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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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神官、疑う。

 目を覚ました時、見慣れた女神官はその目を大きく見開いて、慌てた様子で声を上げた。



「ようやく目が覚めたのですね」



 そういって女神官は嬉しそうにほほ笑み、水を差しだしてくれた。



 私はどうして眠っていたのだ、と思考する。思い出されるのは、神子が出現したのではないかということが国で囁かれ始めたことだ。この世界に存在するありとあらゆる神。正しく神を信仰しているものは、神の声を聞ける。我が国でも八年前までは神の声を聞く者が正しく存在していた。しかし、その方は亡くなってしまった。



 そして正しく神の声を聞ける者が、この国には存在しない状況の中で、神子様がこの世に現れているかもしれないという疑惑が出てきたのだ。私を含む十数人の神官は、どうにか神子様を見つけなければと、ともすれば死に至るかもしれないといわれている儀式を行い、神の声をなんとか聞くことが出来た。意識を失う前に私たちは教えられた神子様の情報を伝えた。と、そこまで思い出して、私は声を上げた。



「神子、様は……」

「神子様?」

「神子様は……お迎え、出来たのでしょうか」

「ええ、お迎えすることが出来ましたわ」



 私は女神官の言葉にほっとする。

 それから、儀式を行った者の中で真っ先に目が覚めたのが私で、他の神官たちはまだ目も覚ましていないと聞いた。そして私は四か月もの間臥せってしまっていたらしい。誰も死んではいないということも聞いて、私は安堵した。



 神の声を聞く、という行為を無理やり行った結果なのだからこうして目を覚ますことが出来ただけでも私は良かったと思っている。

 神の声を聞く者が居なかったからと、神子様を辺境の村に八年間も住まわせてしまったことに懺悔の思いを感じてならない。私たちが神の声を正しく聞くことが出来る存在であったのならば、神子様がお生まれになった時にすぐにお迎えすることが出来たというのに。



 そんな思いにかられている私に女神官は「食事を持ってきます」といって部屋から出ていった。



 神子様。

 神託で一気に伝えられた情報の中で、神子様の姿を一瞬おぼろげながら見ることが出来た。

 はっきりとは見えなかったが、見えた神子様の姿。その姿を思い起こして、実際の神子様のことに思いを馳せる。



 ああ、神子様。

 神に愛されし者。

 どのような方なのでしょうか。神子様が存在してくださるという奇跡に、その時代に、私が生きている事実にどうしようもなく幸福を感じてならない。



 早く、神子様にお目にかかりたい。神子様のために行動を起こしたいと私は思ってなりません。

 それから私のもとには何人もの方々が訪れてくれました。皆、私の目覚めを喜んでくださり、私のことをいたわってくださりました。



 私は、神託を聞くという大役をこなすまでは位の高い神官たちに声をかけられることもありませんでした。しかし、私がその大役を成し遂げたからこそ彼らは私の元に顔を出した。そのことには少しだけ複雑な気持ちを感じますが、いいのです。神子様をお迎えすることが出来たのだから。

 私はその場で神子様にお会いしたいと彼らに告げました。






 そしてその三日後、私は神子様の前に立つ手筈が整った。

 神子様はまだお披露目は出来ていないと聞いている。ただ神子様がそれはもう美しい方だということは、平民たちの間にも広まっているという。



 神子様を折角お迎え出来たというのに、まだ幼い神子様にきちんとした教育をできていないことには眉を顰めてしまった。私は下っ端の神官で、上層部の方々とはかかわりがなかったが、上層部の方針はそうなのだろうか。神子様に杜撰な教育を施し、恐れ多くも駒にしようなどと考えているのではないかという恐ろしい考えも浮かんでしまい、神子様をこの国はどうするつもりなのだろうかという不安も湧いている。



 神子様が心安らかに、日々を送れるようにしなければならないのは当然として、神子様に学ぶ場をきちんと与えなければならないという気持ちはある。神子様は、神子様であるからこそ、自分の立場などをきちんと理解しなければならないと思うのだ。あくまで、私の理想では。



 神子様の教育係であった女性が神子様に相応しくない態度をしたということで追放されたという話にも頭が痛い。教育係の女性のせいで、この地に不幸が訪れているとも言っていたが、眠っている間に起こっていることはまだ整理がつかない。



 ひとまず、神子様と会う事が出来た時に神子様に真摯に話しかけてみよう。

 私は、その時、神子様の元へ向かう最中には確かにそう思っていた。

 だけど、神子様の前に立って、神子様を見て、私のそんな思いは吹き飛んだ。



「私が神子よ!!」



 自信満々にそういう少女は、確かに美しかった。青色の瞳に、金色の、長い髪。そう、金色の・・・・。私はそれから目を離せなかった。



「……私は、イルームと申します」

「イルームね!!」



 それから、神子様と何を話したかは覚えていない。ただ、あたりさわりのない話をして私はその場から退室した。



 そして大神殿と隣接するように建てられている神官たちの移住区の、自室に向かう。

 私は、混乱していた。

 神子様の噂を聞いて不安はあったが、神子様にお目にかかれることは本当に楽しみだった。神子様に会える。神に愛されているものに会えると心が躍っていた。



 でも、違う。

 と、そう思ってしまった。



 なぜなら、一瞬だけ見えた神託の中での神子様の髪の色は金色ではなかった。おぼろげではあったけれど、色は少なからず見えた。髪の色は、あんなに美しい金色ではなかった。どちらかというと、もっと落ち着いた色。茶色の、どこにでもあるような髪色だった。



 神託で一瞬だけ見えた姿が、間違いなどということはあるのだろうか。私の記憶間違い……ということもあるのだろうか。いや、ない、そう私は思う。ならば、どういうことだろうか。まだ頭は混乱しているけれど、可能性を考える。



 神子様が髪を染めている……いや、これはないだろう。髪染めは高価であるし、辺境の村で手に入るとは思えない。そもそも、髪染めは髪を洗えば落ちるものであるから、神子の世話をしているものが神子の地毛の色を知らないわけがない。



 考えたくもない可能性だが、今この大神殿にいる神子様が本当の神子様ではないという可能性はあるのではないか。と、金色の髪をした神子様を見たあとだと思ってしまう。



 ……私は、もしかしたら、神子様は本当の神子様ではないかもしれないという可能性に思い至って、戦慄してしまった。




 ――――神官、疑う。

 (目覚めた神官は、姉と対峙して疑惑を募らせる)





 

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