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少女と、絵本 4

「こちらが完成した絵本になります。どうぞ、読んでみてください」




 ランさんは絵本が完成したことが嬉しいのだろう。にこにこ笑っている。絵本を受け取った私の隣には、絵本に興味を持ってここにやってきたガイアスやシノミ、リリドもいた。



 表紙に描かれているのは、シーフォに乗った私だ。



 シーフォは体が大きいから家の中まで入ってこれていない。外に出たら真っ先に見せよう。

 それにしても、改めて考えると何だか不思議な気分だ。自分が主人公のような立場で、絵本の中に登場するなんて。



 タイトルは『少女、レルンダ~お馬さんとの出会い~』と書かれている。がっつり私の名前まで入っている絵本。イラストの絵も私だとすぐ分かるもの。やっぱり少しだけ恥ずかしい。



 表紙をめくる。

 そうすれば、表題紙が現れる。表題紙に描かれている絵は、表紙の絵とほとんど変わらない。

 ガイアス、シノミ、リリドも興味津々と言った様子で、私のめくる絵本を見ている。一心に絵本を見ている私達をランさんたち大人の人達は優しく見守っている。

 次のページから白紙の遊び紙を挟んで本編だ。




『ある所にとある姉妹が居ました』



 一ページ目にはその文章だけが表示されている。そしてイラストには二人の少女が描かれている。姉だろう人物の絵が少しだけ私に似ているのはイラストを描いたエルフが姉の事を実際に知らないからだというのは想像が出来た。だって、双子とはいえ、私と姉は実際は全然似ていないから。




 その次のページは、『姉はとても美しく愛され、』と『妹はその影で生きていました。』で別れた見開きのページだ。私と姉の立場が対になるように、敢えて描かれている。イラストの姉の周りには人が集まっている。対して、私はひっそりと一人で過ごしている。その様子が見開きのページで対称的に描写されていた。



 ページをめくる。




 『ひっそりと生きていた少女の生活は、神官の訪れで変わった』と神官が家に現れるシーンが描写されていた。現実のようにお母さんに怒鳴られたりといった事は描かれていない。本当に簡潔に、描かれている。少女の生活の変化、神官の訪れ、それで二ページ使っていた。




『神子とは、神に愛されし者。

神に愛され、世界に祝福されし者。

神子のいる地は栄え、すたれる事を神は許さない。

「神に愛されし者、それが貴方なのです!!」』




 神官服を着たものが、姉に対してそう言い放っているイラスト。そしてその左下には、『なんと、姉の事を神子だというのです』と一文付け加えられている。それも見開きで描写されている。



 その次のページをめくる。




『姉が神子だということで、両親は大層喜びました』



 喜び合う両親と姉。その輪の中に、絵本の中の私はいない。

 その次のページには、『そして、影で生きていた少女は捨てられた』と一文添えられている。



 森の中へと放り出された私のイラストが描かれている。その表情は暗い。泣きそうなイラストだ。

 ページをめくる。



 次のページでも絵本の中の私は泣きだしそうな表情だった。




『一人ぼっちの少女は、森をさまよいます』



 森の中をとぼとぼと歩いている様子が、描かれている。その次のページでも、行くあてもなくふらふらと歩いている絵が描かれていた。そのページには、文はなかった。

 ページをめくれば、泣いている私のイラストがある。




『泣いている少女の耳に、何かの鳴き声が聞こえました』。

 泣いている私の側に『ひひひん、ひひーん』という鳴き声も文字で書かれていた。




『少女がそちらを見れば』

 次のページは私が後ろを振り向くシーン。そしてシーフォは影だけ登場している。



 ページをめくると、見開きで大きくシーフォが描かれていた。その姿に後ろ姿の私がびくっとしている。

『そこに居たのは、真っ白な馬の魔物でした』。




 ページをめくる。

『少女は驚いて声も出ません』

 固まっている私のイラスト。



 その次のページでは、『そんな少女に真っ白な馬は顔を寄せます』。

 ページをめくる。

 見開きでシーフォが私を背に乗せているところが描かれている。泣いていた私の表情が少しだけ明るくなっている。




『その馬は、とても心優しい魔物でした。

「お馬さん、ありが、とう」

 心優しい馬に出会って、少女は笑った』




 絵本はそこで締めくくられていた。最後のページに製作者についてなどとかもちゃんと書かれていた。

 表題紙から製作者などの書かれたページも含めて20ページにわたる絵本。文章が短く、わかりやすく描かれているもので、とても読みやすかった。



「凄いな」

「絵本の中のレルンダちゃんも可愛いね」

「絵本かー、俺もいつか出れるのかな!」



 ガイアス、シノミ、リリドは興奮したように声をあげる。私も、三人同様に恥ずかしいけれど、何だか興奮する気持ちを感じていた。



「絵本、凄いね、ランさん」

「ふふふ、今の私の全力を持って作ったものですからね! 是非ともこれを広めて色々と計画を進めるのです!」



 ランさんは何かを企てているような笑みを零して、楽しそうに言った。ランさんは本当に先の事まで考えているのだなと思った。

 その絵本を少しずつ量産して、皆に広めていくつもりらしい。

 

 ――少女と、絵本 4

 (神子な少女は、自分についての絵本を受け取る。そこには少女の人生の一部が描かれている)



 

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[気になる点] 話が入れ子になってる(´・ω・`)
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