少女と、翼をもつ者たち 3
――放っておくわけにはいかないと、私に関わりたいとそんな風に彼らは言った。
その言葉は、結果的に条件付きで私たちの村で受け入れられた。
それはその言葉が本当であるかというのがその場ではドングさんたちには分からなかったから。私の直感は彼らの事を信じても大丈夫だって言っているけれどその感覚はドングさんたちにはない。
だからこそ、彼らは条件付きで、私の側に居る事を認められた。ということで、あのドングさんたちと最も話していた男の人が最も声をあげていたというのもあってその人がひとまず村にやってくることになった。
そのビラーという男性はひとまず私の側に居たいということなので、監視の目をつけた状態で過ごしてもらっているが基本的に私が行くところに行こうとしているようだ。
このビラーさんに関しても、イルームさんのように私が言った事を全て叶えようと暴走してしまうのではないかと懸念はあった。けれど、この翼を持つ人たちはそこまで傾倒しているようには見えない。
私の事を気にしているのは本当だろうけれど、私を第一に考えているわけではない。
「ビラーさんは、何で、私を気にする?」
「……分からない。ただ……、何だか不思議な感覚になる。俺達の神に祈っているようなそんな感覚に——」
多分、私が神子だから。そしておそらく私に影響を与えている神様と彼らはかかわりがあるのだろう。でもその事実を翼を持つ人たちには告げていない。この場にはもちろん、ランさんやシノルンさん、シレーバさんもいる。あとレイマーたちも。誰ひとり私が神子であるという事実は言わない。
いつか、翼を持つ人たちと本当の意味で仲間になれたら告げるかもしれないけど、今いうのは不用心すぎるから。
そういえば翼を持つ人たちは、私が村が見つからないようにしたいと思っているからか上から見てもこの村の場所が中々見つからないらしい。招かれないと来れない村になりかけているのかもしれないってランさんが言ってた。
翼を持つ人たちの神様はもしかしたら、私に影響を与えている神様なのかもしれない。そうかもしれないのならば、一度、その神様を祀っている場所に行ってみたい。……行っても大丈夫だと確信しなければいけないだろうけど、翼を持つ人たちの住んでいる場所にも興味を惹かれている。
ビラーさんは本当に私の側に居ようとしているというだけで、それ以外は特に興味がなさそうだった。そもそも翼を持つ人たちは、飛べない存在を下に見ているという面があるようだ。ビラーさん本人も言っていた。空を飛んでいる存在こそが至高と考えていて、だからこそ地上に生きる者達に関してほとんど興味がないと。私という存在を見かけなければかかわりもしなかったといっていた。
そういうどちらが上か、どちらが下か、という考え方ってあんまり好きではない。皆で一緒に仲良くできれば一番良いってそんな風に私は思うから。だけれども、世の中には色々な存在が居るのだから、翼を持つ人たちのような考え方の人たちもいるのだろうと受け入れることにした。
「そうなの……」
ビラーさんも、私たちが全てを話していない事は分かっているだろう。だけれど、必要以上にビラーさんが問いかけてくることはない。
ビラーさんの方を見ながら、民族の人たちの事も考える。あの民族の人たちはしっかり手当をされて、皆少しずつ元気になっている。私の名前も、何もかも翼を持つ人たちに話す事をしなかった民族の人たちは、それだけ私たちの村と敵対したくないという行動の現れだったとドングさんが言ってた。
―――いざこざはあったけれど、でも、私はそういう気持ちがあるのならば彼らとも仲間になれるのではないかと思っている。
もちろん、全ての人たちと仲良く過ごす事は難しいということは分かるけれど、でもあの民族の人たちとも協力関係をもっと築くことが出来ればと思っているのだ。そのあたりも、ドングさんたちと話し合わなければならない。
私の住んでいるこの村は、今様々な人たちがいる。
私やランさん、イルームさんたちといった人間。その中でイルームさんは私の事をあがめている。
同じ人間でもフィトちゃんたち民族の人たちは独特の考え方を持っている。
ガイアスやドングさんたちのような獣人。皆はグリフォンを信仰している。
シレーバさんたちのようなエルフ。フレネたち精霊の事を神としている。
―――それに加えて、今回であった翼を持つ人たち。彼らが何を信仰しているのか、何を神としているのか、それは詳しく聞けていない。だけどおそらく空を駆けるかそれに関わる存在だろう。
関わる人が少しずつ増えていく。それに伴い、沢山の考え方を私は知っていく。その中で、どのように動くべきか改めて考えて、選んでいかなければならない。
―――翼を持つ人たち 3
(神子な少女の村に一人の翼を持つ者たちが受け入れられる。ただし彼らにはすべては語られない)