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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、獣人の村 2

 アトスさんとガイアスが案内してくれたのは、一軒の家だった。木でつくられた簡単な家だ。グリフォンたちが入ることも出来るようにか、入り口は大きい。元々空き家だった家を、過ごしやすくしてくれたらしい。



「ありが、とう」


 お礼を言って、アトスさんとガイアスと一緒に家の中に入る。その家の中には最低限のものしかない。けれど、こうして過ごす場所を提供してくれただけでも嬉しかった。


 子グリフォンたちは一緒に中に入ってきた。大人のグリフォンたちは、家の外に巣を作るといって行動をし始めた。ワノンが子グリフォンと私を見るために居残って、後の五匹の大人のグリフォンたちは巣作りのためにどこかに飛んで行った。



 それにしてもレイマーは金色の毛並だから、目立つなと飛んでいったのを見ながら思った。

 シーフォは、家の外でのんびりしている。



「グリフォン様たちはなんと?」

「巣をつくるって」

「そうか」

「ん。グリフォンたち、名前、あるよ?」



 アトスさんに思わずそういってしまったのは、アトスさんがグリフォンたちを”グリフォン様”とひとくくりにしていたからだ。グリフォンたちにはそれぞれ名前があって、別々の存在なのになって。



「……ああ、レルンダが呼んでいる名前か」

「あれってレルンダがつけたのか?」


 アトスさんとガイアスがそれぞれ口にする。



「ん、そう」



 名前がついているのだから、名前を呼ぶべきじゃないかと思った。私も名前を呼ばれるの、嬉しいと思う。村ではあんまり呼ばれなかった。だからレルンダって、名前を呼ばれると嬉しいと思う。

 アトスさんたちは恐れ多いのでは……といっていたけど、子グリフォンたちが「ぐるぐるるるる(レルンダのつけた名前呼ばれたい)」といっていたので、名前で呼ぶようになった。


 その日はその後、村の人たちによろしくお願いしますって改めて言いにいった。






 翌日、私はガイアスと一緒に居た。

 ガイアスに私にでも出来ることって何かないかって聞いたら、だったら子供だからお手伝いを色々したらと言われた。だから村の人たちのお手伝いを色々しようと思った。正直人とあまり関わってこなかったから、自分からお手伝いさせてくださいって言いに行くことは緊張するけど頑張ろうと思った。



 でも、その前にガイアスが村の子供たちを紹介してくれるって私の手を引いてくれた。こうして誰かに手を引かれて歩くのも、初めてだ。


 ガイアスと出会ってから、初めてがいっぱい。ガイアスと出会わなかったら、私こんな風に今ここにいなかったかもしれない。私がシーフォと一緒に歌を歌ったから、ガイアスが気になって見に来てくれて、こうして今一緒に居る事に繋がっている。偶然って、凄い。



 獣人の村は総勢30人ぐらいの村だった。

 そのうちで子供はガイアス含めて七人いるんだってガイアスが私の腕を引きながら教えてくれた。

 ガイアスを抜いて六人。

 私にとって多く感じるような人数だ。



 ガイアスは私の初めての友達。その、六人とも友達になれるんだろうか。友達が一人もいなかった私の友達が、そんなに増えるんだろうか。



 友達。その単語を思うだけで、何だかわくわくする。嬉しいなぁって思う。

 友達、なってくれるかな。

 ガイアスはなってくれたけど。その六人は、私の、友達になってくれるかな。



「どうした?」



 引かれた手をぎゅっとしてしまって、ガイアスにそう問いかけられた。


「……友達、なってくれる?」

「これから会うやつらがか?」

「そう」

「不安なのか? 大丈夫だよ。俺もいるんだからそんな心配しなくていい」



 ガイアスはくしゃりと笑って、私の手を引いていないもう片方の手で私の頭を撫でてくれた。ガイアス、優しい。優しいと、心がぽかぽかした気持ちになる。



「撫でられる、安心する」

「そっか。良かった」

「ん。ありがと」



 ちょっと不安だけど、ガイアスが笑っているから安心した。

 安心したから、頑張ろうって思った。

 それからガイアスに連れられて、六人の子たちの前に私は出た。ガイアスが私のことを紹介してくれて、注目されて、ちょっとドキドキした。



 ここが狼の獣人の村だから、狼の獣人の子供しかいない。色とか違うけれど。

 女の子が二人で、男の子が四人。

 男の子の方が多かった。



 ちょっと警戒されていたけれど、ガイアスに助けてもらいながら喋ったら女の子二人とは仲良くなれた。男の子四人とはそこまで距離を縮められなかった。私の髪、切ってなくて長く伸びていたから、ちょっと引っ張られてしまった。確かに切ってなかったけど。髪を引っ張った子にはガイアスが怒ってくれた。



 前髪も伸びているし、切った方がいいなと改めて実感した。村にいた頃も誰か切ってくれるなんてことはなかったので自分で適当に切っていた。それ以外長い髪を切る方法なかったし。


 捨てられて、グリフォンのところで生活している間は切ること忘れていたから。

 男の子たちとは、少しずつでも仲良くなれたらいいなと思いながらその場は一旦お開きになった。

 私が髪を切りたい事を伝えたら、ガイアスがアトスさんを呼んでくれた。自分で切るっていったけど、アトスさんが切ると言い張ったので切ってもらうことになった。




 切ってもらって、

「にあう?」

 とガイアスに聞いたら、「お、おう」と返事を返されたので多分似合ってはいるのではないかと思う。




 ――――少女と、獣人の村 2

 (多分、神子な少女の獣人の村での生活はそんな風に始まっていっている)



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