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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、少年の葛藤 1

 獣人、商人、騎士。

 彼らはこの村に受け入れられる事になった。ミッガ王国の騎士達に対して、何も思わないわけではない。苦い顔をしている人達は沢山いたし、私だって複雑な感情を抱えたままだ。



 助けられた獣人の人達は共にここまでやってきたという事で少なからずの仲間意識を騎士に抱いているようだ。とはいえ、それでも完全に受け入れてるわけではないようで、助けられた獣人達も絶望に追いやられた事実と助けられた事実の狭間で苦しみを感じている。



 レルンダの祭壇と呼ばれている場所で今日もお祈りをする。この場所は他にも「神子の祭壇」といった呼ばれ方もしている。



 人が増えても相変わらずこの場所は私以外はお祈りをしない。寧ろ、私だけがずっとお祈りをしてきた場所だから私以外入ってはならないといった暗黙の了解になっているらしい。民族の人達やイルームは建物の外でお祈りをしていたりする。また、人が増えてきたのもあって人が入らないように柵も作られていた。



 お祈りをした後、外に出たらガイアスを見かけた。




 ――ガイアスは、ミッガ王国の騎士達がやってきてから広場に顔を出したりあまりしなくなった。彼らの事を視界に入れないようにしようと思っているのだと思う。



 私は憎しみを感じていない。そんな強い感情は心の中にない。たとえ、敵だった人でも味方になるのならば、味方にして仲よくしたいとそう感じてしまう人間だ。




 時々考える。ロマさんの事があった時から、特に。私はただの人間である、そういう実感の方が強いけれど、それでも私は神子なのだ。人間であるけれども、神子。それでいて、確かに他の人とは違う。だからこそ、時々、皆とは違うズレがあるような感覚に陥る。




 ミッガ王国の騎士にだって、皆と同じような憎しみは感じていない。複雑な気持ちはある。現状好きとは思えない。けれど、ニルシさんの言っていたようなどうしても許せないと言った気持ちはわいてこない。



 アトスさんの事が大切だった。大好きだった。頭を撫でられて嬉しかった。けれど、アトスさんを私達から間接的に奪った人達に憎悪を抱くかと言うと、違うのだ。悲しい、どうしてこんなことに、もうこんな事にならないようにしなければ――とは思うけれど、そういう感情はない。

 これは私の性格からなのか、それとも私が神子だからなのか、分からない。分からないけれど、複雑な気持ちはあっても憎しみや苦しさを抱いているわけではない私はガイアス達の気持ちとの間にズレがあると思った。



 でもずれがあったとしても、同じ気持ちではなかったとしても――苦しそうな顔をしているガイアスの事を放っておく何てしない。

 そう思って、私はガイアスの元へ向かった。そんな私の後ろをフレネがついてくる。



 ガイアスは、村の端の方で、急に素振りをしたりと体を動かし始めた。



 やってきた人達は村に住まう事が決まったものの、様々な問題もあるため数か所に集められている。ミッガ王国の騎士がこちらに何もする気がなくても、村の獣人達がミッガ王国の騎士に対して何か行動を起こさないとも限らない。商人たちだって、ランさんの友人がいるとはいえ何を起こすか分からないというのもあって監視の目が強いようだ。唯一、助けられた獣人達は騎士や商人よりは自由度が高いが、それでも問題が起こらないようにと周りは見守っている。



 彼らは村の中心部に近い部分に大体がいるので、今、ガイアスがいるような村の端には来ないのだ。それが分かっているからこそガイアスは彼らに会わないように村の端の方にいる事が多い。

 ガイアスは、ただ一心に体を動かしている。それは、考えたくないからなのかもしれない。ガイアスは苦しんでいる。

 そう思うと、居てもたってもいられない。




 ガイアスの気持ちが全て分かるわけでもない。ガイアスがどんなふうに苦しんでいるかきちんと知っているわけではない。ガイアスの気持ちを知った所で、私が言える言葉も出来る行動も何もないかもしれない。だけど、私はガイアスと話したかった。



「ガイアス」




 声をかければ、ガイアスは動きを止めた。

 私の傍にフレネはいるけれど、私の行動を止める事はない。ただガイアスに姿を現すこともなく、私の行動を見守ってくれている。



「レルンダか……」

「……ガイアス、お話しよう」



 大丈夫か、とは聞けない。だって見るからにガイアスは大丈夫ではない。平気な振りをしているのかもしれないけれど、ガイアスは苦しんでいる。

 ガイアスのためにも、まずはガイアスの話を聞こうと思った。ガイアスが苦しんでいると、私は悲しい。だから、少しでも話を聞いてなんでもいいから、ガイアスに何か出来ればと思ったのだ。

 私の言葉に、ガイアスは頷いてくれた。



 ―—少女と、少年の葛藤 1

 (神子な少女は憎しみの感情を持たない。だけど少年の事を放っておけないと思い、話しかける)



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