したいけれど、それを浄化しきった後に私たちにとって良い結果が残るかどうかっていうのは……正直やってみなければ分からない気がする。魔力の渦を浄化したところで思ったよりも住みやすくはならないかもしれないし、それか本当に住みやすい土地になって大変なことになるかもしれない。……うーん、難しい。魔物は出現させたくないから魔力の渦はどうにかしたいし、元々国があった場所の遺跡は住めるようにした方が嬉しい。
でも森全体が周りから色んなものが入ってきやすい……なんて状態になるのは大変なことだと思う。
「うーん、色々考えることが多そう」
「まぁ、まだ魔力の渦が完全に浄化されるのは先だからゆっくり考えてもいいと思う」
「そうだね」
うーん、どんなふうにするのが一番良いのだろうか?
魔力の渦が渦巻いているからこそ、あのあたりは危険な魔物が寄ってこないという利点がある。あの遺跡は朽ちているけれども、色んなものが残っている。そのあたりもあの魔力の渦のおかげともいえるだろう。
とはいえ、いざ魔力の渦がなくなったらその場に誰も入ってきてほしくないみたいなのは私の我儘な気がする。結局私たちがこの森の中で村を作って暮らしているのを知ったら、そこを狙ってくる人がいないわけではないと思う。
世の中悪い人ばかりではないけれども、誰かの物を奪うことばかり考えている人だっているのだから。
ウェアと話したことは、ランさんたちにも共有しておくことにする。だってこういうことはちゃんと相談しておかないといけないもん。
ランさんたちも私とウェアの話を聞いてから、難しそうな顔をしていた。
魔力の渦をどうにかしたら、あの遺跡も私たちの住む場所として広げることは出来る。これからどれだけ人が増えていくのかは分からないけれど、私たちはあの村を国にしたいって思っているのだ。
国っていうのはミッガ王国みたいに沢山の人が多くいる場所だ。多分、私たちが暮らしている場所は人が少なくて、周りに知られても国だとは認識されないかもしれないってきいた。
「人が少なければそれだけ他の国からは侮られるでしょうからね。とはいっても人を増やすにしても考えて増やさないと大変ですけどね。でも魔力の渦をどうにかしたらもう少し人は増やしやすくはなりそうですよね。森の外から侵略される可能性も高まるかもしれないですけど、人を増やしやすくなるのはある意味国の為になると思います。でもレルンダが、魔力の渦を浄化したくないって言うならしなくてもいいですよ。そのあたりはレルンダの意志を尊重します」
ランさんはどちらでも国の為になるなんてそんなことを言っていた。
なので、私がどうしたいかで決めてもいいなんてランさんは笑っていた。
これはドングさんたちも同意してくれたことらしい。
私は魔力の渦はどうにかしたほうがいいと思っているので、そのことをランさんに言った。
ランさんは「それなら魔力の渦を浄化した後、何か起きたとしてもこちらでなんとかしますから」とそんな風に笑ってくれた。




