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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
プロローグ
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04 厨房の女神

 残念ながらプロローグはまだ続くんですねー


 では第四話、始まります。

 この屋敷の人間はただ見栄が張りたいだけの馬鹿ばかりだ。

 いや、使用人の中には心の底から尊敬するやつが何人か居るぜ?

 でもよ、抵抗しない少女を袋叩きにして喜ぶような主人は流石に使える気なくすわ。本気で。

 ここを辞めたところで、ここ以上に給料がいいとこに行けるわけでもねーからここで我慢するしかねーけどよ………。


 「おい、てめーら!! 今日も食べるやつのことは考えず最高の料理を振る舞おうぜ!」

 「おう!」


 実に潔い返事で俺は嬉しい!

 難儀な性格をしてる自覚がある俺だけど、一応この屋敷の料理長なんて肩書きがあったり。

 それなりに美味い飯を作ることに関しては自信があるんだが、誰も俺の来歴を信じちゃくんねぇんだぜ?

 数年前まで傭兵してて、料理なんざ繊細さなんて皆無の臨時食ばかり食べていたただの一般国民なのによ。

 なぜかみーんなあのおっかない家政婦長様のいう事を信じやがる。


 「おい、シララは渋みがあるから水で晒せって言ってるだろ? 他の野菜を使わないときはする必要はないが、今日のメインは炊き合わせだぞ」

 「はい、ありがとうございますっ!」


 シララは最近首都の女性たちに人気が出てきた老化防止の野菜だ。今の時期のシララは皮が薄くて種も少なく身が締まっているから美味しい。


 「誰だ、このソースを作ったヤツ!」

 「は、はいっ! た、ダメでしたか………」


 いつも使っているソースではない。

 ソースは料理を大きく変えてしまえる物だから、かなり繊細に作らなければならない。料理に合わないのはもっての外だ。


 「はっはっは、繊細さに欠けるが程よい辛みが食欲をそそるな、腕を上げたじゃないか!」

 「………え? あ、ありがとうございます!」

 「おい、てめーら!」


 全員の目線が俺に集まり、ニヤッと笑って言葉を続ける。


 「少々献立を変える、いいな?」

 「っ! はい!!」


 家政婦長や執事長がまとめるようなややこしい人材は、ここ厨房にはいない。

 同僚に先を越されて悔しそうにしたとしても、その同僚を貶めようとしたり過剰な嫉妬をするような人間はここにはいない。

 俺がそういうの嫌うから。


 「動け動け! 時間は止まっちゃくれねーぞ!」

 「はいっ」


 あ、話をもどそう。

 偽の経歴によると、俺は王都、まぁ首都エビュリーズにある結構有名で王族の方々が足蹴く通いたくなるような店で修業しいたらしい。しかし修業を終えてからも料理の見聞を広める為に旅をして、途中で戦争に巻き込まれる。その時片足を失い、打ちひしがれているところに治療院、つまりは教会に勤めていた現在の妻に惚れ結婚。ここガラムに定住する決意をし、この屋敷の下見に来ていた家政婦長に見初められ屋敷の料理長を任されることになる………って、自分で考えても恥ずかしくなるような来歴を、まるで自分の事のように自慢する部下のせいで、このガラムで俺は不屈の料理根性を持つ料理馬鹿みたいな少々不名誉なことを言われるようになっちまった。

 全てはあの家政婦長のせいだ。

 しかも微妙に真実を織り交ぜているのがいけすかねぇ。

 料理に興味が湧いたのは妻と結婚して、足が悪くて元気のない俺を何とか立ち直らせようと、妻が試行錯誤して作ってくれた料理、粥が原点だ。

 出来の悪い男にも出来のいい女が惚れてくれるんだぜ。うん、片足失った時に諦めて命投げ出さなくて本当に良かった。


 「………おい誰だ? ポロシの根の芽が取れてないぞ、食中毒でも起こす気か?」

 「す、すみません! ご指摘ありがとうございます!」


 余談だが、俺は俺の城である厨房で謝るという行為を基本許さない。

 訳? 「すみません」って言う言葉は籠る音が多いせいか声が小さくなり心も縮こまっちまう。だが「ありがとう」は大きく口を開けて大きな声が出しやすい。つまり心も軽くなりやすい。

 かるくなってふらふら飛んで行かれちゃたまったもんじゃないが、ある程度明るくならないと新しいことに挑戦する気概も消えちまう。

 持論だがな。

 それともう一つ。「すみません」って言葉、なんか嫌いなんだ。


 「………おはようございます」

 「来たか! おはよう嬢ちゃん」


 俺がこの屋敷で嬢ちゃんと呼ぶのは一人だけ。

 俺が料理に興味を持つ原因となった粥、活人粥に入れる薬草の調合を妻に伝授したのは、嬢ちゃんの母親なのだ。

 この屋敷の奥方がどこからか連れてきて、手慰みに暴力を振るわれる少女の正体を知ったのは、既に旦那様が少女を正式に飼った後だった。白魔女として細々と生活を営んでいた嬢ちゃんの母親に何があったのか、詳しいことは俺も知らねぇ。

 恩人の娘がこんなところで不当な扱いを受けている事実だけは俺を看過することができない。が。なんとかして抑えろとの家政婦長の命令があるので俺は毎日必死にこの屋敷の主人たちを殴りそうになる拳を抑えている。


 「日よけ広げるからちょっと待ってな」

 「はい」


 厨房の上は全て使用人が歩く為に作られた秘密の通路な訳だが、ここの獣人が何かの間違いで顔をのぞかせて、そこから偶然(・・)にも陶磁器が落ちて来ないとも限らない。

 なぜかここの住人は総じて嬢ちゃんを嫌ってやがる。

 いや、嫌ってるんじゃなくて、あれは家畜を見る時の目だな。ま、奥方の目の奥には妄執………それよか嫉妬か? とにかく尋常じゃない感情が押し込められているのがよくわかる。

 傭兵の頃の経験則だけどな。


 「ほれ、今日の献立はなー」

 「はやさいとにくのくんせい、エザーとさかなのあえもの、みみのたまごのサラダ、それぞれを挟んだパン」

 「………折角俺が考えた料理名言ってやろうと思ったのに」

 「ながい」

 「見ただけで中身が当てられるとか………ほれ、召し上がれ」


 俺の後ろでは平の料理人たち(俺の手下共)が嬢ちゃんに羨望の目を向けるが、嬢ちゃん程になればそんな目線を集めるのも当然だろう。全く末恐ろしいガキだわ。

 最近巷で流行し始めた古代料理の作り方をまとめた、この屋敷発祥の料理本の著者は俺になっているが、本当は嬢ちゃんが解読したのを俺が作り、ある程度今の様式に合わせるように改良を加えて出版した物だったりする。

 白魔女はどうやら娘に七か国語を仕込んでいたようで、難しい言い回しをしているような本でなければなんでも嬢ちゃんは読めてしまうらしい。この大陸では皆共通語なのに、白魔女はなんで嬢ちゃんにんなめんどくさいことを教えたのか不明だ。しかも、どうやって習得したのか興味が出て聞いてみたところ、一日一日ローテーションを組んで、七日で別々の言葉をしゃべるという日常を送っていたらし。

 どんな英才教育なんですか? 白魔女さんよ。


 「そうそう、この前発掘した『カリアゲ』だったか? あれ出来たから昼休みに試食会な」

 「名まえちがう、『からあげ』。ありがとう、たべにくる」


 無表情(ポーカーフェイス)

 いや、感情の表し方を忘れたんだろう。

 最近になって日の奥でチリチリと感情が瞬いているのを見かけるが、それ以上になったことを見たことが無い。表情筋なんてないんじゃないかって思う程の鉄仮面っぷりである。


 「そうそう、昼休憩のときにでも知識が手に入ると思うぜ」


 これは暴力家政婦と小言執事と俺の間で決めた台詞だ。

 この屋敷から主人たちが消えること、今日から一定の期間小屋ではなく使用人の泊まる離れで暮らす事になることを伝える為に作られた台詞で、「知識が手に入る」というのが鍵。頭がよく、知識を際限なく吸収していく嬢ちゃんの為に様々な本や、知識を見せようと決めて考えたのだ。俺が。

 実はこの屋敷の中にちょっとでも嬢ちゃんが入ってしまうと、旦那様がいつも身に着けている指輪が点滅して屋敷中の警報器がけたたましく叫ぶという、どう考えても一人の少女に対して過剰すぎる装置が備え付けられている。


 「うん。………あ、くんせいにかかってたソース、おいしかった。あたらしいね」


 その一言を言って嬢ちゃんは日よけから出て行った。

 後ろを見ると、ピリ辛ソースの製作者が無言で涙を流していた。

 気色悪い。


 「嬢ちゃんに褒められるなんて良い仕事したじゃねーか!」

 「はいぃいいー!」


 嬢ちゃんの舌は俺の舌より数倍感度が良いらしい。

 ここの料理人が一目置く俺の料理でも、嬢ちゃんの舌に敵うようなものは数点しか作れない。単品だったらそれなりに合格点をもらえるんだが、全てが混じった料理となるといい結果をもらえないのだ。幾ら手先が器用で料理好きとは言っても、元傭兵がそんな繊細な味付けを簡単に行えるとか思うなよ。

 そんなこんなを知っているが故のこの喜びようなんだろうが………気色悪いな。


 「ほれ、丁寧に急げ! あと半刻で準備完了だ」

 「はい!」


 あの暴力家政婦の手下が手を抜くとは思えない。

 さっき来た家政婦に少々手を加えた献立になったと伝えなおさなければならないが、重要なそこじゃない。

 きっと食堂のテーブルの上は完全な状態で設置されているだろう。それに応えなければならないのが料理人だ。しかも完璧な状態で、きれいに磨かれたカトラリーがテーブルを支配し、献立を知る家政婦の手によって今日の朝食の色に合わせた配色に部屋の内装が変わっているだろう。

 それらを予想して盛り付けから何やらを澄まさねばならない。

 どうやら本来関わる必要のない料理長の腕の見せ所がやってきてしまったらしい。来てほしくないんだが。


 ―――たとえ誰であろうと、食材に罪はありません。最高の料理をの為に己が腕を振るうと誓いなさい。


 初めて暴力家政婦に会った時に言われた言葉。

 今でもはっきりと思い出せる。

 なぜかって?

 あいつが片手に巨大な肉切り包丁を持ち、もう片方の手で小さな場所と同じ位大きな野生の猪を引きずってきたときに言われた言葉だからだ。

 忘れるなんて無理だろ。

 しかも料理に楽しみができてきて、丁度鍋に挑戦してみたいなと思った時に尋ねてきた珍客に俺と妻は腰を抜かして尋ねてしまった。


 ―――は、はぁ………。それ、貴方が?


 二十代の年若い女性が、真っ白の前掛けを血で赤く染めて目の前に登場したのだ。声をかけられただけ褒めてほしいぐらいだ。

 足を失う前だったらそのくらいの猪、切り伏せるのは簡単だとは思うが、料理包丁、大きくともへし折る為の肉切り包丁で仕留められるとは思えない。だから言ったのだが、簡単に肯定され、その後屋敷で働く様に勧誘された。


 ―――ええ、猪料理を作るんでしょう? 私の勧誘を受けなさい


 最初から高圧的で、いつの間にか外堀が埋められていて入らざるを得なくなった屋敷で働き始めた俺の才能が開花したとか騒がれているが本当は違う。

 全てはあの暴力家政婦と小言執事が作り出した三文芝居なんだ。

 誰か気付いてくれ。

 今回は厨房の料理長さんでしたー


 あ、流星群綺麗でしたねー

 こっちに降ってきたら・・・とか考えてwktkしてましたわw


 次回、明日投稿(予定)

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