少女と、十歳の誕生日。
「レルンダ、おめでとう」
「おめでとう!」
私の十歳の誕生日が訪れた。
私は自分のことが神子である、ということを先日自覚した。自覚してから誕生日までの間、これといった事はなかった。
この一年で沢山のことがあった。
村を作った。あの民族の人たちと出会った。そして、イムールさんたちともであった。沢山のことが一年で起こった。
誕生日のお祝いには、フィトちゃんは遠慮してもらっている。またイムールさんやシェハンさんたちも、お祝いの場には居ない。家の中にいてもらっている。……フィトちゃんとイムールさんたちが出会ったらどうなるのだろうか。私はフィトちゃんのことも、イムールさんたちのことも嫌いではない。仲良くしてくれたら嬉しいと思うけれど、会ってみてどうなるのかいまだ定かではない。フィトちゃんとは少しずつ仲良くなれている、とは思う。私の誕生日をおめでとうと言ってくれたから。少しずつだけど自分のことを話してくれている。けど、未だ神と交信が出来るということの真偽はきけていない。
イムールさんたちの所では、
「レルンダ様の生まれた神聖なる日にレルンダ様の事をお祝い出来るとは、なんと素晴らしいことでしょうか。レルンダ様が———」
イムールさんが長々と私の事をお祝いしてくれた。シェハンさんはその様子に呆れた表情を浮かべながらも、イムールさんのこと大切そうに見ていた。
民族の人たちの元へは直接は顔を出さなかった。だけど、人づてに誕生日のお祝いの話を聞いたのか私を含む近い誕生日の人たちのことをまとめてお祝いの言葉を言っていたといっていた。
私も十歳。二けたになった。
正直不思議な気分になる。私は七歳の時に親から捨てられた。生まれ育った村を出ることになった。そして、その約三年後の今、私はこうして色々な種族と一緒に村を作っている。まだこれからどうなるか分からないけれどまた一年、二年とたっていけばまた私の周りは移り変わっているのだろうか。
今側に居る人がいなくなっているかもしれない、そしてまた違う人が私の側に居るのかもしれない。誰かを失ってしまうことも、あるのかもしれない。それを考えるとこれからのことに対する不安も大きくなる。でも、だけど——これからも私の未来は続いていく。
「レルンダ、おめでとう」
「レルンダちゃん、おめでとう」
カユ、シノミ、イルケサイ、ルチェノ、リリド、ダンドンガも、皆お祝いしてくれた。ガイアスだってもちろん、お祝いしてくれた。今年も去年と同じでガイアスのお誕生日も今日一緒にお祝いしていた。
「前の誕生日から色々あったわね、レルンダ」
「うん」
カユの言葉に頷きながら、本当に色々あったと思ってならない。去年のお祝いは道中で行った。今はこうして村が出来て、この一年でこの場所は少しずつ整ってきている。私たちの住みやすい場所になってきている。
私たちの理想の場所。私たちの夢描く場所。その場所に少しずつなってきていると思う。だけど、全てが上手くいっているわけではないし、問題点や考えなければならないことは沢山ある。
「私も……もう十歳。もう十歳、びっくり」
「レルンダも十歳か、でもまだ小さいな」
「それ、イルケサイも大きくなったからそう思うだけ」
私も少しずつ大きくなっている。身長が伸びてきているのは確かなんだけど、でも私だけじゃなくて他の皆も大きくなってきているから私が身長が伸びても大きくなったように周りには感じないみたい。私、大きくなっているのに。
「ガイアスが一番、でかいね」
私は身長の話をしていたからというのもあってガイアスの方を見る。子供たちの中ではだけど、一番大きい。ガイアスの方を見て、見上げる。
「確かに、俺も身長伸びたな」
「うん、大きい。もっと大きくなりそう」
ガイアスはもっと大きくなりそうだと思う。アトスさんも身長が大きかったからガイアスも同じぐらい大きくなるのだろうか。ガイアスがそのくらい大きくなった頃に私はガイアスの隣に居れればいいなぁと思う。ううん、ガイアスだけではなくて、他の皆ともずっと、ずっと一緒にいられたらいいなって思う。ただ皆と笑いあえる時間が本当にかけがえないの時間なんだと、こうしてお祝いしてもらって、皆で会話をしていて思ってならないんだ。
「レルンダももっと大きくなるだろ」
「そうかな……」
記憶の中にあるお母さんもお父さんもそこまで身長高くなかったから、そこまで大きくならない気もする。大きいのと小さいのどっちがいいんだろうか。あまり気にしたことなかったけど、将来の自分がどうなるのだろうかって未来に対して思いを馳せた。
その日の誕生日は本当に楽しく終わった。この後どうなっていくのか分からないけれど、皆と一緒に居れたらいいなって、また来年の誕生日にも皆が傍にいてくれたらと願った。
―――少女と、十歳の誕生日。
(神子な少女は十歳の誕生日を迎え、幸せに包まれる)