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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、絵本 3

 絵本の作成は順調に進められている。とはいっても私自身が制作をしているわけではない。私の事について書かれる絵本だから、時々思った事を口に出したり、イルームさんが暴走しないようにしたりそういう事をしながら出来上がるのを見ているだけだ。



 ……絵本のイラストをランさんが描こうとして上手く描けなかったらしく、エルフのうちの一人が描くことになった。その人は本当に絵が上手で、私の事も実物よりもずっと可愛く描いてくれていて私はびっくりした。

 絵本のイラストを描く事が決まって、その人が絵が上手な事が広まって少し人気者になっていると聞いた。



 ランさんは絵本の出来に対して意気揚々と意見を言っていた。こうやってこの地で絵本を作れる事が嬉しいらしい。ランさんはずっと紙の制作を頑張っていたからこそだろう。

 それにしても、絵本はどんな出来になるのだろうか。私も今からドキドキする。





「……シーフォも、書かれるんだよ?」

「ひひひひーん(どんなふうになるか楽しみだ)」




 今、私はシーフォの背に乗って村の中を散歩している。この村は発展途上なのもあって、少し見ていないうちに色々なものが追加されていたりもする。私はそういう変化を見るのが楽しいと思った。

 ランさんなんかはいつ、どこに、何が出来たかというのとかを全部記録している。本当にマメだと思う。

 そういう記録を元に、これからこの村をどう発展させていくかなどを考えていくんだって言っていた。




「ぐるぐるるるー?(私はいないの?)」

「ぐるぐるる!(シーフォだけずるい)」




 出会った頃より少しだけ体が大きくなった子グリフォンのルミハとユインはシーフォだけ絵本に登場する事に対して羨ましそうにしている。シーフォの足元の近くで、いいなぁと鳴き声をあげる二匹は凄く可愛かった。




「ランさん、次も出したいって言ってた。そしたら皆も出るよ、多分」

「ぐるぐるっ!?(本当!?)」

「ぐるぐるるるるるる~(出られたらいいなぁ)」




 私の言葉に二匹とも嬉しそうに声をあげる。



 こうして契約獣達と過ごす時間は心地よい。私にとっての家族である皆との穏やかな日々。ずっとこうしていられたらいいと皆と過ごせば過ごすほどいつも願ってしまう。




 私はシーフォの上で日差しを感じながらランさんの言葉を思い出す。この絵本は情報操作の意味も込めているのだと。私を心配して私を守るためも含めて絵本は作られるのだと。あと、私が契約している魔物達が危険でないという事を分からせるためともこの前言っていた。

 私にとってシーフォやグリフォン達、フレネと言った契約している皆は大事な存在で、何か起こすなんて一切考えられない。今、この村に住んでいる皆も私の家族の事を危険なんては思っていないだろう。でも、これからはどういう人が増えていくのか分からないのだ。もしかしたら私の家族の事を危険だと言い張る人たちが増えたら考えたくない事だけど、私や家族達の事を排除しようとする動きもあるかもしれないらしい。




 絵本を発行して、それを広めることで私達に対する印象を良くして、そういう事がないようにしたいんだと。どんな絵本が生まれるのだろうかと私は少しだけわくわくしている。自分の事が絵本という形で広まるのは何だかむず痒い気持ちにはなるけれども、どんなものになるのだろうかと気になってしまう。

 出来る過程を時々見させてもらっているけれど、それでもやっぱり出来た時にどんなものになっているのだろうかってのとは別だと思う。




「ひひひひひひーん(どんどん出るのだろうか)」

「多分。どんどん、出すんじゃないかな」



 もしかしたら今こうしてのんびりと過ごしている光景も、絵本の一部として使われるかもしれない。……後から恥ずかしいと思う事とかなるべくしないようにしたいな。それがずっと残っていくとなるとちょっとだけ恥ずかしいもん。

 捨てられてからの私の人生。それが絵本という形で皆に広まっていく。




 ――思えば私の人生って、あそこから始まったとも言えるのだ。私は確かに息をしていたけれども、自分の意志というものがなく、ただ両親の言う事を聞いて、姉が第一だという生活が当たり前だと信じて、ただ生きていた。私は捨てられてから皆に出会って、私になった。自分の意志を持つようになったっていったらおかしいかもしれないけれど、本当にそんな感覚なのだ。



 だからこそ、捨てられてから始まる私に関する絵本は本当の意味で私の人生を描いたものと言えるのかもしれないなってシーフォの上でのんびりしながら思った。




「ぐるぐるる?(どうしたの?)」

「……絵本、楽しみだなと思ったの」

「ぐるぐるっ!(次出すなら私も!)」

「うん、可愛く書いてもらおう」



 ルミハやユインが絵本にかかれたら可愛いだろうなと考えながら私は思わず笑った。



 そしてそれからしばらくして、絵本が完成したとランさんが報告にやってきた。



 ―――少女と、絵本 3

 (神子の少女は、契約獣達と過ごしながら絵本の完成を心待ちにしていた。そして完成の報せが届く)


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