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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、グリフォン 2

「ぐるぐるぐ~」

「ぐるぐるぐる~」

「ぐる、ぐる、ぐるるる~」

「ぐるる、ぐるる、ぐる、ぐる~」



 目の前で子グリフォンたちが鳴いている。これは何をしているかというと、私がなんとなく覚えていた歌を歌ってみたら、子グリフォンたちも真似して鳴きはじめたのだ。

 私が口ずさんだフレーズ、本当に小さな声でのそれを聞きとって真似するなんてびっくりした。


 でも何だか可愛い。


 このグリフォンの巣には、大人のグリフォンが六匹と、子グリフォンが四匹いる。子グリフォンたちと私はともに過ごすことが多い。大人のグリフォンたちは、狩りをしたりとかあるもの。

 六匹のグリフォン全てが私によくしてくれている。もちろん、馬さんも。その中で特に私の面倒をよく見てくれる大人グリフォンがいる。目に傷跡があるグリフォンなのだけど、子グリフォンの二匹のお母さんなんだと思う。多分。正直グリフォンの雄雌の違いは私には分からないけど、お母さん? と聞いたら「ぐるっ」と答えられたから多分そのはず。



「ぐる、ぐる、ぐるるる~」


 子グリフォンたちは楽しそうに歌っている。子グリフォン聖歌隊とかそんな思い付きをしてしまった。でもそういうの本当にあったら和むと思う。



 私がもっと色々歌を知っていたら子グリフォンたちに教えることが出来たかもしれないけれど、私はあまり歌というものを知らない。歌とか、音楽とかはお金を持っている人たちがたしなむものだし、私が知っているのは村で誰かが歌っていて、なんとなく覚えたものとかそういうのしかない。

 子グリフォンたちは、私を囲んで、ぐるぐる回りながら歌い始めた。さっきまでちゃんと四匹並んで歌ってたんだけど、動きながら歌いたくなったみたい。ぐるぐる回りながら歌うことがなんだか楽しいみたいだ。私は目が回ってきたので座り込む。


 巣の中心に座り込む。この巣は大人グリフォンたちが作ったものだ。私がきてから拡張してるのを見たから、おお、ああやって作るんだって驚いたもの。

 しばらくして歌うことに飽きたのか、子グリフォンの一人が私にべたっとくっついてきた。温かい。翼を撫でる。気持ちよさそうに鳴いている。喜んでもらえてうれしい。



 そうすれば、歌っていた他の三匹も「私も私も」とでもいう風に鳴いて私に近づいてきたので、全員を撫でた。

 もふもふして、こちらも気持ち良い。

 私は撫でれてもふもふで、嬉しくて。

 子グリフォンたちは、なでられて、気持ち良い。

 なんて互いに良いことだらけだなどと考える。



 魔物たちは、名づけに特別な意味があるって村のおじいさんがいっていた。思えば、もう亡くなったあのおじいさんは両親に対して、姉と私を差別しすぎだとそんな風に注意してくれていた。良いおじいさんだった。

 そのおじいさんは昔色々なところを旅していたらしくて、それで話を聞いたのだ。それを思い出したから、グリフォンたちに名づけをしていいものか悩んでしまった。グリフォンたちや後、馬さんにとっても名づけが特別な意味を持つなら、名前をつけたりしていいものだろうかと。でもまぁ、今のところ名づけしていなくても、問題なく暮らせているから他のことを先にして後回しになってしまっているのだけど。

 ちょっと考え込んだ私を、子グリフォンが覗き込んでいる。

 どうしたの、といっているのだろうか。言葉が分からないからなんて鳴いているか分からないけど、多分、そうだと思う。



「心配してくれて、ありがとう……」

「ぐるっ!」



 当然だとでもいう風に子グリフォンは鳴いた。

 その日、子グリフォンから何か聞いたのか、お母さんグリフォンが何処から持ってきたのか、色々なものをくれた。それは、グリフォンが巣にため込んでいたものだったり、巣の外からとってきた果物とかだったり、色々である。


 これから、どうしようか。

 それを考えるけれど、今の穏やかな日々が心地よくて、決め切れていない。ひとまず、グリフォンや馬さんに甘やかされながらのんびりと過ごしてしまっている。


 グリフォンと馬さんにブラッシングを最近よくしているから、ブラッシングの腕は上がった気がする。でもそれ以外は特に何もできていない。

 子グリフォンたちとの歌には、途中から大人グリフォンたちも加わった。大合唱と言えそうなほどの声で、歌うグリフォンたちを見て楽しかった。馬さんも頑張って歌おうとしていたけれど、グリフォンほどうまく歌えなくて、ちょっと落ちこんでいた。



 歌を歌って、ブラッシングをして、子グリフォンたちと遊んで、大人グリフォンや馬さんに世話をやかれて、そんな日々が過ぎていく。

 そんなある日狩りから戻ってきた目に傷があるお母さんグリフォンが怪我をして帰ってきた。大けがというほどではない。だけど、私にとってショックだった。



「グリフォン、さん……」



 ショックを受けた私が逆にお母さんグリフォンに慰められてしまった。狩りをするってことは、それだけ危険なことでもあるけど、今まで皆怪我もせずに帰ってきていたから、怪我をしているのをみるとショックだった。

 ……グリフォンたちが大好きだから、怪我をしてほしくないなって、怪我をしたお母さんグリフォンのことを思い浮かべながら考えた。



 怪我をしたあとから、何日もずっと考えていた。



 そしたらある日、少し不思議な夢を見た。なんか問いかけられた気がする。起きた時に夢の内容は覚えていなかったけれど、頷いたような、そんな気がする。

 そして夢を見て、目が覚めた後、お母さんグリフォンさんに変化があった。



 

 ―――少女と、グリフォン 2

 (多分、神子な少女はグリフォンと馬さんとの生活に心地よさを感じている。そして、大好きだから怪我をしてほしくないとそう願った)



 

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