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紫荘の人々  作者: 中野あお
104号室:真田響
20/20

2-11(104号室 Chapter end)

「そういえば本庄君と復縁したんだって?」

「一応ね。」


 ドイツ語の授業の前に景ちゃんが声をかけてくる。


「どっちから言い出したの?」

「向こうからに決まってるじゃん。私がそんなこと持ち掛けるわけないって。」

「そうなんだ。でも、よかったね。響、割と未練会った感じだったしね。」

「えっ?」


 まるで見透かしていたかのように言う。


「だってたまに横とか通るたびにチラチラと見てたり、たまに愚痴るように名前出してたじゃん。そう言うのって諦めきれなかったからかなって思ってたけど。」

「そんなつもりなかったんだけどなぁ。」


 図星。

 彼のことをことなんて気にかけてないように振る舞いながらもそういう感じだった。


「まあまあ、何はともあれ良かったじゃない。友達としては心配はしてたんだし。」

「ありがとう。」

「もっと感謝してくれても良いよ。哲学概論取ってるのに知らんふりして本庄君に会うように仕向けた私に。こうもうまくいくとは思ってなかったけどさ。彼にも連絡して勉強手伝うように行っておいたのが正解だったのかな。」


 空気が固まる。いや、固まったのは私だけだ。

 彼女は今何と言った。


「どうしたの響?黙っちゃって。」

「景ちゃん。怒っていい?」

「あれ?もしかして本庄君から何も聞いてない感じか。」

「私がどれだけ悩んだと思ってるのさ!」


 まさかの黒幕の登場に驚くを越して怒る。


「結果オーライってことで。」


 あざとく、可愛く言う景ちゃん。

 彼女が最初から勉強の方に協力してくれていたら私はこんなに悩まずに済んだのではないだろうか。それでいて、別口で稜也との復縁を手伝ってくれても良かったのではないだろうか。

 そんな思いが爆発しそうになりながら彼女に対して、冗談みたいに怒るしかなかった。


「友達の勉強の問題も恋愛の問題も同時に解決するなんて私ってやり手だと思わない?」

「結果が出てからそんなこと言われても怒るしかないよ。」


 最初から頼るべきは稜也ではなく景ちゃんだったのかもしれない。頼ったけど見放されたが。

 まあいい。せっかく勉強も恋愛も進み始めたんだ。

 楽しまなくてはならない。

 今日だって稜也と勉強する約束をしてるんだから。

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