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少女と、歌唱会 2

 歌唱会の当日になった。



 その日は嬉しい事に快晴だった。

 歌唱会の会場は外だ。室内の大きな施設とかはない。いつか、そういう施設がつくれたら楽しいかもしれない。こうしてやりたい事がどんどん増えてくるのは本当に嬉しくなる。



 歌唱会が出来る事にわくわくした気持ちが湧いてきた。



 皆どんな歌を歌うんだろうか。民族の人達とかだと私が知らない歌とか知っていそうで楽しみだ。

 グリフォン達やシーフォもお気に入りの歌を歌うっていう事が、私は結構好きだ。皆が楽しそうにしてくれているし、私も何よりも楽しい。



 私が以前知っていた歌は、生まれ育った村でなんとなく聞いた事があった歌だけだったけれど、皆から歌を聞いたりして少しずつ知っている歌が増えていった。



 歌う事って、楽しい。

 だからこういう催しが行われる事が嬉しいなって思った。



 思えば、ガイアスと出会ったのも私とシーフォが歌っていたからなんだよねと思うと歌うという行為が余計に好きだなと思った。だって例えばあの時、ガイアスに出会わなかったら私と獣人たちの関係はまた違ったものになっていたかもしれない。

 獣人たちとは出会えたかもしれないけれど、違った形だったかもしれないとさえ思う。




「ではこれより第一回歌唱会を始めます。まず、この歌唱会は——」




 ランさんが気合いの入った司会をしている。ランさんが言うには都会だと声を遠くにまで届ける道具があるらしいけれど、此処にはない。だからフレネが風の魔法を使って皆に声が届くようにしてくれている。



 こんな事に魔法を使うなんてと呆れてる人もいたけれど、魔法が使えるのだからこういうことでも使いたいんだ。フレネは私が頼んだらやってくれたから良かった。

 魔法をもっと活用して生活していけるようになった方が便利だろうなとそんな風にも思う。

 ランさんの司会から歌唱会が始まった。私の隣にはガイアスがいる。ガイアスも歌唱会で歌は歌わない。ただ見る側として参加する。

 一緒に参加しようよと誘いはしたけれど、恥ずかしいからと断っていた。残念。でもこうして並んで座って、催しを見れるだけでも何だか嬉しい。こういう楽しい事をガイアスと共有出来るだけでも嬉しいと思った。



 まず、一番最初に歌を歌ったのはエルフのオンダイさんとザイラーリュさんという男女のデュエットだった。二人の歌声は本当に美しい歌声だった。エルフの人たちは声が綺麗な人が多くて、聞いていて心地が良い人が多い。

 この二人は夫婦だという話だ。

 エルフは子供が出来にくいからお子さんは居ないみたいだけど、仲が良い夫婦だ。

 二人の歌声が合わさって、美しい音色が奏でられている。エルフの人達の歌は精霊をたたえるものばかりだ。




 精霊をたたえ、精霊に向けられる歌声。

 それはいまだに精霊樹で眠っている契約している精霊達が早く元気になりますようにという願いも込めての歌に見えた。

 精霊樹は風に揺れてざわめている。

 精霊樹で休んでいる精霊達にエルフの人達の歌声が響いたら嬉しいと思った。




 次にシノミが歌を歌った。シノミの優しい歌声が心地よかった。シノミが歌っているのは、獣人の村に伝わっている歌らしい。

 それは森の中を生き抜くための歌だ。獣人たちに伝えられている歌は戦いの歌や生きるための事を歌った歌、またグリフォン達に向けられている歌など様々な歌がある。



 子グリフォン達も、

「ぐるぐるぐるる~」

「ぐるるるるるる~」

 と四匹達がかわいらしい声をあげていた。




 グリフォン達が何を言っているかまでは私にしか分からないものだ。だけれど何を言っているか分からなくても可愛らしい歌声に皆も癒されている。子グリフォン達はとても可愛い。私もずっと抱きしめたいぐらいに四匹の事が好きだ。



 出会った頃より少しだけ体が大きくなっている、子グリフォン達。



 そういえば、隣に座るガイアスも出会った頃より身長が高くなっている。私も背が高くなってるはずなのに、ガイアスとの身長差は広がっている。獣人の皆は背が高い人やガタイの良い人が多いからもっと大きくなるんだろうなと思った。




「ぐるぐるぐるるる~♪」

「ぐるぐるるるるるるる~♪」




 子グリフォン達は楽しいという気持ちを前面に出して歌っていて、見ていると頬が緩む。子グリフォン達の歌が終わると次はシーフォの歌だった。




「ひひひひ~ん♪」



 得意げに歌っているけれど、シーフォの歌は少しだけ皆と違った感じがする。ランさんが「シーフォは音痴なのね」と呟いていた。でも、本人が楽しそうだから何でもいいと思う。



「あはは、楽しいね、ガイアス」

「そうだな」



 私の言葉に、ガイアスも笑って頷いてくれた。

 そしてその後、私の番が来た。



 ―――少女と、歌唱会 2

 (神子な少女の村で歌唱会が行われる。それぞれの歌を聞きながら少女は楽しそうに過ごしている)



 

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