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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
プロローグ
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02 少女の日常

 プロローグはまだ続きます。


 では、始まります。

 夢から覚めた少女は、今自分が居る場所を真っ先に確認する。

 額には玉のような汗が浮かび、背中が冷たい。

 藁に布をかけただけの質素のベッドには、じんわりと汗の跡が見える。


 「わたしは『まおう』になるかも、しれない………?」


 呟くと同時に夢の中で起きた出来事が頭をよぎる。

 躊躇いもなく振りぬかれた輝く剣、生きることさえ否定した白い少年。

 中央にいたらあそこで物言わぬ死体になっていたのは自分かも知れない。少し離れた場所に居たから助かった。少女は安堵と罪悪感に駆られる。

 ふと、冷たい風が少女の頬を撫でる。


 「―――っ!」


 少女は近くに置いていた薪代わりの木の棒を手につかみ、勢いよく後ろを振り返り、藁に敷いた布に足を取られ盛大に地面に転げた。

 多少古くなり破れている服だが、長袖と長ズボンだった少女の肌が裂けるようなことは無かったが、運の悪いことに転げた音はことのほかよく響いた。


 「うるさいぞ! 静かに寝ていないかっ! この役立たずが!!」


 少女のベッドがある空間に備え付けられたたった一つの出入り口から、鼻を赤くし、口から酒の匂いを発する男が入ってくる。恰幅がいい男だが、身長はそれほど大きくもなく、その空間に難なく入り少女を怒鳴る。

 男は少女が地面に転がっているのを見て眉を吊り上げ、その手に木の棒が握られているのを見ると口の端を上げる。もともと赤かった顔をさらに赤くし、男は少女の手から木の棒を奪い取った。


 「何だ? この木の棒で俺たちを殺そうとしたのか、あぁ?」


 男は木の棒をへし折り、小屋の外へと放り投げる。


 「んな事考えてる暇があるなら働け! お前は俺たちに生かされていることを忘れるなっ」

 「ぁぐっ………」


 男は倒れたままの少女の背を蹴り上げ、少女が苦しそうにえずくのを満足そうに眺めると小屋のドアを勢いよく閉めて出て行った。

 小屋、いや掘立小屋。そう言えるかどうかさえ怪しいほどの、お粗末な小屋のような何かに少女は詰め込まれていた。むき出しの地面には何も敷かれておらず、壁は隙間と言うのもおこがましい穴から風が吹き抜け、外の景色をうかがうことができる。

 少女が着ている服以外にこの部屋にあるのは、藁の山と数枚の布。明かりを灯すのも、明かりのわかりになるようなものもない。


 「………」


 少女は呼吸を落ち着かせ、土で汚れた袖で涙を拭う。

 あの程度の扱いはいつもの事。むしろ少女にとって、薪代わりにしようとしていた本来薪にもならないような木の棒を捨てられ、背中を思いっきり蹴られる程度で済んだのが奇跡とも言える。


 「ひっく………」


 少女の頬には涙が流れる。

 声を漏らさないように、ベッドに顔を押し付けて、少女は泣く。

 暴力を振るわれたことでもなく、現状に対してでもなく、少女派夢の中で死んでしまった三人と、その場所に居なくて良かったと思う自分の浅ましさに涙を流していた。

 しかし少女には、なぜ自分が泣いているのかその理由が分からない。自分の中で渦巻く感情に整理がつかないばかりか、相応の教養が無い為当てはめる言葉が分からない。

 少女はどんどんと湧いてくる涙を流し、訳の分からぬ感情に翻弄されながら浅い眠りに落ちて行った。




 目が覚めたのはまだ薄暗い時間。

 掘立小屋の真横には立派な厩舎があり、そこにはかなりよい状態の馬が数頭並んでいる。

 少女が厩舎に入ると、馬たちは嬉しそうに顔を寄せる。それだけで馬たちがどれだけ少女を好いているかが分かる。


 「………おはよう」


 少女の言葉に馬たちは鼻を鳴らす。

 少女は一頭一頭の様子を確認し、悪い状態の馬がいない事を確認すると、仕切りの外に散らばってしまった藁を一か所にまとめ、厩舎の奥から新しい飼葉を餌場に広げ、そちらに意識が行っているときに仕切りの中に散らばっている糞と汚れた藁を集め、新しいものに交換していく。

 少女の行動を馬たちは知っている為、自ら少女の邪魔にならないように動き、少女の「ありがとう」という言葉に鼻を鳴らすことで応えている。


 「………お水もかえないとね」


 少女は厩舎を出て、取っ手の付いた少し大きめの桶を持って井戸へと駆ける。外は雪こそ積もっていないがそろそろ振ってもおかしくないと思えるほどの冷気で、その冷たさは容赦なく少女の肌を突き刺す。

 裸足の少女が踏みしめる地面には、サクサクと音を立てて、少女の足跡が残る。おそらく太陽が完全に昇ったならばその足跡も消えるだろう。

 井戸に着いた少女は井戸の蓋を開け、地面に置いてある小さめの桶から伸びている紐を滑車に取り付け、井戸の中にゆっくりと桶を落していく。

 桶は水面に落ちると、桶の重さで水に沈み、完全に沈んだのを確認すると少女は力を込めて滑車の先に垂れる桶と反対側の紐を引っ張る。腕がちぎれそうなくらい重い水がいっぱい入った桶を地上まで引き上げ、持って来た桶の中に水を流しこむ。それを数回繰り返すうちに手は赤く染まり、踏ん張っていた足元がぬかるむ。

 持って来た桶に水がたまると、少女は元あったように井戸に蓋をし、小さい桶と紐を井戸の脇に置き、厩舎へと戻る。


 「この、ままじゃ、のめない、ね」


 少女は厩舎の中に入る前に足に着いた泥をなるべく落とし、桶を持ち直し厩舎の中に入っていく。

 馬たちは少女の帰りを歓迎し、少女の持つ水に視線を向ける。


 「まって」


 少女は仕切りの外で、馬たちが近づかないのを確認してから言葉を紡ぐ。


 「『Mutare a foma “Ignis” in “Aqua”. Effusus.』」


 少女の目線の先にあった桶の、凍えるような冷たい水が一瞬の内に熱いお湯へと変化した。

 立ち昇る蒸気に馬たちはそろって顔をそむける。

 少女はその桶を放置し、それぞれの馬に割り当てられた水を入れた桶に近づき、再度言葉を紡ぐ。


 「『“Aqua ” manera apparet mutari mea. Purificatio.』と、『“Apua”.』」


 桶の中の濁った水が透き通り、減った分だけの水が湧きあがって、桶には一定の量の水が溜まる。

 少女は壁にかけてある杓子を手に取り、運んできた桶に入っているお湯を掬い、二杯ほどそれぞれの桶に入れ、ほんのりと水を温める。

 全ての馬が水を飲み始めた頃、少女は玉のような汗を額に浮かべて、肩で息をし壁にもたれかかっていた。


 「お、おわった………かたづけ、ないと」


 少女は空になった桶を元あった場所へと片付け、厩舎から出る。

 薄暗かった空が白み、冷たい空気が太陽に照らされ、ほんのりと空気が温かくなっている。

 少女はほんのりと温かくなった空気を吸い込み、全てを平等に照らす太陽を目を細めて見つめる。


 「おはよう………おやすみなさい、かあさま」


 太陽が昇れば、その明るさで星の輝きは失せる。

 少女は掘立小屋に戻り、自分の暮らす屋敷の人間が完全に起きるまで仮眠をとるのだった。

 太陽の光を反射して星って輝いてるじゃないですか。

 火星が赤く見えるのは酸化鉄を多く含んだ赤茶色の土や岩に反射してるからあの色じゃないですか。

 あまり遠く離れすぎると色の判別とかできなさそうですけど、雲が発生したりして青かったり白かったり忙しい地球はどういう風に見えるんですかね


 次話………明日投稿できるといいなっ

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