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紫荘の人々  作者: 中野あお
104号室:真田響
13/20

2-4

 正確には元カレと呼んでいいのか迷うような相手ではあるが、私の中では元カレとして処理することにしている。

 迷う点は明確に別れの言葉を口にしていないからである。いわゆる、自然消滅というやつだ。


 喧嘩なりなんなり別れる原因があったとしても別れを感じるような一言ぐらいはあるだろうから自然消滅なんてことあり得るわけないじゃん。自分で経験するまで「自然消滅」などと口にする人たちを馬鹿にしていた。それがこともあろうに私自身の身に降りかかるとは思ってもみなかった。


 私が彼と別れたと思っているのは三月。その月に何があったわけではなく何もなかったのだ。

 お互いデートをしようと予定を調整してみたものの2月頃からお互いの予定がかみ合わなくなり3月に入った頃にはお互いの予定さえ聞かなくなってしまった。デートをする気がなくなってしまったのだ。


 正直に言うと私はその頃、デートをしたかったし、まだまだ稜也のことが好きだったのだ。でも、相手から返ってくる『ごめん、その日バイトだわ。』という言葉は見るのが嫌になって聞かなくなってしまっただけなのだ。

 それ以降、連絡をすることがほとんどなくなり世間的に言う自然消滅という状態になったため、私は彼のことを元カレとして扱って気持ちの整理をつけることにしたのだった。それがこの四月の初めの話。


 だからこそ、今更あいつにどの面を下げてレジュメの貸し出し(あわよくば今までの内容をざっくりと教えてもらいたい)などとお願いすればいいのかわからないのだ。


 先ほどの友人たちのアドバイスの中にも彼に頼めばいいなどと言うものもあったが存在を無視した。

 それが一番手っ取り早いことは私でもわかっている。


 先ほどプライドを捨てるだのなんだの言ったが、それとこれとは話が別である。昔仲良かった友達に話しかけづらいというのと同じ感覚である。お願いしづらい。

 話すとなると必然的に『私たちの関係どうなってるのかな。』などという話に及ぶに決まっている。そこら辺を明らかにしたい気持ちはないわけではないが、それは今やるべきことではないし、その話で気まずくなってテストやレジュメの話ができなかったら本末転倒ではないか。


 万が一、彼から復縁を求められてしまったら、どう返答すればいいのか決めかねてしまうからだ。復縁を求められるなら、それもやぶさかでないし…なんて考えてしまうと今は彼に会うべきではないだろう。

 そんなことを考えると彼に頼もうという気はどうしても薄れてしまう。


 考えが先走り過ぎだという意見は受け入れよう。


 とりあえず稜也に頼むというアイデアは保留だ。優先すべきは協力者の確保。最悪の手段として稜也を用意してあると思えばいい。

 あと一時間だけ粘ってみて、それでダメなら稜也に連絡を取って助けてもらおう。



 …この後、延長を二回したが有力な情報は得られなかった。

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