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少女と、様子のおかしい人 1

「ぐるぐるぐる~♪」

「ぐるぐる~♪」

「ぐるるるるる~♪」

「ぐっぐるるるる~♪」




 子グリフォン達が、私の目の前で歌っている。レマ、ルマ、ルミハ、ユインは歌を歌う事が好きだ。私もよく一緒に歌っている。こうして皆で歌を歌う事はとても楽しい、



 四匹が並んで歌を歌う真正面に、私は座ってる。先ほどまで私も混ざって歌っていたのだけど、少し疲れたから休憩中だ。ちなみにちらほらと精霊達の姿も見られる。一緒に踊ったりしているけれど、子グリフォン達には精霊の姿が見えないみたいだから私が時折何もいない所を見ているように見えるみたいで不思議そうな顔をしている。



 精霊達の近くで歌を歌うと、いつも彼らは近くに来る。何だか、以前より賑やかになって嬉しいなぁと心が温かくなる。




「精霊様が喜んでおるな。どれ、私も歌を歌おうか」

「シレーバさん、おはよう」




 のんびりしていたら、シレーバさんが近くにいつの間にか来ていた。精霊樹と精霊の復活により、エルフの人達は以前よりも明るくなった。いや、これが本来の彼らなのかもしれない。自分達が神とあがめている精霊達が復活していないのに、明るくなれなかったのだろう。——良い方向に向かっている事が嬉しい。

 シレーバさんが子グリフォン達と共に歌うのに混ざれば、シレーバさんの肩にいた精霊も一緒に踊りだす。彼はシレーバさんが契約している精霊だ。他の精霊達も混ざって、嬉しそうに飛び跳ねている。

 子グリフォン達は精霊達の姿は一切見えていないが、シレーバさんが混ざってくれただけでも嬉しいらしくまた声を響かせていた。

 私も一緒に加わって、歌った。

 そうしたら気づいたら、その様子を見て混ざりたくなった人たちが混ざってきて、最初は数人しかいなかったのに十人ほどになっていた。正直、とても楽しかった。



 しばらくしてそれが終わって、私は満足して、家に戻ろうと踵を返した。




 だけど、シレーバさんに呼び止められた。

「ああ、そうだ。レルンダ。少し気にかけてほしいんだが――」

 シレーバさんに言われた言葉に私は驚いた。



 シレーバさんが言っていたのは、ニルシさんや猫の獣人の人達がどこか様子がおかしいという事だった。








 私は精霊が復活した事に浮かれていて、気づけていなかった。でもそれを言ったら、シレーバさんは「精霊様が復活してからのようだ」と言っていた。



 私はシレーバさんの言葉を聞いてから、ニルシさんや猫の獣人の人達の様子を注意深く見る事にした。フレネにニルシさん達の様子を覗いてもらったり、自分でニルシさん達に話しかけたり。それをして、私もシレーバさんが言っていた意味を理解した。確かに、何か心ここにあらずといった様子なように見えた。



 特にニルシさんは、誰もいない場所に行くと思い詰めたような表情をしていたとフレネからも報告を受けている。ニルシさん達は、何を思っているのだろうか。何を考えてそんな表情を浮かべているのだろうか。





「フレネ、ニルシさん達、どうしたの?」

「分からないわ。私は精霊だもの。人の考える事は分からないわ。気になるのならば、直接聞いた方がいいんじゃないかしら」




 フレネはそんな風に言う。



 ニルシさん達は、どうしたのだろうか。何を考えているのだろうか。私にその憂いを晴らす事は出来るだろうか。




「でもああいう顔をしているならば、放っておいたらダメだとは思うわ。何だか、思い詰めている感じがするもの」

「……うん」

「ただレルンダがそこまで心配する必要はないかもしれないわ。だって、レルンダ以外にも皆がニルシ達の様子がおかしいと気にしているみたいだから。だからレルンダ一人で解決しようと思わなくてはいいんじゃない?」




 フレネに笑って言われて、私はひとまずランさんの元へと向かった。ランさんは絵本の量産に力を入れている。またもう少ししたら絵本の続きも制作するのだと張り切っていた。そのほかには、もっと他の本を生み出す事、そして教育現場を整える事もしていきたいといっていた。今は子供があまりいないこの村だけど、近いうちにまた獣人達の繁殖期が丁度来るらしい。それにまた人が増えていったら、もう少しこの場所を整えていく必要があると言っていた。

 そんな風に忙しそうなランさんだけど、私が相談したい事があるといったら嫌な顔一つせずに話を聞いてくれた。




「どうしたのですか、レルンダ」

「……あのね、ニルシさん達の様子がおかしいの、気づいている?」

「ああ、そうですね。そのことなら私も気にしていたのです。何だか元気がないというか、何か考え込んでいますよね。私が何か言っても、言い返しても来ないのでらしくないなぁとは思っていたのですが……」




 ランさんとニルシさんは、ニルシさんは否定する気もするけど結構仲良しだ。二人でこの村の事に対する意見を言い合っていたり、出会ってすぐに意見を言い合っていたのもあって遠慮がない。

 ランさんは少しだけ考えたような素振りをする。



「では……明日にでもニルシさんの所に聞きに行ってみましょうか」

「うん」



 そうして、私達は翌日にニルシさんの元へ話を聞きに行くことにしたのだった。





 ――少女と、様子のおかしい人 1

 (精霊樹が復活し、和やかな神子の村。しかし、様子のおかしい住民もいる)



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