表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/460

少女と、選択

 ―――私のこと見えているかも。



 フレネは私にそういった。あの神官は、フレネのことが見えているのだと。フレネが姿を見せようとしなくても見えるというのは、そういう力があの神官にはあるんだろうか。あの神官はどのような人なのだろうか。私が目の前に出ても大丈夫な人なのだろうか。分からない。私はあの神官と会うべきなのだろうか、会わない方がいいのだろうか。分からない。



 神子を探している神官。その前に私は出るべきなのか。それともかかわらない選択をするのがいいのだろうか。その判断に悩んでしまう。

 私は、あの民族の人たちと考えなしに接触してしまった。そして大変なことになった。その結果、人の命が失われてしまった。あの神官の人が気になるという気持ちはあるけれども、考えなしに会いにいってはいけないから。



「ねぇ、フレネは……どう思う?」

「こちらに敵意はない、とは思うわ。神子様神子様って口にしてたから」

「……他に、誰かいたりした?」

「いいえ、居ないわ。あの二人しかいない。たった二人でここにいるわ」

「……うん」

「生半可な覚悟でそれが出来る、とは私は思わない。人間のこと、レルンダとかしか知らないけど、でも普通の人間がたった二人でこの森の中にいるというのは危険なことのはず」



 覚悟。それを持たなければ、たった二人でこの森の中に入ってくるなんて出来ないと、フレネはいう。

 私は——今の所危険な目にはあまりあっていないけれど、この森の中で魔物たちも生きていて危険なことは確かだ。あの民族の人たちも、魔物に襲われて大変だった。


 自分の身が危険だったとしても、求めているものがあるからこその覚悟。



 神子————、私が本当に神子なのかっていうのはちゃんとは分からないけど、でも、私を探している。彼らは私を探して、こんな森の中に入っている。



 その覚悟に、その想いに、私はこたえるべきなのだろうか。正直な気持ちを言うと私はあの神官の人に興味がある。私を探している人。私よりも神子、という存在を知っているかもしれない人。

 それに、私に会おうとして、こんな森の中まで入っている。そんな覚悟に応えたいという気持ちがわいてきてしまっている。どうして私に会おうとしているのか、会ってどうするつもりなのか、そのことが分からないからこその不安はあるけれど、話してみたい気持ちが出てきている。

 でも、その気持ちに従っていいのだろうか。その私が思うままに気持ちに従って、その結果、どのようなことが待っているのだろうか。先の事を思考する。




 ――もし私を人間の国に連れて帰ろうとしているのなら。私を無理やりでも気絶させて連れ出すかもしれない。でもあの神官たちがたった二人しかいないのならば、いくらなんでもそれは出来ないのではないか。もし仮に無理やり連れていこうとしても皆がそれをさせないのでは。いや、でもフレネのことを見えるぐらいの人なのだから、もしかしたら私が想像も出来ないぐらいの凄い魔法を使えたりもするのだろうか。仮に、使えたとして、一瞬で移動できるものとかがあれば——と思うとぞっとした。

 そんな凄い魔法が現実に存在することがあり得るのか、とか全然分からない。でももし、そんな魔法があったら——と考え込んでしまう。



 先のことを考えて、どんなふうにすべきかと考えることは大事だと思う。色んな可能性を思って、私にとって望まない可能性をなくしていくというのは重要なことで。でも、先の事に対する不安などばかり考えて、もしかしたら———と行動を起こさない、とするのもどうかと思う。




 行動したからこその、結果がある。

 何が正解で、何が間違いなのか、というのは本当に難しい話だけど、私はなるべくでいいから後悔しないように動きたい。




「……レルンダ、考えはまとまった?」

「……ちょっと、ランさんたちの所行く」



 私の心の中で、どうしたいか、どうするか———それはほとんど答えが出ている。だけど、一人で全部決めて、行動するなんてしては駄目だ。私の答え、それを皆に告げてから、どうするべきか改めてもう一度答えを出したいと思った。



 何も、私一人で答えを出さなければならないことではない。私には皆がいて、皆は私のことを何時だって助けてくれる。―――なら、困ったら皆に相談をして、それから答えを出そう。

 それから私は、フレネと一緒にランさんやドングさんたちの所にいった。それから、あの神官の人がフレネの姿を見えていたことを告げた。ランさんもドングさんもそのことに驚いていた。フレネ自身が見せようとしていないのに見れる人は、この村には私以外に居なかったから。

 それから、私は自分がどうしたいのか二人に告げる。




「私は神官に、会いたいと思う」



 私は二人の目をまっすぐに見つめる。



 私がどうして神官に会おうと思っているのか、それを二人に告げると、二人は「万が一も考えて行動をしよう」、「会うのは構いません。ただ……こちらにとって害になるのならば生かして帰すことはしない方がこの後のためになるでしょう」とそんな風に言う。

 私が会うことは構わないと、ただ、もしかしたらこれからのことも考えて悲しい選択をしなければならないかもしれないことがあると。




 ―――私が会う選択をして、悲しい結末になる可能性もある。それでも会おうとするのならということらしい。

 私はその言葉に、改めて私の選んだ選択を口にした。




 ――――少女と、選択

 (多分、神子な少女は契約精霊と会話を交わし、未来の可能性を思考し、そうして選択する)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ