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少女と、民族 4

 ロマを無事に返して欲しければ私と、あと数名だけを連れてくるようにという話だった。それはそうだろう。獣人たちは人間よりも身体能力が高く、恐ろしいと彼らは思っているからだろうという話だった。


 その交渉のメンバーをどうするか、という話になった時、

「俺は、行きたい」

 ガイアスが一緒についていきたいといった。



「ガイアス、ついていくと危険かもしれないよ?」

「……それはレルンダも一緒だろ。俺はどれだけ役に立てるか分からないけど、でも俺はついていきたい」



 ガイアスがいった。ガイアスは私を見ている。ガイアスは何を言ってもついてくるようなそんな気がした。そう思ったのは私だけではなくて、ドングさんたちも一緒だったのだろう。



 そんなわけで、ガイアスも交渉の場に向かうことが決まった。他に誰を連れていくかとなった時、ひとまずフレネは連れていくことになっている。フレネの姿を彼らは見れないから、フレネがいたらなんとかなりそうだと思えるから。あとは、エルフ側から一人連れていくことになった。エルフの村で私とランさんを住まわせてくれていたウェタニさんが一緒についてくることになった。



 私たちと交渉をしたいと思っている彼らが、私たちを問答無用でどうこうしようとしているとは思えない。ならば、どうにかなるはず。ううん、どうにかしてみせる。――私が彼らを助けてしまったことから始まった。私があの時、助けなければこんなにややこしいことにはならなかった。私が――村があるってことを告げなければこんなことにならなかった。私が招いてしまったこと。私が自分の手でどうにか折り合いをつけたいこと。



「ランさん、私、何を気をつけるべき?」

「捕まらないようにすること、ですかね、一番は。フレネも一緒に居るのならば大丈夫だと思いますけれど、気を付けてくださいね」

「うん……」

「何が正しいか、未来がどうなるかなんて誰にも分からないのですから、貴方が貴方の思うように動いてみてください。その結果、どのような事になってもそれは貴方だけの責任ではありません。私たちで受け止めていかねばならない責任です」

「うん」

「あの者達の事のきっかけは貴方だったかもしれない。でも、いずれ接触することになったでしょう。あの者達がこのあたりにいるのならば。たまたま貴方がきっかけになって、今事態は動いている。でも、誰だってきっかけになった可能性があった。そして貴方だけにそのことを背負わせようなんて思わない。だからレルンダはやりたいようにやってください。もちろん、考えて動かなければならないのはありますけど、でも貴方が選んだ先でどんな結果が待っていても私たちはちゃんと受け止めますから。貴方が間違えたら叱りますから、貴方がやりたいようにやっていいんですからね」



 ランさんは、私の背中を押してくれる。交渉なんて場に行くことへの不安とか、私が招いてしまったから頑張らなきゃとか、そういう気持ちでいっぱいになってる。心配なこと、不安なこと、沢山ある。だけど、皆が背中を押してくれる。



「……私、ロマさんを、助ける」

「ええ」

「絶対に、死なせない」



 誰も失いたくない、誰も死なせない。それは難しいことかもしれない、でも———。


「私は、それが目標」


 それが私にとっての目標だから。私は誰も死なせたくない。助けたい。誰かが居なくなるのは嫌だ。そう思っているから。

 怖いという気持ちはあるけれど、私は私の行動に責任を取る。私はロマさんのことを助けて見せる。





 そんな決意を元に、私はガイアスとウェタニさんとフレネと共に、指定された場所へと向かった。





 指定された場所に向かえば、あたりを警戒した様子の彼らと対面した。





 私が彼らと対面をしたのは、最初に助けた時以来だった。あの時は数人しかいなかったけれど、この場にはあの時以上に多くの彼らがいる。彼らの中にはやせ細っているものも多くいる。食事がきちんととれていないのかもしれない。それを思うと同情心が沸く。でも——かわいそうとか、そういう気持ちで安易に行動してはいけない。



 彼らは私たちが少人数でちゃんと来たことにほっとしている様子だった。ロマさんは? そう思って、私はロマさんのことを探す。ロマさんはどこにいるのだろうかときょろきょろするけれど見つけられなかった。



「レルンダ、ひとまず交渉が先だよ」



 フレネに横から声をかけられて、きょろきょろするのを一旦やめる。そして私は彼らと向き合う。彼らは私たちを―――ううん、私に一番視線を向けている。私が人間だから? それとも、私が一番最初に彼らと出会ったからだろうか。分からない。けれど、私に興味を持っているということはそれだけ交渉がしやすいということではないか。私は、自分の拳をぎゅっと握る。

 だけど、視線を彼らからそらすことはしない。

 それが私の、ロマさんを絶対に助けるんだという決意の証とも言える。




「―――ロマさんは、無事?」



 私は先に口を開いた。



「それは貴方たちの返答次第だ」



 彼らの長だろうか、その場の誰よりも顔の文様が派手なおじさんが口を開いた。




 ――――少女と、民族 4

 (多分、神子な少女は民族たちと向き合う。そして交渉は始まった)



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― 新着の感想 ―
[一言] グリフォンに乗って現れたんだから、交渉の場へはグリフォンに乗って行くべきだろう。 だいたい、単独行動が過ぎるぜ、この少女は! 神子(?)なんだから、お出掛け時は、金の翼のグリフォンに、常に乗…
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