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少女と、魔法の練習 2

 魔力を練る。

 魔法の形をイメージする。

 魔力を放出して、魔法として形作る。

 それを私は繰り返す。



 魔力を放出すると、何かが抜けていった感覚と疲労感が体に残る。フレネが、人によって個体差があるけれども魔力は増えていくものだと教えてくれた。人間の中には魔力を持たないものも多くいるし、私の魔力は多い方なんだって。



 途中途中で休憩をする。



 リルハの体にもたれかかって空を見上げる。地面に座り込んで、空気を吸うとなんだか気持ちが良い。土の匂いがする。こうして大好きな皆と一緒にのんびり出来る瞬間が私は好きだ。

 こういう私の大切にしたい、ずっと過ごしていきたい今の、瞬間を守るために私はもっと強くなりたいって思ってるんだ。



 今の、日常が大好きだから。

 今の、日常が大切だから。



 何気ない日常が心の底から愛おしくて、この日常を過ごせることが嬉しい。

 生まれ育った村では、こんな感情感じたことがなかった。私はこんなに嬉しくて、楽しい日常があることを知らなかった。だからこそ、いざ、その日常を知ってみるとその日常が大切だって実感が出来る。もし、私が―――、全てを与えられていたのならば日常が大切だってことさえも気づけなかったかもしれない。



「気持ち良い……」

「ぐるぐる(そうね)」



 私の言葉にリルハが同意の言葉を告げる。

 皆を、守りたい。失わない場所を、作りたい。この大好きな日常を、ずっと刻んでいきたい。

 その気持ちが強くあるから、どれだけ失敗しても私は頑張ろうって思う。



「リルハ、カミハ、フレネ……大好き」

「ぐるぐるう(私たちも)」

「ぐる(ああ)」

「私も、レルンダのこと好き」



 私の大好きに、三人ともそう答えてくれる。

 私はそんな言葉に笑って、また魔法の練習をしようと立ち上がった。



 何度も、何度も、何度も繰り返す。





 繰り返して、私は少しだけ進歩した。



「……浮いた」



 私の体はちょっとだけ地面から離れている。皆と一緒に飛びたい気持ちから、私は少しだけ浮くことは出来た。でも、飛んでいるとは違う。浮いているだけだ。でもちょっとした進歩だと思う。



「やったね、レルンダ」

「このまま、もっと、浮かせる」



 フレネの言葉を聞きながら、私はもっと自分の体を浮かせようと思った。もっと上に上がりたいって思ったから。




「ぐるぐるぐるるう(落ちたらどうするんだ?)」

「ぐるぐる!(私たちが受け止めればいい!)」



 私の言葉にカミハが慌てて落ちたらどうする? と言えば、リルハがとても心強い言葉を言ってくれた。

 私がもし失敗して落ちそうになったとしても、皆が居るから大丈夫。そう思えるからこそ、私は不安なんて感じていなかった。



 私の体を浮かしている魔力。それをもっと上手く操ろうと意識を集中させる。上へ、上へ。私自身を上昇させることをイメージする。誰かの力でではなく、自分の力でこうしてお空の上に浮くことが出来ることが何だか嬉しい。

 私に出来ることが少しずつ、増えていっているのだと思うと嬉しい。



「わぁ」





 高い所まで登って、下を見る。木々が広がっている。住んでいる村へと視線を向ければ、私たちが私たちの手で作っていっている村が見える。上から見る景色は、いつも見ている村だけど違ったものに見える。まだ小さな精霊樹は淡く光っていて、とても幻想的だ。もっと大きくなったら、空から見たら凄い光景だろうなって思って楽しみが増えた。



 空の上で移動できないかなと思ったけれど、まだそこまでは出来なかった。もっと自由自在にお空を移動できるようになれたらきっと気持ちが良いだろう。そんな風になりたいな。




「あれ?」




 私は、空の上から森を見下ろす。ちょっと離れた位置に、何人かの人の集団が居た。

 ―――でも、私たちの村の人ではないように見える。そう感じた時、怖くなった。また、私たちにとっての脅威な人たちがやってきたのかと。ようやく新しい場所で生活が出来るようになって、幸せな気分を感じているのにって。



 だけど。



「襲われ、てる?」



 その集団は恐らく魔物だろうか、獣の姿をした存在に襲われていた。そして、逃げ惑っているように見えた。



 もしかしたらあの人たちは、私の家族を、私の大切な仲間たちを傷つける存在かもしれない。だけど、そうだったとしても―――、

「リルハ、カミハ、フレネ、助けよう」

 放っておけない。



 死ぬってことは、私たちがアトスさんを失ったようにもう会えなくなるってこと。死んでしまったらもう笑うことも怒ることも何もできなくなる。未来が何もなくなってしまう。とっても悲しいことだから。

 そう思うと、もし私たちを傷つける存在かもしれない可能性があったとしても私は放ってなどおけないと思った。助けられる命は、助けたいって思った。



 ―――少女と、魔法の練習 2

 (多分、神子な少女は魔法の練習中に人影を見る。敵かもしれないとしても助けたいと少女は望んだ)




 

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