少女と、遺跡に向かう計画 2
「レルンダ、遺跡へはまず、少人数で向かってもらう事にしようと思います。まずは調査を行って、安全性が確認できてから、レルンダが遺跡へ行くことにしましょう。私も調査に行こうと思います」
「ランさんも?」
「ええ。忘れ去られた遥か昔の国の遺跡というのは、興味深いものですから。それに研究者である私が行くからこその発見もあるのではないかと思います。私ももっとこの村のために力になりたいですから」
遺跡へ向かう計画――まずは、調査に何人かが向かうことになっているようだ。
私やガイアスはまだ子供だから、先に大人たちから向かうんだって。ガイアスは私よりも年上だから、もうすぐ成人はするだろうけど、この村の中ではまだ子供に分類されるのだ。
それにしてもランさんは遺跡に向かう不安などよりも、遺跡でどれだけ新しいものが見つかるだろうかという興奮でいっぱいのようだ。
本当にランさんは、新しいことが大好きだなとそんな風に思う。
「ランさん、それは危険ではないの? 大丈夫?」
「心配してくれているのですね。ありがとうございます。大丈夫ですよ。ニルシさんたちが訪れた時には危険がなかったということですから、危険な目に陥る可能性は少ないでしょう。あとですね、レルンダ、もしレルンダが許可を出してくださるのならレルンダが契約している誰かを一緒に遺跡の調査に向かわせることは可能でしょうか?」
「うん。もちろん。大丈夫」
グリフォンやシーフォ、フレネたちが一緒に行った方がきっと、皆が危険に遭遇する可能性もぐっと下がるだろう。
ドアネーアはまだ小さいから駄目だけど、皆に言ったらランさんたちと一緒にいてくれるだろう。
「ありがとうございます。レルンダ。
危険性がないことが確認を出来たら今度はレルンダも一緒に遺跡に向かいましょうね」
「うん」
ランさんは私が頷けば、優しい笑みを浮かべてくれた。
ああ、でもランさんが遺跡に調査に行ってしまったら少しだけ寂しいなと思う。
ランさんと一緒の家で過ごしているから、しばらく寂しいなという気持ちで一杯になってしまうかもしれない。
でもランさんはこれだけ遺跡に行くのを楽しみにしているし、遺跡に行くことでこの村にも良い影響を与えられるかもしれないから、寂しいではなく、頑張ってねって送り出したい。
そう思っているのだけど、表情に出てしまっていたらしい。
「レルンダ、どうした」
「ニルシさん……」
私が広場でシーフォと一緒に歩いていたら、前から歩いてきたニルシさんにそんなことを問いかけられた。
顔に出ていたのだろうか?
「ニルシさんも、遺跡行く?」
「遺跡への調査か? そうだな。行くぞ。俺は一度行っているから案内も出来るしな」
「そっか」
折角帰ってきたニルシさんも、また遺跡に行ってしまうのかと思うとやっぱり少しだけ寂しかった。
「なんだ、寂しいのか?」
ニルシさんはそう問いかけたかと思えば、少しだけ乱暴に私の頭をわしゃわしゃと撫でる。髪がぐちゃぐちゃになる。
「遺跡は此処からそこまで遠くはない。この前のように長期間、此処を離れるわけでもないから、そんなに寂しがらなくていいぞ」
「……うん」
「まぁ、ちゃんと無事に帰ってくるつもりだから、心配はするな。ランのこともちゃんと、暴走しないように見とくから」
「うん。ちゃんと無事に戻って来て欲しい。でも確かに、ランさん、暴走しそう。遺跡とか大好きだから」
「だよなぁ……。好奇心旺盛すぎて、あいつは子供かって感じだよな」
「ランさん、大人だよ。知りたいこと沢山な人だけど、私、憧れる」
「……いや、レルンダはああならない方がいいと思うぞ? 目指すならこう他の大人を――」
ニルシさんは微妙な顔をしながら口にする。その最中に「何を言っているのですか」といつの間にか近くにいたランさんがニルシさんを軽くにらんでいた。
「何をって、ランみたいに子供みたいにはしゃぐ大人が増えても大変だろう」
「全く私は確かに好きな事だと夢中にはなることは自覚しておりますが、そこまで言われるほどではありませんよ。レルンダ、ニルシさんのような大人にもなってはなりませんよ? レルンダは今の素直で可愛いレルンダのまま大人になってくださいね?」
「……お前、ひどい言い草だな?」
「先に言ったのはそっちでしょ?」
ランさんとニルシさんは口喧嘩を始めてしまった。でも二人とも何処か楽しそうで、不思議だなと思う。
仲が悪いというわけでもないから、これが二人の交友なんだなとも思う。
「あ、そうですわ。レルンダ」
「どうしたの?」
急に口喧嘩をやめたかと思えば、ランさんはこちらを見る。
「遺跡に私たちが向かう前にですね。精霊樹の復活のお祝いをやろうと思うのですよ。私たちは精霊の姿が見えないので、レルンダは精霊たちに話を通しておいてほしいのです」
「そっか。もう一年経ったの」
「ええ。そうですよ。精霊樹が復活してもう一年ですからね。またお祝いをしたいのですよ」
「うん。言っておく」
私はランさんの言葉に頷くのだった。
――少女と、遺跡に向かう計画 2
(神子な少女は女史たちが遺跡に行く話を聞いて寂しさを感じる)




