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会社一のイケメン王子は立派な独身貴族になりました。(平成ver.)  作者: 志野まつこ
第2章 おまけのコーナー <その後の二人>
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1、たろちゃんの、俺の扱いがひどい気がする

 2月26日に日間『恋愛』ジャンルランキング1位をいただきました。

 読んでいただいた皆様に感謝を申し上げます。

 「平和にのほほん」を受け入れていただきありがとうございました。

 

 「まさかの1位をいただいてしまったので感謝の気持ち」更新なのですが、ほぼ高田兄さん視点です・・・


 堀ちゃんと同期の高田兄さん視点から始まります。


 保温機能付きの弁当箱。

 ご飯と、おかずと、汁物が別に入れられるあの弁当箱は、わが社の男性社員にとってはちょっとした憧れだ。


 あれを持って来る社員は「奥さんとラブラブ」オーラがハンパない。

 うちも新婚当時はあの弁当箱だったけど、子供が生まれてからは使わなくなったんだよなぁ。

 部品が多くて洗うのが大変らしい。

 まぁ弁当を作ってくれるだけでありがたい話なので文句はないんだけど。


 それを、たろちゃんが持って来た時はもう。


 なぜかこっちのテンションが上がりまくった。


 思わずたろちゃんの肩をバンバン叩いて睨まれた。


 うちの会社が出勤日で、かつ堀ちゃんが休みの土曜。

 その日だけ、たろちゃんは弁当を持って来る。


 堀ちゃんの作る弁当はかなり渋い。

 会社で業者に発注している弁当屋の弁当のごとく。

 健康面を考えての事なんだろうなぁ。

 あ、今日はその唐揚げ、それ冷凍食品じゃないよね?

 うわー、たろちゃん愛されまくりじゃん。


 食後、お茶を飲んで一息ついた後。

 無言で一瞬手を合わせ、ごくわずかに首を前に倒すたろちゃん。

━━━ごちそうさま、って事?

 ほんの一瞬。

 何度も言いたいくらい本当に一瞬の事なんだけど、その様子に見とれてしまった。

 え、なにこれ。

 仕草がきれいって言うの?

 それとも堀ちゃんへの愛の深さへの俺の動揺?

 よく分からないけれど、なんかちょっとときめくものがあるんですけど。




 たろちゃんが堀ちゃんと付き合っていると知ったのは、たろちゃんと一緒に出張に出ていた若手からの情報だった。


 なんで言わないんだよ、たろちゃん!

 堀ちゃんは俺の同期なのに!

 すっごいショックだったんですけど!


 実はたろちゃんが出張に行っている間、「たろちゃんはシングルマザーと付き合っている」という噂が広まっていた。

 大っぴらではなく、こそこそした感じで。

 俺は堀ちゃんが未婚だと知っていたから誤解はすぐに解けたけど、他はさらにひどい事になった。


「1課の佐々木が昔経理にいた堀ちゃんと付き合っているってさ」はいいよ。


「堀ちゃん、シングルマザーになったの?」とか。


「え、堀ちゃんは子供いないっしょ。二股って事?」とか!


 二人ともそんな子じゃないから!


 堀ちゃんと今も付き合いがあり、俺と同じ課の明子姉さんは「は?堀ちゃんと付き合ってるのにシングルマザーとデート?」と実に剣呑な目をしたので慌てて説明した。


 そのお子さんは堀ちゃんの姪っ子さんだそうです!!


 クールだと思われているたろちゃんに確認する猛者もほぼ皆無で、一時期たろちゃんはやや引いた目で見られていた。


 俺は頑張った。

 なぜかめちゃくちゃ頑張ったよ。


 まず子供と一緒にいるところを目撃した社員に真実を伝えたさ。

 それだけじゃ当然不十分だから、演じたよ。

 演じに演じたよ。


「堀ちゃんの姪っ子ちゃんと3人で動物園行ったんだって? もう家族ぐるみ?」

「堀ちゃんの姪っ子ちゃんと3人でよく遊びに行くの?」

 そう休憩所で声を大にしてたろちゃんと話した。


 はじめは不審そうにしていたたろちゃんだったけど、事態を説明したらかなり動揺していた。

 やっぱり社内の噂に全く気付いていなかったんだ、たろちゃん。

 他人からの目をあんまり気にしない男だもんなぁ。


 俺の地道な努力を褒めてほしい。

 たろちゃんにそう言ったら、休憩中にジュースを1本おごってくれた。

 安い・・・


 明子姉さんも女子社員に言ってくれたおかげで事態は急速に納まった。

 やっぱり女の子の方が情報が早い。

 お局ポストに君臨する明子姉さんは、若い女子社員に堀ちゃんの事をよく聞かれたので、好都合だった。

「たろ先輩の彼女さんってどんな人でしたか? 前に経理にいた人なんですよね?」

「すごいいい子だよー。シングルマザー説あるけど違うからね。姪っ子ちゃんなんだって。30過ぎると親兄弟やら姪っ子甥っ子やらとの付き合いも出てくるんだよね~」

 もうじき四十路よそじを迎える姉さんが、若い女子社員たちに放った言葉には含蓄があった。

 

 社内の30代以上の社員はほとんどが堀ちゃんを知っているし、覚えていた。

「たろ、堀ちゃんとつきあってんだって? 堀ちゃん元気?」

 そんな冷やかし半分の声にも、たろちゃんはものすごく丁寧に応じている。

 変に誤解されるのが嫌なんだろうな。

 堀ちゃんの事を悪く言われるのは避けたいんだろうな。


 普段、絶対にたろちゃんと関わり合いがないような、いわば堀ちゃんと関係の深かった事務の部課長からまで声を掛けられていた。

 日々、仕事ばかりであまり変化のない社内で、しかも30代以上は若い社員と違ってこういったネタに関しては本当に枯れている。

 この新鮮で実に美味しいネタに、ほとんどの社員が食いついた。

 


「この間、社長に声かけられた」

 ぽつりと言ったたろちゃんは、遠い目をしていた。


 ・・・だろうね、社長、社員の恋愛ネタ大好物だもんね。

 社内恋愛は特に。

 堀ちゃんは元社員だから社長はそれは盛り上がっただろうな。

 ストレスを口実にした退職だったけど、惜しまれての退職だったし。


 結婚式で主賓挨拶をお願いされる事が多い社長だけど、「そのカップルと会食」がわが社の伝統だ。

 俺の時もいいものを食べさせてもらった。

 根掘り葉掘り聞かれつつ。

 挨拶の時の参考にする、というのが社長のいい分だけど、あれは社長という権利を最大限に利用した社長の趣味だと思う。

 会食代はすべて社長のポケットマネーだと堀ちゃんから聞いた事がある。

 経理をしていた堀ちゃんの話だから、間違いないはず。

 趣味と、あとは旦那が不在がちになってしまう新妻への配慮もあるのだろうと、最近になって思うようになった。



 て言うか。

「なんで今さら堀ちゃんなの?」

 思わず言ったら、たろちゃんがものすごく怖い顔をしたのでめちゃくちゃ慌てた。


「いや、悪い意味じゃなくって。昔、堀ちゃんとくっつけようと思って合コンした時は全然だったのに、なんで今になってと思ったんだって」


 たろちゃんは驚いたように目を見張ってから、眉間に皺を寄せる。

 ますます嫌な顔になった。

 おおぅ、きれいな顔の男の険しい顔は迫力があるなぁ。



◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆



 こいつは何を言っているんだろうか。


 堀ちゃんと一緒にいると、いろいろな事を思い出した。

 彼女の事を考える時間が増えたからだろう。


 その合コンはお前が幹事の癖に「俺、彼女がいるから」とドタキャンしただろうが。

 それで彼女と二人で幹事はしたが━━━分かりにくすぎる。


 それにあの堀ちゃんだぞ。


 年上ばかりの集まりで、あの幹事肌で気遣いしまくりの彼女が、自分の相手を見つけようなんて思うわけがない。

 そもそも自分が楽しもうとさえ思っていなかったんじゃないかと思う。

 いかにそつなく進行し、盛り上げるか。

 それしか考えていなかったに違いない。


 思わずため息が出た。

 でもまぁ、あれがなければ「会社の経理の子」で終わっていた関係だとは思う。


 感謝するのはとても癪なので、午後の休憩でまたコーヒーでもおごればいいか。


 あぁ、そう言えば。

「なぁ、お前の家って新築建てたんだったよな?」

 ふと思い出して尋ねると、高田は唖然とした顔つきになった。

 

 どうしてそんな恐ろしい物を見るような目で見てくる。





分かってます、「これじゃない」感満載ですよね。

ちゃんと「堀ちゃんとたろさん」のその後の生活も書きます。


 堀ちゃんのお弁当が渋いのは、前日の夕食のおかずを多めに作ってお弁当にも入れるからです。

「お弁当に入れられるもの」「日持ちする物」を選ぶので煮物など和食になりがちなだけ、という・・・

 もしかしたら書く機会がないかもしれないので念のためこちらに記載させていただきました。


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