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少女と、精霊樹の復活 2

 目の前に幻想的な光景が広がっている。

 私の瞳には、沢山の精霊達の姿が映る。きちんと起きている精霊達。眠っている精霊達しか見ていなかったから、この光景が夢のように思えてしまう。



「わぁ……」



 精霊達は、私が目を覚ましたのに気付いたのか、私の周りに寄ってくる。



 言葉をしゃべることは出来ないようだけど、喜んでいるのが分かる。何だか、その事が嬉しかった。

 この場にいる精霊達は、大体が風と土の精霊である。シレーバさん達、この村にいるエルフ達は、契約精霊の復活により、様々な事が出来るようになるのだろう。




「レルンダ」

「シレーバさん……」



 美しい光景に、目を奪われていたらシレーバさんが声をかけてきた。

 シレーバさんの瞳には、涙が浮かんでいる。





「……精霊様達を、復活させてくれて感謝する。こうして精霊様達が復活出来る事を、我らは待望していた」



 そう口にするシレーバさんの肩には、子供のような姿をした精霊が一体乗っている。その精霊は私の方を見てにこにこしていた。




「こうして、精霊様達が復活する日を我らは夢見ていた。あの魔物が精霊樹の傍にいた頃、あれだけ絶望していたのが嘘のようだ。レルンダと手を取り合う道を選んでよかったと、この瞬間を見た今は心から思える」




 シレーバさんは、精霊達が復活した事に感動し、涙を流している。そんなシレーバさんを慰めるように、肩の精霊がシレーバさんの事を慰めるように手を伸ばしている。




 思えば、シレーバさん達は皆の事を生贄にしようとしていた。出会った頃のシレーバさんならば、こんな風に素直に感謝を口にする事もなかっただろう。人間の事を魔法を使えない下等生物と口にし、獣人達の事も、獣の血を引く野蛮な存在と口にしていた。でも、今はそういう風には思っていないだろう。

 人って、変わるものだなと思う。それと同時に、人同士は分かり合える可能性が少なからずあるのだ。その事が実感出来て、これから先にどんな人達と出会っていくのか分からないけれど、出来るだけわかり合えて行けるように頑張りたいなと思う。




「よかった。精霊達が元気になって」



 心から、精霊樹が復活して、精霊達が元気になってくれて嬉しいと感じる。



 この光景を生み出せる一因に自分がなれた事が嬉しい。……私はやっぱり、皆が喜んでくれると嬉しくて仕方がないんだ。私は皆から沢山の物を受け取っていると思う。皆が居るから、生活が楽しいのだと言えるのだ。だからこそ、こうして皆に何かを返せる事が嬉しいのだ。




「私には精霊の姿は見えませんが、精霊樹が復活しているのは分かります。こうして神子であるレルンダ伝説がまた一つ増えていくのですね。絵本の内容も充実しますわ!!」

「あああ、レルンダ様の偉業の場に私が居合わせる事が出来るなんて、なんていう幸福でしょうか。やはり、レルンダ様は私が敬愛すべき神子であると確信します。何て、素晴らしいっ」



 ランさんが絵本の内容が充実する、と興奮したように口にしている。その傍では、イルームさんがなんか泣いている。大泣きしているイルームさんの隣では、シェハンさんが呆れた目を向けていた。




「レルンダは……凄い。私には、精霊見えないけど、精霊が復活ってすごい事」



 いつの間にか傍に来ていたフィトちゃんは、キラキラした目を私にむけている。



 この場に、たまたまだけど翼を持つ人達はいない。そのことは良かった。まだ彼らがどういう存在なのか、明確に分かっているわけでもない。そこまで詳しく知られないほうが安全だろうってランさんが言ってたもの。



 村にいるエルフの人達は、すべてこの場に集まっている。精霊樹の復活はそれだけ、彼らにとっての悲願だった。ほとんどの人が、感涙している。




 子供をおなかに宿しているウェタニさんもそうだ。

 ウェタニさんは、膝をついて涙を流しながらおなかに手を当てている。

 そして、私の視線に気づいて、立ち上がって近づいてくる。



「レルンダ、ありがとう。……この子が生まれる前に精霊樹様が回復してくれて、良かったわ」




 そう言って、ウェタニさんは続ける。




「精霊樹様が回復していなければ、この子は精霊様という存在を理解せずに育ったでしょう。そして精霊様と契約を結ぶ事も出来なかったかもしれません。ですから、最大限の感謝を――」

「ウェタニさん……」




 生まれる子供が精霊を知らずに育ち、精霊と契約を結ぶことが出来ない。それは私には分からない事だけど、エルフ達にとってはどうしようもないほど重要な事なのだろう。だからこそ、ウェタニさんはこれだけ私にありがとうと伝えてきている。



 今、この場にいる皆のためだけではなく、これから生まれてくる命のためにもなれたんだなって思うと、心が温かくなった。


 それから、精霊樹の復活に沸いたその日、復活のお祝いをすることになった。



 ―――少女と、精霊樹の復活 2

 (神子な少女は、皆のためになれた事を嬉しく感じている)





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