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紫荘の人々  作者: 中野あお
104号室:真田響
11/20

2-2

「やばい。どう考えても足りない。」


 部屋の隅にある書類の山と二十分ほど格闘してようやく見つけ出した二枚の紙を交互に見つめながらSNSではなくリアルで呟く。

 一枚は昨年度、一回生終了時の成績表。もう一枚は必修単位一覧及び今年度の開講時間割表。


「今回のテストで何個まで落としても大丈夫かな」などと軽い気持ちで(実際探すのに手間がかかりすぎたが)引っ張り出してきたこれらによって、大学入学して以来初のピンチを知らされる。


「何回見ても春学期で取らないと秋学期でどう頑張っても足りないよね。」


 十数往復見比べてもその事実は変わらないし、私の見間違いでも勘違いでも何でもないようだ。

 この紙達によると、春学期で私が取らないといけない必修単位は五科目十単位。それに対して履修しているのは同数。


 さすがに私もこの大学に来れているだけはあるので馬鹿ではないし、高等教育を完全に舐めてかかっているというわけでもない。

 だから、その十単位全てがやばいとかいう状況には陥っていない。それどころか、そのうち四科目は単位を取れる自信があるし、確認する前も後もやばいとは感じていなかった。


 残った一科目これが問題だ。

 授業に出た記憶があるのは初回と二回ほど。どうも教授の言っていることがわからないし、内容も興味のあるようなものではなかった。だから、初回以外は出たとしても半分くらい寝てしまっている。

 自分の中ではもう捨てていた科目だった。

 授業は残り二回。単位評価の方法は出席が三割、中間レポートが一割、期末試験六割。残りの授業に全て出たとして私の持ち点は十点。当然レポートは出していない。


 つまり、テストで九割近い得点を取る必要があるの。

 中学や高校ならまだしも大学生の九割というのはなかなか難しいラインだ。取れないというわけはないがこれほどまでにサボっている科目で取れるかどうかは怪しい。


 七月だというのに体が冷え、縮こまるような寒さが背筋を走る。

 留年の二文字が頭の中を駆け巡る。


「なんで一科目落としただけで留年する羽目になるんだ。」


 答①:去年も二科目落としているから。

 答②:春学期の履修科目がギリギリしかとっていないから。


 自業自得だった。


 サークルにバイトに遊びにと極めて充実した大学生活を送っている代償。

 前の秋学期に単位を生贄にリア充的な生活を召還した結果。いや、単位だけでは足りずに元カレも生贄にしたのかもしれない。


「いったん落ち着こう。深呼吸をしろ、私。」


 声に出して頭の中を整理する。

 今の状況において一番最初に考えないといけないことなんだ。何から始めるのがベストだろうか。

 順当に考えて勉強をするというのが一番最適な選択であることはわかる。ただ、指定の教科書がない授業である上に授業で配られているレジュメが足りない。足りていない部分の方が多いくらいである。


 そんな状態なので復習しようにも意味をなさないだろう。

 では、そのレジュメを集めることから始めないといけない。


 そうと決まれば行動だ。

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