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少女と、お祝い

 精霊樹が回復し、精霊達が復活した。——そのため、今日はお祝いをする事になった。

 精霊が見えない人達も、精霊達の復活を喜んでいる。それは、精霊達の復活に涙しているエルフの人達を見て喜んでいるからというのもあるだろう。



「……フレネより、小さい子多いね」

「私はレルンダと契約して、直接魔力をもらったから」



 フレネはエルフの人達の契約している精霊達よりも、少しだけ大きかった。何でだろうと思ったら、私と契約したかららしい。



 私とフレネは、お祝いをやっている広場の中心部にいる。精霊樹の前だ。是非そこにいてほしいとエルフの人達に言われて、ここにいる。精霊達は私に挨拶をする。精霊達と仲良くなれて、嬉しかった。

 フィトちゃんは、以前見せてくれた真なる神の娘に対する奉納の舞をまた舞っていた。フレネが私と契約しているのもあって、フィトちゃん達民族の人達にとっても精霊は特別なものという認識らしい。



 美しく舞うフィトちゃんの事を、精霊達は興味深そうに見ている。精霊の姿を見る事が出来ないフィトちゃんは分からないだろうけど、フィトちゃんの傍に何体もの精霊達の姿が映った。



 こうして踊る様を見ると、何だか気分が高揚してくる。フィトちゃんは自分には何の力もないと言っていたけれど、そんな事はない。フィトちゃんの舞は何だか力を持っているように感じられた。




「精霊達、結構復活したのか?」

「ガイアス……うん。沢山」

「そうか。俺にも見えたら良かったんだけど」




 隣に来ていたガイアスは、そう言いながらあたりをきょろきょろしている。見えないけれど、ここにいるのではないかと当たりをつけてきょろきょろしているようだ。肝心の精霊はガイアスの視線の先にはいなくて、「何しているんだろう?」とあたりを見渡すガイアスを不思議そうに見ている。




「ガイアス、全然違う方向向いている」

「え、まじか……。うーん、やっぱり俺には見えないみたいだ」



 ガイアスは残念そうに言って、精霊を見る事をあきらめたのか食事を取りに向かった。

 急に決まったお祝いだけれど、皆はりきって食事を作った。急いで狩ってきた魔物のお肉を焼いたものや、山菜を炒めたものなど、普段よりも豪華で多くのものが作られている。



 ごちそう作りはもちろん、私も手伝った。フィトちゃんやイルームさん達は私はやらなくていいとよく言うけれど、やりたいと言ったらやらせてもらえた。……私は神子かもしれないけれど、ちゃんと皆と同じように働きたい。皆が動いているのに、一人だけ休んでいるのは嫌だから。そういう気持ちが強いから、神子だからとやらなくていいと言われるのは嫌だなと思った。



 そのあたりも、ランさんやドングさんに今度相談してみよう。今は、お祝いの席だからそういう相談するのはどうかと思うから。




「レルンダ」

「フィトちゃん……舞、凄かったね」



 舞が終わったフィトちゃんが私の傍に来ていた。フィトちゃんは私の言葉に、照れていた。

 フィトちゃんの舞が終わった後は、エルフの人達が精霊と一緒に舞台に上がる。何をするのだろうかと思っていたら、精霊と協力して魔法を使っていた。とはいってももちろん危険性のないものをだ。精霊と共に魔法を行使して、風を起こしたり、土を動かしたり――目に見えて分かる効果をその場で発揮していた。

 精霊が見えない人達が精霊が復活した事を実感できるように、そういう事を行ったようだった。




「これは、凄い」

「精霊と共に魔法を行使すると、こうなるのか」



 口々に皆がそんな言葉を発していた。




 そしてまたお祝いの声が大きくなる。その様子に舞台の上に上がっていたエルフの人達は得意げな顔をしていた。その様子からもエルフの人達が精霊の事を大切にしている事がより一層理解できる。本当に良かったとその気持ちばかりが湧いてならない。



 その後はエルフの人達が精霊達にむけて、賛美の歌を歌い始めた。歌唱会でも歌っていた精霊をたたえる歌。沢山の歌を、エルフの人達は持っている。歌唱会で披露していなかった歌も今回、歌っていた。精霊達は歌が好きなのだろうか、エルフの歌に合わせて楽しそうに体を動かしている。

 エルフの人達の歌を、他の皆も真似して一緒に歌う。



 今日は精霊が復活したお祝いだから、その歌を一緒に歌いたいと思ったから。

 精霊達は益々楽しそうで、この光景を全員が見れない事を残念に感じてしまう。

 でも、楽しい。皆が楽しそうで、私も楽しい。皆が嬉しそうで、私も嬉しい。



「レルンダ、楽しそう」

「うん、楽しい」




 フィトちゃんの言葉に、私は頷いていった。もっとこの楽しい日々がずっと続いてくれたらいい、そう思って仕方がなかった。



 ――そしてこの、精霊樹が復活した今日を「精霊の日」として定めると決まった。精霊樹が復活しためでたい日だから、毎年お祝いをすることが決定したんだって。



 ―――少女と、お祝い

 (神子な少女の村では精霊樹が復活したお祝いが行われた。そしてそれは来年以降も行われる)




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