少女と、家族の準備
アトスさんたちから連絡が来るまで準備をすることにした。獣人の村に移動をする準備。
獣人の村は、どのような感じなのだろうか。田舎の村で育ってきたから、知らないこと多いから勉強したいけど、聞いたら教えてくれるかな。
本、って貴重なものらしいけど、そういう本とかに神子についての記述が載ってたりもするらしいから、ちょっと気になっている。あと、グリフォンたちやシーフォに助けられてばかりだから何かしら返していきたい。
ガイアスとも仲良くなりたい。アトスさんたちとも仲良くなりたい。
「仲良く、なれるかな」
グリフォンたちやシーフォとはこうして仲良しになれたけれど、仲良くなれるだろうか。
あまり人と仲良くすることが出来ていなかった私に出来るだろうか。仲良くなりたい。頑張ろう。しかしちょっと不安だ。勢いのまま行きたいと口にしてしまったけど、どうなるかな。
「ぐるぐるぐぅ(大丈夫だよ)」
「ぐるぐるぅ!!(私たちも一緒だから!!)」
レマとルミハがそういってくれた。私をはさむように二匹がいる。
「うん」
グリフォンたちやシーフォがいるから、私は頑張ろうと思うのだ。
正直捨てられてすぐは、このまま死ぬのかなと考えていたりした。どうしたらいいかも決めてなかったし、ただ目的もなく歩いていただけだった。そしたら、シーフォが私を見つけてくれた。
シーフォが、私のことを見つけてくれて、私を導いてくれた。グリフォンたちのところまで連れてきてくれた。
それがどれだけ私にとって嬉しかったか、シーフォは知らないだろう。シーフォがここに連れてきてくれて、グリフォンたちが皆が優しくて暖かくて。だから、私は今これだけ前向きだし。神子かもしれないって思ったらこれからなんとかなる気がしてほっともした。
皆が居てくれるから、勇気が出て、頑張ろうって思えるのだ。
「ぐるぐるぐるるう(我らが居るから心配はいらない)」
レマとルミハに囲まれていたら、不意に声が聞こえた。そちら見たらレイマーがこちらを見下ろしていた。金色に輝く毛並で、すぐにレイマーだとわかる。
レイマーはお母さんみたい。そう思う。
優しくて、温かくて。声が、柔らかい。
ううん、レイマーだけじゃないか。皆、私のお母さんやお父さんや、兄妹みたいなものなんだなって思う。
「ありがとう」
「ぐる、ぐるぐるぐるうう(良い、それよりしばらくいるなら準備をしなければ)」
獣人の村に、とりあえず行ってみようと思っている。行ってみたあとどうなっているかとかも分かんない。とりあえず獣人の村に行くのならば、行く準備をしなければならない。
とはいっても、私は荷物は全然ない。
服は、さっきアトスさんたちが来てくれた時に持ってきてくれたのがあるぐらい。綺麗な新品のものだった。私はいつも姉のお下がりしか着ていなかったから、何だか綺麗な服は嬉しかった。
花の模様の描かれたワンピース。今、私はそれを着ている。
あとは、グリフォンたちやシーフォをブラッシングするブラシや自分用の水筒とかそれぐらいかな。とくに荷物はない。
皆が一緒にいてくれるなら、他に特に何もいらないんだなってそうとも思える。
グリフォンたちやシーフォの準備って何をするんだろうと思っていたら皆で巣に集めている小物とかを持っていこうと準備しているみたい。使い勝手が分からないようなものまでグリフォンたちは集めていた。
シーフォは特に持っていくものとかないみたいなんだけど、グリフォンたちの持っていくものを一緒に持っていく準備を手伝っている。シーフォは優しい。いつもグリフォンたちにも優しくて。姿は違っても、グリフォンたちとシーフォは仲良しだ。
「向こう行く間、巣はどうする?」
準備をする皆を見ながらふと気になったので聞いた。
獣人の村に皆で行っている間、この巣はどうするのだろうか。
「ぐるぐるぐるるうう、ぐるぅううう(その後どうするか分からないから、たたむ)」
獣人の村に発つ時に一緒に一旦たたんじゃうらしい。
それからしばらく準備をした。そのあと、リオンとユインと獣人の村について話した。
「ぐるぐるぐるる(獣耳の人たちの所どんなところだろ)」
「わかんない。だから、楽しみ」
ユインは獣人のことを獣耳の人たちと呼んでいるようだ。
獣人の村がどんな所かはさっぱり分からない。でも分からないからこそ、少し、楽しみだなと思う。
「ぐるぐるぐるるっるう(おいしいもの食べたい……)」
そう言うのはユインのお兄ちゃんのリオンである。リオンは食べることが大好きでいつも誰よりも食事を楽しんでいる。
獣人の村って、どんなところなのだろう。
ユインとリオンと話しながら、獣人の村、どんなところなんだろうと考えを巡らせるのであった。
――――少女と、家族の準備
(多分、神子な少女は家族と共に準備を進めながら会話を交わす)