少女と、湖作り 2
「どのあたりに作ろうか」
「そうだな。湖を作るのならばどのあたりに作ればいいか考える必要があるからな」
私たちは今、ウェアの望みを聞いて、湖を作ることになった。
だけれど、村のどこに湖を作るかというのを私たちは話し合いを続けている。精霊たちも一緒になって、ウェアの作りたいと言っている湖を作るのを手伝ってくれるようだ。
風や土の精霊たちは、ウェアの存在を歓迎している。属性が異なる精霊だろうとも、同じ精霊であるというだけで仲間意識があるみたいだった。
でも力があり、自分の意志の強い精霊だと合う合わないがあるらしいけれど。だからフレネとウェアが仲良くやってくれていて私は嬉しいなと思った。
湖を作る場所が何処にしたほうがいいのだろうか。やっぱり今、村にそびえたっている精霊樹の近くがいいのだろうか。やっぱり村の広場から見える位置にあった方がいいだろうなとは思っている。
それにしても湖だと結構な深さを掘った方がいいのだろうか。水の精霊樹はどんなふうな環境だと育ちやすいとかあるのだろうか?
水の精霊樹も私が祈りを捧げたら、大きくなりやすかったりするのかな。
「ねぇ、ウェアは何処に作ってほしいとかある?」
「どこでもいいわよ。私は水の精霊樹をおいてもらえるだけでも嬉しいもの。此処に居る水の精霊は私だけなのに、心を砕いてくれているだけでも嬉しいもの」
ウェアはそんな風に言って微笑んだ。
ウェアは水の精霊樹をおいてくれているだけでも嬉しいと口にしているけれど、私はもっとウェアを喜ばせたいなと思う。
折角私と契約を交わしてくれて、一緒にいてくれているのだから。
「やっぱり精霊であるウェア様のためにも村の中心部に設置したいものだ。精霊樹が二つ見渡せる場所が出来たらそれは素晴らしいだろう」
「そうだよ。景観も素晴らしくなるし」
「何よりウェアを喜ばせたいもの」
皆も私と同じ意見を持ってくれた。
だからこそ、私たちは村の中心部に湖を作ることになった。
なんだろう、湖を作るというのはやったことがないからちょっと興奮してくる。
「ウェアはどういう湖にしたいの?」
「そうね。それなりの深さと広さがある湖がいいわ。深い湖になればなるほど、他の水の精霊も集まってくるかもしれないし、それに私も心地よいもの」
ウェアは出来れば深くて広いものがいいらしい。川だと危険な魔物もいるかもしれないと泳ぐことが出来ないし、水遊びをするのも難しいけれど、村の中で作った湖ならば泳いだりできるかもしれない。私は泳いだことはないからまずは練習からしなければならないけれど……ちょっとそう考えると楽しみになった。
精霊樹のために湖を作るのだけど、その湖は他の用途でも使えそうで楽しみになってくる。
この村は住んでいる人がそこまで多いわけでもなく、湖を作るスペースは幸いにもあった。なので、今ある精霊樹の真正面に湖を作り、そこに精霊樹を植えることにする。
湖作りには村の皆が手伝ってくれることになった。イルームさんも「精霊様のための湖作り!! 是非参加したいです」と興奮していた。
とはいえ、イルームさんは特別な魔法を使えるわけでもなく、力が強いわけでもない。そんなわけで湖作りは気持ち程度に協力してもらうことになった。
活躍をしてくれていたのは、エルフたちである。
エルフたちは、精霊の力を借りて、地面に大きな穴を掘ってくれた。私も魔法を使ってまずは穴を掘った。
「こんな風に湖を作ることなんてないから楽しいわね。素晴らしい湖を作りたいわね!!」
フレネも張り切っていた。
私の傍をふよふよと浮かんでいるフレネは、楽しそうに、にこにこと笑っていた。ウェアはその様子を見て、嬉しそうに静かに微笑んでいた。
ウェアもずっと一人で朽ちて行こうとしていたから、こうして皆が手伝ってくれることが嬉しくて仕方がないのかもしれない。
でもそれも当たり前だと思う。
私はウェアのように一人で朽ちていく覚悟は出来ないと思う。ウェアは強い覚悟を持ってして、あそこに残ることを決めていた。私がたまたまあの遺跡に向かわなければウェアは此処にはいなかったのだなと不思議な気持ちになる。
全てが偶然で、たまたまが重なった結果だと思うと――そのたまたまが重なったことが嬉しいと思った。
深く地面を掘ることが出来た。これは落ちたら大変そうだ。というわけで、水を入れるまでの間は落ちないように周りに土の壁を作った。
数日後、私たちはその掘った穴へと水を張った。
澄んだ水がこうしてたまると、何だか嬉しくなった。その中心に精霊樹の宿り木を植えに向かったのは、ウェアである。
宙に浮かんだウェアが、精霊樹の宿り木を作った湖の真ん中へと植える。
精霊樹が光った。私も魔法で翼を広げて、精霊樹の側により、祈りをささげるのだった。
――少女と、湖作り 2
(神子の少女は、湖を作り、精霊樹を植える)




