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紫荘の人々  作者: 中野あお
201号室:桐谷樹
2/20

1-1

 四月一日、俺の大学生活の拠点となるアパートに入居した。


 学生専用アパート「紫荘ゆかりそう」、それがこのアパートの名前だ。


 大学の近所にある上に家賃も安いし、賃貸アパートとして学生に貸すために建てたものらしいので、セキュリティやインターネット設備もしっかりとしている。それに築三年ほどしかたっていないため、内装も外装もかなりきれいだ。


 この部屋の間取りは1Kの約9畳、風呂とトイレは別で洗濯機は室内における。


 家賃は親が払っているため詳しくは覚えていないが、不動産屋が言うにはここら辺の相場と大差ないらしい。


 本当はもっと早くこちらに引っ越してきて、この辺りに少し慣れてから大学開始といきたかったが、思ったより引っ越しの準備に時間がかかってしまったのと、春なので引っ越し業者が繁盛しすぎて予約がとてれなかったのだ。それでも少し遅い気がする。母さんが引っ越しの予約をし忘れたとかが真相なのではないかとさえ思うほどギリギリだ。


 とはいえ、最初の授業まではまだ一週間はある。そこまで時間があるとは言えないが、荷物の整理をある程度したら、周辺を回ってみたい。

学校への道筋も怪しいものがあるので確認しておかなければならないし、今後の成果のことを考えるなら食料品店や駅の位置も確認しておきたいところだ。


 ピンポーン。


 そんなことを考えていると、インターフォンがなった。こんな引っ越して間もない家を訪ねてくる人物は限られている。八割方、新聞かNHKか宗教だ。


「はい。どちら様でしょうか。」


「大家の鹿深野かふかのです。桐谷君の引っ越しとか部屋とかの具合を聞きに来たんだけど、今少し時間あるかな。」


 二割の方だった。


「はい、今開けますね。」


 そう言ってインターフォンの受話器を置き、玄関に向かい、扉を開ける。


「おはよう。どう、新生活の準備は捗ってるか。」


 扉を開けると鹿深野さんが、入居前に会った時と同じような、色あせた長そでシャツにジーパン姿で立っていた。さすがに、契約の時や親がいる前ではちゃんとした服

装をしていたが、紫荘の中ではだいたいラフな服装でいるらしい。


「おはようございます。それが思ってたより手こずっていて、まだ半分も段ボールを開けていないってところです。」


「まあ、着いて二時間くらいだとそんなもんか。あと、部屋で気になった所とか不具合のある個所はないかな。」


「まだ詳しく確認できてないですが今のところは特にないですね。」


「了解。なら、また何かあったら私の部屋まで言いに来てくれ。私は101号室に住んでるから。」


 整理頑張ってと言って、鹿深野さんは去っていった。


 そして、俺はまた荷物の開封と居住環境の整備へと戻る。途中で予定外に一部別便で家具などがが運ばれてきたりしたとはいえ、二時間で半分以下というのは少し遅い気がする。焦る必要もないのだが、昼過ぎには一度休憩がしたいので、それまで頑張ってみることにした。

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