少女と、戻ってきた人達 1
今日も朝からお祈りをしている。
探索に出た皆が、無事でありますように。そんなお祈りを。
イルームさんやビラーさん、それにフィトちゃんたちが張り切ってレルンダの祭壇と呼ばれている場所は少しずつ飾り付けられている。私しか使わないのにいいのかな? と思いながらも、楽しそうに少しずつ豪華にしているのを見ると止める気にはならない。
ランさんも好きなようにしてもらえばいいと言ってくれているしね。
私の所だけじゃなくて、他の祭壇も少しずつ飾り付けもされているんだよね。
こうして少しずつ変わっていくのだなと実感する。
探索に出かけた人たちはまだ、帰ってきていない。
――探索に出かけて、時間が経過している。今、何処にいるだろうか。今、無事だろうか。そんなことを探索に出かけた皆のことを考えると心配になる。
探索で何か見つけられただろうか。何かあたらしい発見があっただろうか。
変化をすることは不安もあるけど、楽しみもある。きっとどんな変化だって、皆となら乗り切れるってそう信じているから。
「ピキィイイイイ(レルンダよ、我は神に祈らぬぞ)」
「そうなの?」
「ピキィイイイイ(うむ。我そのものが神のようなものである。我は我を信じておるからな!)」
「そっか」
ドアネーアの言葉を聞きながら、神に祈らないようなそんな存在もいるかとそんな風に思った。
私たちが神に祈るのは、何でだろうか。うーん、そういう難しいことを考えても分からないな。私が私に影響を与えてくれている神様にお礼や祈りをするのは、私が与えられている力に助けられているからだ。
獣人たちやエルフたちがそれぞれの神に祈りを捧げるのは、その力に魅了されているからだろうか。
そう考えると誰にも祈らず、ただ自身を信じているというドアネーアは自分の力をどこまでも信じていて、何処までも自分に自信があるということなのかもしれない。
でもそれはドアネーアがドウロェアンさんの記憶を持っていても、まだ生まれたばかりだからだろうか。ドウロェアンさんは誰かに祈っていたりするのだろうか。今度、ドウロェアンさんに会いに行った時に聞いてみようかな。
「ドアネーアは、ニルシさんたちに会ったことないよね。帰ってきたら挨拶しようね」
「ピキイイイイィ(うむ。挨拶するのを許可しよう)」
偉そうな口調でそんなことをいうドアネーアの頭を撫でる。ドアネーアは口調は偉そうだけど、私が頭を撫でるのを嫌がったりはしない。寧ろ気持ちよさそうにしていたりする。可愛い。
そういえば、今はまだだけどドラゴンだというのならそのうち脱皮とかするんだろうか?
すべすべの鱗に触れながら、そんなことを思った。
「ねぇ、ドアネーア。貴方も脱皮とかするの?」
「ピキイイィイイ(当然だろう)」
そんな会話を交わしていたら、村の中が騒がしくなってきた。
祭壇を出て、村の端でのんびりドアネーアと過ごしていたのだけど、これだけ村が騒がしくなるのは珍しい。
何かあったのだろうか。
でも嫌な予感は全くしないから、悪いことではないとは思うけれど。こういう時、嫌な感じか、良い感じか、それが分かるのはとても助かると思う。
そんなことを考えていたら、ガイアスの声が聞こえてきた。
「レルンダ!!」
「ガイアス、どうしたの?」
やってきたガイアスの表情は、何処か嬉しそうだった。
耳や尻尾が動いていて、喜んでいるのが一目でわかる。
「ニルシさんたちが帰ってきたんだ!!」
「本当!?」
思わず私は声をあげてしまう。
先ほどニルシさんたちの話をしたばかりだったから、そのタイミングのよさに驚いてしまう。
ガイアスがこれだけ喜びを示しているということは、皆が無事に帰ってきたということだろうか。そんな期待をしてしまう。
「ああ。ついさっき帰ってきたんだ。レルンダも会いに行こう」
「うん」
ああ、よかった。ちゃんと帰ってきてくれてよかった。
ずっと帰ってきてほしいと祈っていたけれど、帰ってきてくれるだろうかという不安はあったから。こうして帰ってきてくれたということで、ほっとして力が抜けそうになる。
とりあえずちゃんと姿を見て、「おかえりなさい」って言わないと。
そんな思いで、ガイアスと一緒にドアネーアを背中に抱えて帰ってきた人達の元へと向かった。
その場に向かえば、村中の皆がそこに集まっていた。
そしてその中心にニルシさんたちやワノンが居る。元気そうだ。皆に向かって笑いかけている。
「おかえりなさい!!」
私はそんな彼らに近づいて、大きな声でおかえりなさいと告げた。
私の声が聞こえた彼らは私の方を振り向いて、「ただいま」と笑みを浮かべてくれた。
――少女と、戻ってきた人達 1
(神子な少女の元へ、探索に出かけていた人々が戻ってくる)




