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神官と、森へ入る。

 私、イルームは今、連合国家に滞在している。フェアリートロフ王国の方が国力が高い国であるのもあり、私たちに連合国家の者達はよくしてくれている。これは国力の違いからそういうことになっているのであって、もしフェアリートロフ王国が連合国家よりも国力が低ければこのような対応にならなかっただろう。それを考えると、フェアリートロフ王国がそれだけの国力があって本当に幸いだったと言える。



 連合国家―――サフの者達に悟られないように神子、という存在を探すのは中々骨が折れることだった。

 ただ、このサフ連合国家の中では、不思議な少女というのは目撃情報さえもない状況であるようだった。



 となると、やはり森の中に神子様は入って行ったのだと私は思う。しかし何度その考えを口にしても、魔法剣士の女性以外の男騎士と、女性の侍女と神官が止める。魔法剣士はわれ関せずといった態度だ。私はどうにか森の中に入ってしまいたい。神子様にお会いしたい。だというのに――――、私が森の中へいざ入ろうとすると、何処からか騎士、侍女、神官が現れて止められてしまうのだ。どうして私の行動が彼らに筒抜けなのか、さっぱり分からない。



 私が何度もそういう行動をしているのもあって、魔法剣士に関しては呆れたような目をこちらに向けている。



 どのようにしたら、森の中に入れるだろうか。



 神子様に会いたい。神子様にお会いして神子様の意志を聞きたい。―――神子様の意志を尊重したいからこそ、騎士、侍女、神官を説得できないというのならば森の中に一人で入りたい。彼らへの説得は今の所無理だと思う。彼らは、神子様のことを真に考えているというのとは違う気がする。彼らの信仰は、神や神子といった存在に向けられているというよりも、神殿という場所に向けられているように向けられているように感じる。



 私は神殿の下っ端で、神殿の中で神に仕えることに喜びを感じながら過ごしていた。神子様を見つけるという大役を行うことが出来て嬉しかった。神殿の中でも上に行けると思った。だけれど、神殿の中で上の地位に上がって何になるのだろうか、とこうして神子様を探す旅に出てみて少しずつ考えるようになってしまった。



 それは、神殿に属する―――要するに信仰の名のもとに、神に仕えているはずの侍女や神官たちが、私に接近をしてきて、おそらく……体の関係を迫ろうとしていることに気づいてしまったからというのもある。年頃の女性だというのにはしたないと、最初はそんな風にしか考えていなかった。でも、あの二人の会話を聞いてしまった。―――上の指示で、私と体の関係を持つようにと指示をされていると。



 私が信じていた神殿という機関は、駄目な場所なのだということを知ってしまったからというのもある。信仰を神に示す方法として、神殿の中の地位を高めることだと神殿はいっていたし、私もそうなのだろうと思っていたけれども、それは違うとこの旅の中で学ぶことが出来た。私は、フェアリートロフ王国で生まれ育ち、外の世界を知らなかった。けれど、外の世界を知ってみて、だからこそ、信仰というものは自身の心の信仰さえ保てばどこでだってなせるものであると改めて感じることが出来た。――――だからこそ、神子様の側で、神子様の側にお仕えしたいという気持ちが改めてわいてきた。



 連合国家にとどまっている間、連合国家側がよくしてくださっているからと騎士、侍女、神官たちが好きに豪遊をしていた。私はその隙に森へ入ろうとしましたが、それも阻止された。そんな中で、魔法剣士の女性が話しかけてきた。



「―――その腕輪だ、お前は馬鹿だろう」

 と、女性だというのになんて乱暴な口調だろうと眉を顰めてしまった。



「腕輪? これはジント様が――」



 ジント様が私のことを思って特別な措置をしてくださったという腕輪。ジント様は神聖魔法の使い手であるのもあって、そういう魔法が施されていると聞いていた。



「―――そのジント、ってやつが追跡できるように施したとあいつらがいっていたぞ。その腕輪、取らないと森の中には絶対入れないだろ」



 その言葉を聞いて、その事を詳しく聞こうとした時に、神官がやってきたのでそれ以上詳しく聞けなかった。現状でいっぱいいっぱいで、腕輪にそういう技術が施されているかもしれないなんて考えていなかった。

 腕輪は自分で自由に取り外しが出来るものだったし、私としてみればジント様の善意のものだと思っていた。しかし、取り外しが出来るようにして自らの意志でつけさせていたのは、そういう疑惑を与えないためだったのかもしれない。



 ―――私は魔法剣士の言葉を信じたわけではなかったが、いざ、腕輪を外して森の中へと隙を見て足を踏み出してみた。彼らは私が森の中に入ったことを止めなかった。



「―――おい、あたしも連れてけ」



 騎士、侍女、神官は私が森の中へ入ることを気づかなかったが、魔法剣士はなぜか森の中へ入った私の前に現れた。



「お前が消えたら雇われてるあたしが罰される可能性がある。それぐらいなら一緒に森に入ってやる」



 そう、魔法剣士はいった。



 私は、一人で森の中に入るのも不安だったのもあってそれに頷いた。



 ――――神官と、森へ入る。

 (その神官は旅の中で神殿への不信感を募らせ、神子という存在を求めて森の中へと足を踏み入れた)




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― 新着の感想 ―
神官「と」、森へ入る とはいらなくないですか? 今更かもしれませんが。。。
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