少女、王国から帰宅する ②
「ミッガ王国では沢山の情報が手に入りましたから、まとめることが沢山ありますわ!」
「ランさん、楽しそうだね」
「ええ! だって沢山の情報が手に入りましたもの。まだまだこの村は発展途上だけれども、お金も手に入りましたし、これからミッガ王国との交流を深めることが出来るように目途もたちましたもの」
ランさんは、家に引きこもるようにずっとミッガ王国で手に入れた情報を取りまとめているようだ。
やっぱり時々、ご飯を抜くことがあるので、私を含む周りで食事の時間になると声をかけるようにしている。
ランさんは沢山の情報を取りまとめていて、こんなにも沢山情報を手に入れたんだなと思うと凄いなと思う。
私はランさんほどミッガ王国で情報収集が出来ていなかったから。
それにしてもミッガ王国では沢山の経験が出来た。その情報をもとにこの村を発展させることを私たちは考えている。やっぱり人が増えた分、もっとお店を増やしたりするべきだよね。お菓子なども食べれる場所があったら楽しいと思うし、これからの楽しみがどんどん増えていく。
「ランさん、次に作るとしたらどんなものになるの?」
「そうね。作るとしたら食事処とかでしょうか。金銭が手に入ったとはいえ、報酬を金銭で渡せるほどではありませんしね。この村独自のお金を製造できればいいのかもしれませんけど。鉱石が手に入る場所は山にあるので、鋳造を目指してみてもいいかもしれません。ただ私たちの村は敢えて知名度が上がらないようにしているので……その作ったお金を使って外で買い物をするというのは難しいですからね。
今回のようにミッガ王国に向かって金銭を手に入れることと、反対側の国に何度か向かい、お金を手にすることも重要ですね。歩道などの道を整えていくというのも必要ですし……。まだまだ村であるこの場所を国にすることは簡単ではないですからね。でもそろそろ街にはなってきていますね」
「そっかぁ。結構規模もでかくなっているもんね。少しずつ人も増えて、この場所も整ってきていて――そういうのが実感すると嬉しいね。何だか手作りの、一から作りだしたものだって感じでワクワクする」
「ええ。そうですね。レルンダは特にミッガ王国でアリスとのわだかまりを解消できましたものね。それでレルンダの気持ちも以前よりもずっと前向きになっているのかもしれませんね」
「そうかも」
アリスとのこと。
ずっと気になっていたアリスと、私は本当の意味で姉妹になれた。私はそれが嬉しくて、前よりも色んなものにワクワクしているのかもしれない。
決して簡単にはいかないことばかりだけれども、少しずつ、この場所は大きく成長していっている。
私が神子である事実は公にはなっていない。
公にはなっていないからこそ、現状こうして穏やかにすごせていると言えるだろう。
――私が神子であることが公になって、神子の力を狙う人がいたら平穏と呼べる日々が崩れてしまう可能性も高い。
その時に備えなければならない。
「ランさん、私が神子であることや、ガイアスたちが『神子の騎士』であることはまだまだ周りには言えないよね」
「ええ。まだ彼らに伝えるべきではないと思います。ただでさえこの場所にやってきて彼らは混乱しています。一気にそういう情報を与えればどんな風に暴走するか分かりません。特にガイアスの情報に関しては慎重に伝えた方がいいでしょう。ガイアスは彼らにとって神様のような立場になりますから。この場所を取りまとめているのはドングさんたちです。ガイアスを神様と彼らが認識するのならば、取りまとめているのがガイアスではないことに不満を抱くかもしれません。それはレルンダ、貴方にも言えることですが」
「私も?」
「ええ。今はまだ人数が少ないからどうにでもなってますが、神子である貴方が上に立たずに誰かの言うことを聞いて過ごしていることを不満に思う人だって出てくるかもしれません。そういう方が増えた場合は……レルンダとガイアスを表立って旗印のような役割に立ってもらわなければいけなくなるかもしれません。もちろん、私たちだって支えますが、そういう風になったら今以上にレルンダは今よりも大変な立場に行くかもしれません」
心配そうにランさんはこちらを見て言う。
そんなランさんに私は言う。
「大丈夫だよ。ガイアスとね、いってたんだ。一人じゃないから大丈夫だって。皆がいるから、そういう立場になっても大丈夫。すぐにではなくても、いずれそういう立場になった時、私は胸を張って、この村のために立つよ」
「ふふ、頼もしいですね。私も神子として、そして『神子の騎士』として堂々と立つレルンダたちを見るのを楽しみにしていますよ」
「うん」
ランさんとそういう会話を交わす。
私もガイアスも、この場所で上に立たなければならないのかもしれない。今のドングさんたちのように前に立って意見を言って、堂々としなければいけないのだろう。
それもランさんやガイアス達がいればやっていけると、私はそう思った。
――少女、王国から帰宅する ②
(神子の少女は、女史と会話を交わし、未来を思う)




