表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

いつも通りの一日です。

タイトルは仮です、すみませーん

そのうち変えるかも。

だれか考えてください(笑)


「……もしもし?」

『あ、アキ? あんた今どこにいるのよ』

「池袋ですけど」

『また? 本当に好きねぇ……』

「今日は新刊の発売日なんです! そんなに頻繁に来てないですよ!」

『そのセリフ、毎回聞いてる気がするわよ』

「気のせいです。絶対。そんな頻度で来てたら今頃破産してます。これでも控えめですよ」

『あぁ……、そう……』

「で、みー先輩、何か用事ですか?」

『今日の夜、非番で暇なのよね』

「……そうですかー」

『何よ、そのつれない感じ』

「普通に飯食うだけならいいですよ、ファミレスとかで」

『えー』

「じゃあ行かない」

『なにそれぇ、かわいくなぁい』

「男に何を求めてるんですか。かわいくなくていいんです。ファミレスが嫌なら先輩が飯作ってくださいよぉ。たまにはみー先輩の作った飯が食いたいです。先輩、料理上手なんですから」

『褒めても何も出ないわよ』

「飯作ってくれればいいです」

『あんたねぇ……』

「俺、オムライス食いたいんで、よろしくお願いしますね!」

『人の話聞きなさいよ』

「聞いてますって。そろそろ電車乗らないと三限間に合わないんで、電話切りますね。授業全部終わったら連絡するんで」

『はいはい』

「じゃあ、先輩、あとで。よい一日を!」

『はいはい、せいぜい勉学に励むのよ』




「で、そのみー先輩と飯を食うと」

「そうだけど」


 その返答に(わたる)はあからさまに怪訝な顔をした。一応講義中なので、その顔は控えた方がいいんじゃないのか。

弥は、普段からみー先輩の話をするときにいい顔をしない。しかしながら、今日はあまりに露骨である。実際に弥とみー先輩が会ったことはないはずだし、そんなに嫌う理由もないと思うんだけど。


「だってさ、おまえ、そのマンガの山もってくわけだろ? それってやっぱり、いろいろアレなんじゃないの?」

「何が? 置いていくわけにもいかないだろ? その前に今日はそんなに買ってませんけど!」

「俺が言いたいのはそういうことじゃないんだよ、(あき)(よし)クン」

弥は大仰に頭を抱えた、ふりをして、わからないんならいいけどさぁ、と言った。俺にだって言いたいことがわからないわけではない。しかし、弥の言うところの、いろいろアレなことがもし万が一にも起きるとしたら、すでに起きているはずだ。先輩との付き合いはかれこれ今年で五年目だったりする。その間に何もないんだ、今更何も起きようがない。というか俺にはそもそもそっち(・・・)の気はない。我ながら説得力はないけれども。

今日買ってきた漫画たちに目を向ける。どれもこれも、発売を楽しみにしてた新刊である。偶数月しか出ない雑誌の単行本は出るまでに時間がかかる。そうじゃなくても好きな作家さんは不定期連載で、年に一回も出ればそれで万々歳だ。本当だったら、教授の話なんかそっちのけで、今すぐビニール開けて読みたいところだけど、残念ながらそれはかなわない


Q.何故か。

A.買ってきた漫画のジャンルが、いわゆるボーイズ・ラブってやつだからです。はい。


やっと最近になって開き直って、どう見ても女性向けの冊子をレジに持っていけるようになった所存です。ちょっと前まではできるだけ通販してたんだけど、振込手数料とか送料って結構かかる。大学に通うようになって、池袋が定期券内になったことをきっかけに本屋で買うようになった。店舗特典の描き下ろしペーパーももらえるし、発売日その日に入手することができるし、一石二鳥である。運が良ければフラゲもできて、店舗特典がもらえる場合だってある。


まぁ、つまり。俺はいわゆる腐男子ってやつなのだ。

まぁ、弥が怪訝な顔をしている原因はそれだけではないことはわかっているのだけど。


「っていうか、今日バイトじゃないの?」

新刊の発売日なので休んだ、と返したら、弥はこちらを一瞥した後、大きくため息をつきやがった。




授業終わりましたよ、とメッセージを先輩に送っておく。うーん、授業終わりってどうしてこんなにだるいんだろう。腹も減るし。

トートバッグに教科書と充電器、それからケータイをしまって教場を出る。外はもう薄ぼんやりと暗くなり始めていた。


「弥、なんか食って帰んない?」

「お前、今日先輩のとこ行くんじゃなかったか」

「いやぁ、それもそうなんだけど、腹減ったしさぁ。ラーメンくらいなら普通に食えるし」

「否、食えるか食えないかっていうよりも、早く行った方がいいんじゃないのかっていってんの、俺は。」


なるほど、と返したら弥にため息を吐かれた。本日二回目である。だからお前はさぁ、と言わんばかりである。でも普通に夕方だし腹減るじゃん。


「お前、ほんとにあの人と何もないの? 毎週毎週、絶対会ってるのに? お前そんなに楽しそうなのに?」

 その言葉にはいろんなニュアンスが含まれているように思えた。

「むしろしょっちゅう会ってるからこそ何もないというか。っていうか、俺は普通に女の子好きだかんね? いわば、先輩は俺の数少ないお友達だよ。俺の嗜好を知っても怪訝な顔をしない人。弥もその一人だね!」


 聞いてきたくせに弥は「あっそ」とだけの返事をよこしやがった。常々思うけど、俺に対する優しさが足りないよね、弥くん。

 


そのあとすぐに、《ミックスチーズ買ってきて》という先輩からの返事を受けたので、結局俺はそのまま先輩のところへ向かうこととなった。うーん、腹減った。まぁ、でも、今日は食べたいもののリクエストもしちゃったわけなので、なるべく早く向かうのが礼儀ってものなのだろう、おそらく。

電車に乗る前に、大学そばのスーパーでミックスチーズを購入した。オムライスで使うのだろう、言いだしたのは俺なので文句は言うまい。最寄駅から先輩の家に向かう途中にはスーパーマーケットが無いのだ。不便な場所に住んでいると常々思う。ミックスチーズって、スーパーでは冷蔵コーナーに並んでるのに、わが家では冷凍かパーシャルで保存する。不思議だよなぁ。

電車を降りるころにはもうあたりは暗くなっていて、何とも言えない気分になる。ここから先輩の家までは二十分歩く。母さんに連絡すると、あんまり入り浸るのやめなさいよね、迷惑になるでしょ、とかそんな感じの返事が返ってきた。一応素直に返事はしておいたけど、どう考えても先輩のほうが俺に声をかけているので問題ないと思う。

途中のコンビニで、マカロンを買った。最近の先輩のお気に入りである。値段の割に美味しいのだそうだ。マカロン。否、見た目確かにかわいいんだけど、あんまり腹にたまるとは思えない。四つで三百円を超えてるのに、安いらしい。適正価格もわからん。その思考回路の差が、俺と先輩では決定的で、みー先輩たる所以って感じがするんだけど。

十分も歩くと、高い建物は少なくなって、割と住宅地である。東京都心と言えども、ちゃんと人が住んでいるのだなぁ、と思う風景である。あんまり高い建物ばかりに囲まれていると不安になってくるので、住宅地は安心する。なんていうか、生活感がある。

先輩の家はそんな住宅地の中の普通のアパートの二階、角部屋である。単身用なのでキッチンと風呂が狭い。洗面所が独立しているのは先輩のこだわりらしい。俺だったらきっとどうでもいいポイントである。本人には言わないけど、そんな狭いキッチンでも手際よく料理しちゃうのだから、すごい人だよなぁ、とか思う。狭すぎて普通にものを置くスペースがない、というのにだ。

外付け階段を上ると、カンカン、といった音が響く。周囲が静かなのでなおさらだ。インターホンを鳴らすと、開いてるわよ、というくぐもった声が聞こえたので、遠慮なくドアを開ける。


ガスコンロの前で炒め物をしている、身長百八十五センチ、みー先輩こと、斉藤幹尚(みきひさ)先輩のご登場である。今日はオフの日なので、アッシュブラウンの長い髪を後ろで結っているようです。


そう、弥が気にしている点であり、いろいろとアレなことになりそうな一番の原因。

みー先輩は男である。

そしていわゆるオネエである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ