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少女と、変身 2

 ガイアスの体が光った。

 魔力を込めて、そして光った。

 私は光った後のガイアスの変化に目を見開いた。



 そこにいたのは、巨大な獣だった。巨大とはいっても私やガイアスよりも大きいというだけで大人ほどの大きさというわけではない。そこにいる銀色の毛並を持つ美しい獣。光ったかと思えば、ガイアスの代わりに存在していた存在。


 ――――それが、ガイアスであることが私には分かった。



 ガイアスが、狼へと変化した。耳と尻尾だけが狼であった狼の獣人から、全てが狼である存在へと。



「がうう(何が起こった?)」



 恐らくガイアスであるその狼は、何が起こったか分からないといった声を上げる。最初にレイマーの変化が起こった時と一緒で、ガイアスの言葉がこちらに伝わってくる。



「ガイアス———、狼」



 私は、そう告げる。



 ガイアスが突然光って、狼に変化して、一緒に居たエルフの人もシーフォも驚いた様子で声も上げない。そんな中で私はまっすぐにガイアスのことを見据えていた。目の前の美しい獣がガイアスだとわかるからこそ、恐怖は一切感じない。



「がう? がうぅうううがう?(狼? というかがうがうってでるんだけど)」

「ガイアス、狼になってる。かっこいい」

「がう?(え)」



 ガイアスが視線を動かす。そうすれば、自分の体が見えたのだろう。



「がうがうがうがう!(俺、狼になってる!)」

「うん、綺麗な狼」



 ガイアスの体をまじまじと見つめて、なんて美しく気高い狼だろうと思う。私はこんなに綺麗な狼を見るのは初めてだった。なんだか今すぐにでもその毛並を思いっきり堪能したい衝動にかられるけど、我慢する。



「ガイアス、出来ること増えた。良かった」

「がうがうがうがう(ありがとうな、レルンダ)」

「なんで、お礼?」

「がうがうがうがうがうがう(俺がこんななれるのレルンダのおかげだろう)」



 私が願って、変化した結果ではあると思うけれどお礼を言われるようなことなのかというとぴんと来なかった。



「レ、レレレルンダ。その狼、ガイアスなのか?」

「うん、そう。ガイアス、魔力で変化した」

「凄いな……」



 エルフの人は呆然としながらもそんな声を上げる。体が少しだけ震えている気がする。狼になったガイアスを見て少しだけ怯んでいるようだった。



「ひひひひーん(ガイアスの纏ってる魔力凄い)」

「そう?」



 私はそんな風に感じられないけれど、狼になったガイアスの纏っている魔力、シーフォ曰く凄いものらしい。周りの生物が恐れて近寄ってこないレベルなんだとか。

 うーん、と思う。


 私にはガイアスの纏っている魔力、とても心地よくて安心が出来るんだけどなと。



「ガイアス、人の姿戻れる?」



 私は獣の姿になれるようになったガイアスが人の姿に戻れるのだろうかと不安になって問いかける。



「がうがうがう(やってみる)」



 と、ガイアスがいって、しばらくすれば元のガイアスの姿へと戻った。

 獣人の姿に戻ったガイアスは、座り込む。



「ガイアス!?」



 突然、倒れるように座り込んでしまったガイアスに驚いて私は近づいた。ガイアスの顔色はあまりよくない。



「どうしたの」

「狼になるの、魔力凄く使うみたいだ……。戻ったらすごく疲れた」

「そうなんだ……」



 頷いてから、狼になるって凄いことだと改めて思った。人が獣の姿に変わるなんて普通ならありえないことだ。そのありえないことを、ガイアスは起こした。それだけのことを起こすのに沢山の魔力を使うのは当然と言えば当然のことだろう。



 それにしても狼の姿になるのは予想外だった。私はガイアスも何かしら属性魔法が使えるようになるのではと思っていたから。



「シーフォ、ガイアス、乗せる。いい?」

「ひひひん(いいよ)」



 魔力切れを起こしかけているガイアスを見て、村に一旦戻るべきだろうと思ってシーフォにガイアスを乗せた。私もその後ろに乗る。ガイアスを支えるようにして後ろに私は乗っている。エルフの人までは乗れないから、横を歩いてくれている。


 ゆっくりとした足取りで私たちは村へと戻った。



 ドングさんやランさんはガイアスの疲労した様子を見て、何があったのかと慌てていた。私はドングさんやランさんに、何も想像しているようなことはないことを告げる。そして、ガイアスの変身とも言える、狼に変わる事を告げた。



「ガイアスが、狼の姿に……」

「まぁ、そんな変化が……」



 ドングさんとランさんはそれぞれ反応を示した。



「俺達獣人の祖先は……獣の姿に自在に変化出来たといわれていたが……そうか、ガイアスが」



 ドングさんはそんなこともいっていた。獣人たちの祖先は自在に獣の姿になれたといわれているらしい。現在で獣の姿になれるものはいなかったのだと。でも、ガイアスが今回狼に変化出来るようになったのだと。

 そしてそのことがどれだけこの村に影響を与えるかもわからないと、そんな風にもドングさんは言った。



 ――――少女と、変身 2

 (多分、神子な少女が目撃したのは獣人の少年が美しい狼へと変化した姿。その変化がどのように影響を与えるのかまだ定かではない)



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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり、ガイアスはフェンリルへ進化してたんですねー、獣化が可能になるとは。
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