少女と、獣人の話 1
私はガイアスと手をつないだまま歩く。
猫の獣人たちと、ランさんも一緒だ。途中から子グリフォンたちも加わった。猫の獣人たちは、まだグリフォンたちがこの村にいることを知らなかったみたいで、驚いた顔をしていた。猫の獣人たちにとっても、グリフォンたちは特別なのだろうか。
何しているのー? とついてくる子グリフォンたちは可愛い。
これから、どのような話がされるのだろうという緊張はある。難しい話とは、どのようなものなのだろう。だけど、ガイアスもいるし、子グリフォンたちもいる。皆が居るから、どんなに重たい話でも受け止めて、頑張れる気がする。
アトスさんとガイアスの家に到着する。ガイアスのお母さんはもうなくなっていて、大きな家に二人で住んでいる。
その家の中に皆で入る。
私はガイアスとランさんの間に座る。私についてきていた子グリフォンたちは私たちの後ろに座り込んでいる。
そして目の前には猫の獣人さんたちと、アトスさんが居る。
「レルンダと、ランドーノはどこまで人間と獣人の関係について知っているんだ?」
「私……、よく、知らない」
「私はある程度は知っています。ただ、人間側の認識しか私は把握できていないので、獣人側のことはわかりかねますわ」
人間と獣人の関係についてそこまでよく知らない私と違ってランさんは、ある程度知っているらしい。凄い。私は人間側でどう言われているかとかも、よくわかっていない。
アトスさんがランさんの言葉を聞いて口を開く。
「……人間側ではどう伝えられている?」
「そうですね。昔は共存して暮らしていたが、ある時、獣人たちが獣の本性をむき出しにし、野蛮な行為を繰り返し始めた。それゆえに、人間は獣人たちを管理することを決めたというのがこちらで伝えられている歴史ですね」
「それは……っ!」
ランさんが言った言葉に、猫の獣人の内の一人が声を上げる。獣人たちはとても優しいのに、どうしてそんなひどいことを言えるのだろうと思ってしまう。
「声をあげないでください。私を含めその言い分がおかしいとわかっている者も多く居ます。ここでこうして獣人たちと交流を持ってみて、改めて人間側で言われている獣人は野蛮で理性のない獣である、故に人間よりも下の存在であるなんて一部で言われている事が人間側にとって都合が良いものだということぐらいわかっております。ただその考え方が正しいと信じ切っている者もおります。またその考え方が正しいものではないとは分かっていても、利益のために人間以外の種族を奴隷とする人間はそれなりにいますもの」
ランさんは淡々と語る。上とか、下とか、どうしてそんな風に決めつけるのだろうと悲しくなった。人間であるランさんも、獣人である皆も、家族であるグリフォンたちやシーフォも私は大好き。種族が違うからって、そんな風にするというの、私はよく分からない。
私と、獣人たちはちょっと違うかもしれない。だけど、話したらちゃんとわかり合えて、互いに好きになれるのに。言葉が通じて、仲良く出来るのに。それなのにどうしてちょっと違うからってそんな考えになるんだろう。
「……そうだな。それが人間側に伝わっている主張だ。だからこそ、我ら獣人は人間を警戒する。人間の中には、こちらに良い顔をして仲良くなったところを罠にかけるものだっているからな」
「……そう、なの?」
「ああ。俺の祖父もそれで捕まりそうになったという話を聞いている。倒れていた人間を助け、善意で村に住まわせたところ、奴隷商とつながっていたのだと」
アトスさんの祖父は、人間を助けて、住まわせて、そしたらその人は悪い人だったらしい。
どうして、そんなひどいこと、出来るんだろう。優しくしてくれた人を、売り飛ばすって。酷い状況に落とそうとするって。仲良しだって思っていた人に売り飛ばされてしまうことを想像すると、とても悲しくなった。
「それでだ、獣人側では逆のことが伝えられている。昔、まだ人間が国なんてものを持たず、我ら獣人たちと同じように小さな村を形成していた頃は互いに共存していたと。ただ、国を持って、力を手にした人間は我ら獣人を捕らえ、奴隷とし始めた。それに歯向かわなかったわけではなかった」
「……獣人は、国、とか、は?」
「作れたことはあった。ただその後に人間の国に負けた。そして皆バラバラになった。そしてこうして村単位でまたひっそりと暮らすようになったという話だ」
獣人の国は、出来たけれど、潰された。そしてバラバラに暮らしている。
人間と、獣人の関係。
それは、猫の獣人たちがこの村へと予定外の時期にやってきた理由に繋がるのだろうとわかった。
人間が獣人に何をしてきたか、アトスさんが今私に語っている以上のことを沢山してきたのだろうと想像できる。どうして、そんなこと出来るのだろうか。そう思うと、胸が痛い。
「人間は我らが村を作ってひっそりと暮らしていても場所を知ると行動を起こしていくものでな……」
アトスさんはそういって、猫の獣人さんへと視線を向けた。
猫の獣人さんはアトスさんの視線に頷いて、口を開いた。
「……俺の村は、人間に襲われた」
人間に、襲われた?
私の頭の中は真っ白になる。
―――少女と、獣人の話 1
(多分、神子な少女は人間と獣人の関係を改めて聞き、猫の獣人の話に耳を傾ける)




