少女と、遺跡 2
「では行きましょうか」
遺跡に向かう日はすぐにやってきた。私が遺跡に向かうことを楽しみにしていたから、余計に時間が経つのがはやく過ぎて行ったように感じられた。
私は遺跡に向かえることを思うと、どんなものが待っているだろうかとドキドキしてしまう。――誰かが昔生活をしていた場所、今は誰も住んでいない場所。
そんな場所に向かうこと自体初めてだから、余計に色んな事を考えてしまう。
今回、以前遺跡に向かったランさんやニルシさんたち、そして新たに遺跡に向かう獣人たちや民族の人達数人、後は私とガイアス、グリフォンであるリルハとカミハの夫妻とフレネと一緒に向かうことになっている。
「レルンダ、気を付けてね。危険は少ないと思うけれど無理はしないでね。そしてニルシさんたちの話をちゃんと聞いてね」
「うん」
「レルンダ、何をみつけたか教えなさいね!! 楽しみにしているわ」
「レルンダちゃん、気を付けてね」
「うん」
ゼシヒさん、カユやシノミの言葉に私は頷く。
今回、人がいる場所に向かうわけではないけれど、それでも何が起こるか分からないという緊張感は持って出かけた方がきっと良いだろう。
絶対に大丈夫――なんていうのはない。私が神子で、少しだけ人より運が良かったりしたとしてもアトスさんの時のようなことは起こりえるのだから。
だから大切な人たちのことを失わないように、私が無茶をして皆に心配をかけないように――しっかり大人の人たちの話を聞いて慎重にやっていこう。
「ぐるぐるるるるるる(こうしてレルンダと一緒に出掛けるのも久しぶりね)」
「ぐるぐるるるるるるるる(俺達がレルンダのことは守るからな)」
リルハとカミハがそんな言葉を私にかけてくれて、何だか安心して、二匹の頭を撫でる。気持ちよさそうに「ぐる」と声をかけるリルハとカミハが可愛くて思わず笑みが零れた。
「私もレルンダが危険がないようにするからね」
「ありがとう。フレネ」
初めて向かう場所に行く。そのことには緊張もある。だけれども皆が居るのならばきっと大丈夫だろうと安心が出来る。
「いってきます!!」
そしていってきますと声をあげて、私は遺跡へと向かう。
「レルンダ、ガイアス、私たちの後をしっかりついてきてくださいね。遺跡までの道は危険は少なかったですが、それでも用心するのにこしたことはありませんから」
「うん」
「ああ」
遺跡に向かう子供は、私とガイアスだけだ。
だからこそ、ランさんは気を付けてくださいねと再度言う。
遺跡方面へは私もガイアスも行ったことがない場所だから、興味があるものは結構周りにあったりする。これが遺跡に向かうという道中ではなかったら、寄り道をしたくなったかもしれない。でも今回はニルシさんやランさんたちの話をしっかり聞かないと。
それにしてもこの森の中に村を作ってそれなりに時間が経過したけれども、それでもこの森の中で知らないことはまだまだあるのだ。知っているつもりで知らない世界が沢山、此処には広がっている。それを知れば知るほど楽しい気持ちになってくる。
「ねぇ、ガイアス。遺跡、どんな感じだろうね?」
「楽しみだな。昔、この場所に住んでいた人たちがどんな暮らしをしていたかしれたら楽しいよな」
「うん。楽しみ。此処でどんな暮らししてたんだろうね。昔だと……今と生活も違っただろうし。ランさんの話だと、魔法の技術が発達していたっていうもんね」
魔法の技術が今より昔が発達していた――と言葉だけで聞いてもあまり実感は分からない。
ドアネーアから記録器のことも聞いた。それは目の前の光景を精密な絵のような形で残せるものらしい。絵とはまた違うらしいけれど、それもいまいちぴんとこなかった。実物がもし見つかったら、それか実物をいつか再現を出来たら、そのドアネーアが言っているものがどういうものなのか理解出来るだろうか。
ランさんは是非ともその記録器を生み出したいと言っていた。有言実行で、やりたいことを自分の手でやり遂げようとするランさんならばいつかその記録器とよばれるものも生み出せるのではないかと思う。もしそれを作る手助けが私に出来るのならば、喜んで手伝いたいとも思った。
遺跡までは何日かの道のりを歩く必要があった。
身体強化の魔法を使ったり、グリフォンたちに乗せてもらったらもっとはやく移動は出来るだろうけれども、今回は急ぎというわけでもないので、ゆっくりと私たちのペースで歩いている。道中で食べるものは村で作った保存食や、道中で狩った魔物のお肉を焼いたものである。
こちらが何か食べたいなと思った時以外に魔物が出現することはなかったから、とても平穏な道中だった。
ランさんは
「遺跡でまた調査が出来るなんて楽しみですわ。今度の調査ではどんなものが発見できるでしょうか。昔の文明についての明確な資料がもっと出てきたらきっと楽しいのですけれど……ブツブツ」
遺跡が近づいてきているのがよほど楽しみらしく、近づくにつれて興奮して仕方がない様子を見せていた。
私やガイアスよりも落ち着きがない様子で、その様子を見ていると私は落ち着いて行動しようと思った。
落ち着きがないランさんはニルシさんを含む周りの人たちに注意されていた。
そんな道中を経て、私たちは遺跡へとたどり着いた。
――少女と、遺跡 2
(神子の少女は遺跡へとたどり着いた)




