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少女と、手助け。

 世の中、良い人ばかりではないとわかっている。良い人ばかりだったら、アトスさんが死ぬこともなかった。私たちが住む場所を追われることはなかった。―――悲しい事実があった。だからこそ、良い人ばかりではないこと、わかっている。でも、だけど、私はやっぱり襲われている人が居たら放っておけないんだ。襲われてる人たちは、何だか見たことのないような変わった服装をしていた。顔になんか傷みたいなのあって近づいてびっくりした。



 でも驚くよりも襲い掛かろうとしている猪のような魔物をどうにかしなければならない。彼等は突然空から現れた私たちに腰を抜かしていた。私は、魔物に襲われている人たちを守るためにこちらにやってきたけど、襲われている人たちからしてみれば私たちの方が恐ろしいのかもしれない。私からしてみれば、グリフォンたちは大切な家族だけれども他の人たちからしてみれば恐ろしい魔物でしかないのだろう。

 そう思うと、少し悲しい気持ちになった。でもそれは仕方がないことなのだ。



 それよりも猪の魔物をどうにかしなければ、そう思っているとカミハが猪の魔物に突進していた。私はカミハの上に乗っている。腰を抜かしている人たちに視線を向けながらも、意識は魔物からそらさない。気を抜いて、大変な目になるかもしれない。そう考えると、魔物が本当に脅威でなくなるまでは油断なんて出来ない。



 倒れた猪の魔物にフレネが風の魔法で息の根を止めていた。

 この猪の魔物は、村に持ち帰ろう。



 私は、腰を抜かしている人たちに視線を向ける。人数は五人ほど。服の所々に土がついているのは、魔物から逃げている間についたのだろうか。私はカミハの背に乗っているままだから見下ろした形になってしまっている、と気づいて私はカミハの上から降りた。



 まじまじと見る。

 その人たち、顔にあるの傷かと思ったけど何だか違うみたい。顔に絵を描いている? それとも刺青? ちょっとよく分からないけど、不思議な感じ。




「ねぇ……」



 私は彼らに近づいた。彼らは私に対して反応を示さない。私のことを、恐れたように見ている。人は良くわからない存在のこと、恐れるものだと思う。彼らは、私のことが良くわからなくて怖いのだと思う。

 だから私は笑った。




「私、レルンダ。そちら、は?」

「―――わ、私たちは」

「まてっ、この娘は怪しい!! 魔物を引き連れているなんてっ。ミッガ王国の連中かもしれない!」




 一人のおじさんが声を上げた。



 魔物を引き連れていて私は怪しいそうだ。でもそうか、獣人たちはグリフォン達が神様だったからすぐに受け入れてくれたけれどエルフたちもグリフォンたちには警戒していた。

 この人たちが私って、存在を警戒するのも仕方がないのかもしれない。



 それにしてもミッガ王国? この人たちも、ミッガ王国とかかわりがあるのだろうか。

 ミッガ王国は、私が住んでいた国の隣にあった国。フェアリートロフ王国が神子という存在を手にしたから隣国のミッガ王国は獣人の村を襲って奴隷にした。それは知ってる。それで、ニルシさんの村の人たちは奴隷になって、アトスさんは死んだ。



 そして私たちは逃げた。



 逃げた後、ミッガ王国とはかかわることがなかった。私が住んでいた国のフェアリートロフ王国ともかかわる事がなかった。追手がくるかもしれないとは思っていたけれど、こういう形でミッガ王国の名を聞くことになるとは思わなかった。

 ―――この人たちは、どうしてミッガ王国から離れた森の奥にいるのだろうか。




「私……ミッガ王国、違う。この近くの村住んでる」

「この近くに村だと? 王国に未開の地とされている森の奥深くのところに……?」



 私はミッガ王国の人間ではない。私は皆と一緒に住んでいる村の住民。そういえば、村の名前、考えた方がいい気がする。こういう時説明がしにくい。驚いた顔をしているこの人たちにどんなふうに言えば、警戒心をといてもらえるだろうか。

 そんな風に考えながら、私は少しずつ言葉を発する。




「私たち、逃げて奥に来た」



 なんて説明していけばいいか分からない。だけど、敵ではないのだと伝えてあげたいと思った。




「――そしてこの近くに村、作ってる。ミッガ王国とは違う。私たちがここまで来たの。ミッガ王国のせいでもある。多分、それは貴方たちと一緒」



 ミッガ王国とは違うこと、ミッガ王国のせいでこんなところまで来ていること、そしておそらく同じような立場ではないかということを告げる。

 そうすれば、その五人ほどの人たちは、こそこそと会話を始める。



 小さな声でどんな会話をしているのかは私にはちゃんとは聞こえなかった。この人たちが安心してくれたらいいなぁと私はただ黙ってその場で彼らの話し合いが終わるのを待った。

 先ほど、私のことを一番警戒していたおじいさんがしばらくして口を開いた。



「……わしらは、長い旅で疲弊している。村が本当にあるというのならば、休ませてもらえないだろうか」

 



 私はその言葉に頷いた。



 ――――少女と、手助け。

 (多分、神子な少女は襲われている人を助ける。そして新しい出会いがあった。それが何をもたらすのかは誰にも分からない)



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― 新着の感想 ―
[一言] 「私はその言葉に頷いた」 村長でもないのに、どうして勝手に判断するの。今まで用心するようにとランからさんざん言われているのに全く生かされてないね。
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