少女、検証の結果を聞く 2
「問題点?」
「それは、なんですか?」
私とフィトちゃんはランさんを見る。
私は問題点が何処にあるのか分からなかった。皆が行動しやすくなるのならばそれだけ素晴らしいこととしか思えなかった。
どんなに距離が離れていてもフィトちゃんのことを視界に映していれば効果があるというのは、それだけ周りにとって希望を与えることだと思ったのだけど。何かあった時の大きな助けになるし。
「影響力が広いということは、それだけ多くの人に影響を与えるということです。味方しかいない場所で検証を起こしたので問題はなかったですが、もしフィトが戦闘の助けになろうと舞を踊ったとしましょう。その時に敵の視界からフィトが映るのならば……」
「魔物の機動力も、私の舞があげてしまうこともあるということかしら?」
フィトちゃんはランさんの言葉に思い至ったのかそう言った。
「ええ。その通りです。フィトの舞がフィトを視界に留めている全員に影響を与えるものだったのならば、敵対している勢力や魔物にも影響を与えてしまいます。こちらが力を与えられるだけでなく、向こうも力を受け取るのならばその舞は意味がありません。ただフィトが疲れてしまうだけのものになります。
それに安全に舞を踊るためにはきちんとした準備が必要になるでしょう。例えば味方の後ろでフィトが舞を踊ったとして、それがこちらの手助けになるかどうかが分かりません。幾ら近くても視界に留められていないと効果がないのならば使い勝手は難しいでしょう。そのあたりはこの前の検証で思いつかなかったので今度検証をしましょう。
それでですね。使い勝手が難しい力であるとは思いますが、この力は上手く使いこなせれば十分にこの村のためになる力だと思います。ただ、フィト。貴方が戦いの場には赴きたくないというのならば、これ以上深く検証をする必要はないかもしれません。村の中でだけその力を使うのならばそれも一つの選択ですから」
敵対している勢力がいる場で舞を踊る可能性があるというのならば、それはフィトちゃんが戦場に赴く可能性があるということだ。
村にずっといて、何かあった時に舞を踊らないのならばそういう検証は必要ないかもしれない。フィトちゃん自身は戦う力は持ち合わせていないのだ。ならば、そういう場にそもそもいかないという選択肢もあり得る。
「……いいえ。私は大人しく村にいることは望まないわ。この場所を国にしていくのならば、私の力は使うべきだもの。私は神の娘として守られてきたわ。危険な場所から遠ざけられてきた。だからそういう争いの場に向かうのは正直言って気が進まない。でもだからといって私たちにとっての大切な真なる神の娘が……私の友達でもあるレルンダが危険な場所に飛び込もうというのならば……、私はその助けになりたい。私の力が此処にいる皆の助けになるというのならば……ちゃんと使いこなして、その場に居たい」
フィトちゃんはそんなことを言う。
なんて決意に満ちた言葉だろうかと思った。
私はもし、何かあるのならば皆を守るために力を使う。あの魔物退治の時のように危険でも出来る限りのことはする。私がそうやって飛び込むことをフィトちゃんはあの時、いなかったのに分かってるのだろう。
友達のためにと言ってくれることが嬉しかった。一緒に頑張ろうとしてくれるフィトちゃんが真っ直ぐで、眩しかった。
「そうですか……なら、もっと検証をしましょう。フィトの力は使いこなすことが出来れば、とても強い力です。その力を使いこなすことは必ず私たちの力になります。上手くできれば対象を識別していくことも可能だと思うのですよ。誰にどんなふうに、力を与えるか。『神子の騎士』の力はまだまだ分からないことだらけです。でもだからこそ、色んな可能性があります。
一緒に可能性を引き出していきましょうね!! 分からなかったことが分かるようになることはとても楽しいことですから!」
「え、ええ」
ランさんはフィトちゃんの力が色んな可能性に溢れていることに興奮してならないらしい。
ぼけーっと二人を見ていたら、
「もちろん、レルンダの神子の力ももっと検証しましょうね。レルンダは色んな力を持ってますが、まだ色んな事が出来る可能性がありますから。それに年を重ねていくにつれて力が発現していく可能性もありますし。そう考えるとレルンダも『神子の騎士』も伸びしろが大きいですね。レイマーだけがもう成体ですけれど」
ランさんにキラキラした目でそんな風に言われた。
とりあえず、この前の短い検証で分かったことは少ないので引き続き検証を続けていくことになった。
私も私が何を出来るかもっと調べていかなきゃいけないなと思った。
私がゼシヒさんの所に戻った時、ドアネーアたちはまだ眠っていた。すやすや眠っていて、ほっとするのだった。
――少女、検証の結果を聞く 2
(神子な少女は神の娘の力の問題点を聞いた。そしてもっと自分の力についても知ろうと決意する)




