少女、村に戻る 2
私はランさんたちにドウロェアンさんの事を語った。
ドウロェアンさんがどんなドラゴンだったのか。
ドウロェアンさんが神子について教えてくれたこと。
ドウロェアンさんが卵をくれたこと。
それらを語った後、三人はそれぞれ反応を示した。一番、興奮した声をあげているのはランさんだった。
「ドラゴンですって!! 知性のあるドラゴンなんて本で見た事はあるけれども実在しているだなんてっ。それに長い時を生きているからこそ神子のことも詳しく知っているなんてっ。是非とも観察して本にまとめたい存在ですわ!! レルンダが聞いたドラゴンの話した神子についてもまとめなければなりませんしっ。ああ、もう何から手をつけましょうか」
「落ち着け、ラン。興奮するのは分かるが……」
「……ドラゴンという存在が山頂に存在するとは。世界は広いものだ」
ランさんを落ち着かせようとするドングさんと、ドラゴンという存在がいることに感慨深そうな顔をするシレーバさん。
エルフも長命種だけど、長命種のシレーバさんでさえもドラゴンには会った事がないのか。そう考えると私がドウロェアンさんに出会えて、話せたのってすごいことなのかもしれないって思った。
「この子、魔力を注げば生まれるってドウロェアンさんは言ってた。契約しても構わないって。だからこの子は私が育てる。あとドウロェアンさんはまた会いに行ってもいいって言ってた」
「まぁ!! でしたら、その時は私も是非!!」
「うん。それは頼めば多分大丈夫。ただ、別に話し合うべきことも増えたの。ドウロェアンさん、ビラーさんたちの神様だから、神様の卵をもらった私の傍に、ビラーさんたち居たいって言ったの。もっと村に関わりたいって」
興奮して自分もドウロェアンさんの所に行きたいと声をあげていたランさんは、私の言葉に真顔に戻った。
ビラーさんたちが私たちと仲よくすること。
仲良くなること自体は良い事だ。争いあうよりも仲良くする方が断然良いから。ただ、問題なのは彼らがこの卵から産まれる子に信仰を持っていること。
信仰っていうのは難しい。
現状、イルームさんのことは何とか暴走をしないように見れているし、民族の人達のことはフィトちゃんがまとめてくれているからどうにかなっている。
だけど、ビラーさんたちのことを受け入れて良い方向に向かうのかが分からない。ビラーさん達は空を自由に飛ぶことが出来て、やろうと思えば空から私たちを襲うことだってできる。
空を飛べるというのはそれだけ大きな力なのだ。
ドウロェアンさんが私と仲よくしてくれるっていうのだから、私達と敵対をすることはないだろうけれど――、本人達が敵対するつもりはなかったとしても生まれてくるこの子のためにと私達の望まないことを起こす可能性はある。
そう考えると、私は難しいなぁと思ってしまう。
「もっと村と関わりたいですか……。空を飛ぶ彼らが味方になってくれることは心強いですが、難しい問題ですね。ようやく安定して生活が出来ているこの村を混乱させるわけにもいきませんし」
「取り決めを作って、民族のものたちのように関わればいいのではないか?」
「いや、あ奴らは民族の者達以上に戦闘能力を持っている。下手な関わり方をしたら大変なことになるだろう。ただ、ドラゴンを信仰しているというのならば明確に敵対をしようとは思わないだろうが……」
目の前でランさんたちが会話をしているのを聞きながら、私もどうしたらいいかというのを考えることにした。
どんな関わり方をするのか一番良いのか、どんな風に接するのが一番良いのか。
卵を抱えながら考えていたら、急に眠気が襲ってきた。
話し合いの最中なのに、小さく欠伸をしてしまう。
山から戻ってきたばかりで私が思っているよりも体は疲れているのかもしれない。
「あら、レルンダ、眠くなってきたのですか? なら眠っていて良いですよ。帰ってきたばかりで疲れているでしょう」
「でも……話し合いは?」
「心配しなくて良いですよ。それはこちらでやっておきますから。卵は割れないように敷物をしましょうか」
ランさんは優しい言葉と共に、籠と敷物を持ってきてその上に私が抱えていた卵を乗せた。そして私の手を引いてベッドへと連れて行ってくれた。
「おやすみなさい、レルンダ」
「うん……お休み、ランさん……」
私はそう口にして、瞳を閉じた。ランさんの優しい声を聞きながら、私はそのまま眠りについた。
――少女、村に戻る 2
(神子な少女は翼を持つ者達のことを大人に相談して、眠りについた)




