少女の十二歳の誕生日 3
今日は私のお祝いも込めて、皆騒いでお祝いをする日にするとランさんが言っていた。
狩りとかもお休みにして、特別な日にするんだって。
いつもと違う服を皆に着てもらっているのは、今日が特別な日だというのを実感させるためというのもあるようだった。
私の誕生日だけ、そんなに特別な日にしていいものなのだろうか? と思ったけれど、神子という立場はそれだけ特別な存在だから、これから此処をもっと大きくしていくためにもそういう日を作っていく方がいいらしい。
これから毎年、私の誕生日はそういう日にするんだっていっていた。
お祭りの日のような、祝日のようなものとするっていっていた。そういえば、日付が分かるようなカレンダーもランさんが主導で普及していっている。
国によって祝日というものは色々異なっているらしい。
私は今までそういうのにかかわりがない暮らしをしていたけれど、この村だと精霊の復活のお祝いの日や、歌唱会や、私の誕生日といったものを祝日にしているらしい。
それにしても、こんな美しいドレスで一日を過ごすなんて初めてで、朝食を食べた後、どんな風に過ごそうかと悩んでしまう。
広場でのんびりとしながら、はしゃぎまわる精霊達を見る。精霊たちは、私の誕生日を祝ってくれている。この光景が全員に見えるわけではないというのは、なんだかもったいない気分になる。
広場の中心でフィトちゃんが美しい舞を踊っている。
――フィトちゃんの恰好はドレスではない。いつも着ている民族の服を少し豪華にしたようなそんな感じの服装だ。
ランさんが言うには、フィトちゃんがドレスを着るのが嫌だったみたいで、そういう風になったようだ。
それにしても真っ直ぐに私を見つめて、踊るフィトちゃんの舞は本当に美しい。
――その周りを精霊達も一緒に舞っている。
あとから他の民族の人たちや、翼を持つ者たちも、私へのお祝いにこちらにやってくるらしい。
沢山の人たちにお祝いをされるのは、何だか嬉しい。
昔は誰にもお祝いされることなかったのに、今はこれだけ多くの人が私の誕生日をお祝いしてくれている。——それが当たり前になったことがなんて幸せなんだろうと、私はそんな気持ちで胸いっぱいだ。
――姉は、どうしているだろうか。
ふと、そんなことを考えたのは去年、姉のことをサッダさんに聞いていたからだろうか。私にとって、姉という存在は近くて遠い人だ。
関わることもなく、話したこともない、だけど双子の姉。
「レルンダ、どうした?」
「ん、なんでもない」
ぼーっとしていると、ガイアスに声をかけられた。
ふと前を見れば、フィトちゃんの舞が終わっていて、カユがリリドをダンスに誘っていた。ダンスというものも、ランさんやサッダさんから教わったものである。
大きな街などでは、男女が手を取り合って踊ったりするんだって。
カユがリリドを誘っているのは、カユがリリドのことを好きだから一生懸命誘っているんだなと思う。
リリドは「何で俺がダンスを!?」とか文句を言っていたみたいだけど、カユが「やるの!!」と口にしていたというのもあって、そのまま二人でダンスを踊っている。
ちゃんとダンスというのを習っているわけではないから、足を踏んだりしちゃっているみたいだけど、楽しそうでいいなぁと思う。
じーっと見ていたら、私がダンスをしたいと思っているように見えたようだ。
「レルンダ、俺達もやってみるか? 上手く踊れるか分からないけれど」
ガイアスがそう言って、私に手を伸ばしてくれる。
ガイアスの言葉に、ガイアスと踊るのも楽しそう! とそんな気持ちになる。
「うん! 踊る!!」
ガイアスの手に手を重ね、私はガイアスと一緒にダンスを踊るのだった。
初めてガイアスと踊ったダンスは、足を踏んでしまったり、色々不格好だったけれど、それでもガイアスと一緒に踊ったのは楽しかった。
カユや私たちがダンスを踊り始めたからだろうか、他の人たちも興味を持った人たちが踊ったり、歌を歌ったりしていた。
なんだかそれだけでも楽しくて仕方がない。
誕生日だからとプレゼントももらえて、お祝いも沢山してもらえて、今日はまた幸せな日になった。
私ももう十二歳。
少しずつ自分も大人へと近づいてきている。
去年から比べるとそこまで変化したようには見えなくても、確かに私は少しずつ大人になっている。
「ガイアス、これからもよろしくね」
「急にどうしたんだ?」
「これからも、一緒がいいなって思ったから」
「そうか、ああ。よろしくな」
もっと大人になっても、これから年を重ねていっても――ずっと一緒にいられたらいいなという意味を込めた言葉にガイアスは笑ってくれた。
来年も再来年も、——もっと先も、何かが変わったとしても、こうして幸せな日々を過ごし続けられたらとそんな風に私は願った。
――少女の十二歳の誕生日 3
(神子な少女は、十二歳の誕生日に幸せをかんじている)




