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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
プロローグ
1/113

01 子供たちの夢

 見切り発車

 視点がコロコロ変わる可能性がある為、そういうのが苦手な人はブラウザバックした方が良いかも………


 はじまります。

 すっごく変で、奇妙な夢。

 そんな夢を最近、毎日のように見ている。

 私とほとんど違わない大きさの人型の、白か黒で塗りつぶされた何か。目も耳も鼻も口も髪も全て一色で塗りつぶされた二色の沢山のものたち。

 私の手は黒く染まっているから、きっと周りにいる黒いのと同じ格好をしているのだろう。

 この夢を見るようになってほぼ一年が過ぎている。夢が始まって最初の内は、周りに話しかけたりしてここが何なのか聞こうとしたけど、声を出すことも聞くこともできないからあきらめた。手振り身振りで伝えようとしていたこともあるけど、色が重なると判断が付かない。どんどん人型は増えて行って、増える度に皆同じことを繰り返したけど、増えなくなってからは皆思い思いに過ごすようになった。

 何もない空間でできることと言えば、チョットした手遊びと駆けっこぐらい。触れることも出来ないから、大体は思い思いに退屈な時間を過ごしていた。

 そして今日、そんな退屈な夢が終わる。


 ―――『勇者の卵』と『魔王の卵』よ


 眠りに落ちて、いつもと同じ夢だと思っていたら、今日は勝手が違った。

 白と黒でごちゃ混ぜになっているはずのその場所で、白と黒で分けられお互いに向き合って立っていたのだ。しかも空間も半分に分けられて色が反転している。私の立って行く黒側には白い床、向こうの白の人型が立っているのは黒い床だ。そしてその間は、まるで地震の跡のように裂け、大きな溝ができている。

 そして、空から聞こえた声にほぼ全員が上を向いた。


 ―――お前たちは未来の『勇者』と『魔王』になる可能性を秘めた子供たちだ。


 空には虹色の泡が立ち込めていて、その泡から声が聞こえる気がする。

 泡が言ってることはよくわからないけど、私たちは声が聞こえたことに驚いて、周りを見渡した。

 触れそうな距離にいる黒い人型に触れられるし、どこに口や耳があるか分からないけど声も出せるし聞くこともできる。相手がこっちを見ているかどうか分からない状況で話しかけるのは少し恥ずかしいけど、いつもとは違う状況にわくわくしていた。


 「お、おまえ! へんなこというなよな!!」


 黒い人影の殆どはいつもとは違う状況に慌ててたり、私みたいにちょっと楽しんでみたりと状況把握に走ったけど、どうやら向かいの白い人型のほとんどは泡の声を聞いて考えていたらしい。

 発言した方を向いても真っ白だから特定はできない。でも声からしたら同い年ぐらいの男の子だろう。


 ―――ほぅ、威勢がいいな。『勇者の卵』の欠片よ


 発言したのは白い集団の中にいる男の子。だったら白が『勇者の卵』で黒が『魔王の卵』になるのだろうか。

 ……将来『魔王』になるんだろうか。

 親が話してくれるだろうお話で有名なのはいつの時代でも『勇者伝説』である。建国の話や、国を救った英雄の話などが多く記される『勇者伝説』の中には、世界を滅ぼそうとした『魔王』に立ち向かい見事打ち滅ぼした『勇者』のお話も出て来る。

 『勇者』は、『魔王』に攫われた国の姫を助ける為、旅で出会った仲間たちと共に『魔王』の元へと向かい、『魔王』を倒し姫を救い、国の英雄になるという一般的なお話。 


 「『まおう』はわるいやつだろ!しょうらいそうなるならぜんぶころせばいいじゃないか!」


 その言葉は、黒い人型を震わせた。

 『魔王』になるかも(・・)しれないのに、白の少年は殺してしまえばいいと言うのだ。

 殺される。

 町や村から出てしまえば、獣や魔物にやられるだろう。

 いや、それよりも。

 『魔王』になるかもしれないと知ったら、追い出されるのではないか。

 そう連想するのは簡単な事だった。


 ―――ふむ、ならば『勇者の卵』の欠片よ


 泡が一度光り、上に一振りの輝く直剣が現れる。

 その剣は白の少年に向かっていき、白い少年はそれを受け取ったようだ。

 白の集団の中に少年の姿が浮かび上がる。その姿はお話に出て来る『勇者』のように輝き、側に居る他の白の何かとは何か変わったように見受けられる。

 その様子を、白も黒も、その様子をただ見ていた。


 ―――これをもって殺して見せよ。『勇者の卵』の欠片よ


 いつの間にか、白と黒の間にできていた深い溝は、最初からそんなもの無かったかのように消えていた。


 「う、うっうわあああぁぁあああぁっぁあああああああ」


 白い少年は、声を上げ、剣を振り上げ黒い集団に突っ込む。

 突っ込んでくる白い少年にも、いきなり無くなった溝にも、驚き動けない黒のも多く、逃げようとするも密集している為その場から離れることはできない。


 「ひった、助け………」

 「うわああぁぁあああ」

 「退けよ! うわっ」

 「いたいよぉー! パパーママー!!」


 私はただ呆然とそれを見ていた。

 少年が飛び込んできたところは真ん中あたりで、端にいる私は特に行動しなかったのだ。

 しかし、少年と剣が輝くせいで、その場で起きたことが鮮明に目に入る。

 一振りで切られた三つの黒い人型。二つは胴体が真っ二つになってしまっている。

 黒い人型。それは切られて動かなくなる。そしてその人型は、黒から灰色へと色が変化し、色を取り戻し、普通の人間の姿になった。


 「えっ………?」


 そこで倒れているのは、至ってどこにでも居そうな少年二人に少女が一人。

 二人の少年は胴体が真っ二つになっており、その断面からは中身がこぼれだし、口からは赤黒い泡が出ている。目は見開かれ、その瞳には恐怖が色濃く残っているが光は感じられない。

 少女は肩からへそのあたりまで切断され、上半身と下半身で見事に捻じれ、光のない瞳はただ虚空を見つめている。


 「うぇ………」


 人の死体など見るような年齢ではない。

 親族が死んだとしても、その死にざまを直視して耐えられるような精神を子供は持っていないのだから大人が見せるわけもない。

 白の少年に飛び散った黒い斑点は赤の斑点へと変わる。その手に持つ、鈍く光る剣にもべっとりと付いた粘性のある赤い液体は、恍惚と周囲を照らす。

 じわじわと足元に広がる赤い液体。呆然とする白い少年と死体となった少年少女を囲むようにいつの間にか白も黒も入り混じって立っていた。


 「ひ、ひとごろし………」


 誰が言ったのか。

 その声は誰の耳にも届き、誰もが息をのんだ。


 「ち、ちがう! こいつらはわるもののだ!! 」


 白い少年の声は震え、その手から剣が零れ落ち、カランと鈍い音を立てると端から光の粉へと変わり剣は消えてしまった。

 その場に残ったのは、白の少年と、白と黒の群集と、もう動かない死体。それにどんどん広がる赤い液体。


 「………でも、わるいこと、してないよ? 」


 声を発した人型は灰色になっていた。

 頭によぎったのは、灰色になって死んでいった三人の姿。しかし発言した灰色の少女は倒れもせず、二本の足で立っている。

 そして何人も感染するように白も黒も灰色へと変化していく。私のように、白い少年のように変化しないものもいるけれど、半数は灰色へと変化した。誰もが死ぬ瞬間を思い出したのか、体を震わせ何もないことに安心し、ため息をつく。

 そして色が安定したとき、泡からの声が聞こえてきた。


 ―――『脱落者』が出るのが早いな。それもまた一興


 『脱落者』

 その声から考えるに、灰色がその『脱落者』なのだろう。


 「『脱落者』ってどういうことだよ」


 灰色の少年が声を上げる。

 白い少年と死体を囲むように白と黒が入り混じって立っていたせいで、その少年がもともとどっちの色だったかは分からない。

 灰色の少年は上を見上げて泡の答えを待つ。


 ―――そのままの意味だ。『勇者』や『魔王』になれる権利を放棄した者、とでも言えばいいかな?


 灰色の少年は、泡から発せられた言葉を噛み砕く。

 泡の言葉を理解できた人型は少ないようで、灰色となって喜んでいるのや、白のままで誇らしげに胸を張るのや、黒のままで肩を落すのなど。総じて背が高いという共通点があるが、集団の中では少数派であった。

 灰色の少年は周りの反応を眺め、泡の答えを全員の共通認識に変える為に言葉を選び発言する。


 「………灰色になったヤツは、『勇者』や『魔王』になることはないってことか? 」


 やっと理解した人型達は、それぞれの反応を示し、泡の答えを待つ。


 ―――その通り。なりたいと思っても、なることは絶対にないだろう


 泡の声に喜色が混じる。

 灰色たちは、喜び、悲しみ、そして周りに同情した。

 白いものは『勇者』になれると心を躍らせ、黒いものは『魔王』になるかもしれないと恐怖で体を震わせた。

 灰色の少年は、ほぼ全員が反応を示したことで、次の質問をする。


 「………もう一つ。こいつらは、死んだのか? 」


 その質問に、周囲の人型は押し黙った。

 懸命に見ないようにしていた赤がよみがえり、すっぱいものがこみ上げていく。

 誰も下を見ないが、下には未だ虚空を見つめる双眸が彼らを見つめているのだ。


 ―――ああ。ここで起きたことは現実に反映される。もう二度とその魂が現世に現れることはない


 言われた言葉が難しかろうが、肯定の言葉が最初に泡から発せられたことで、人型たちは理解してしまった。

 この三人の少年少女には二度と会うことはできないのだと。


 ―――さて、話をもどそう。無駄な時間をくってしまった


 泡はそう切り出す。

 灰色が伝染した今、黒と白は圧倒的に少ない。

 一番少ない黒は、殺そうと向かってきた白の少年から一番離れた集団の外側に立ち、上を見上げる。


 ―――お前達には三つの道がある。卵を孵化させ本物になる事、卵を放棄し本物になることをあきらめる事、最後に


 白が『勇者』になるように。

 黒が『魔王』になるように。

 灰色が『勇者』や『魔王』になることがないように。

 意味が分からなくても、言葉はすんなりと頭に刻まれていく。


 ―――『傍観者』になる事


 白でも黒でも、色そのままに一切出来事にかかわらず生きていく事。

 そしてまた灰色が増える。

 

 ―――何を選ぶかはお前達次第だ。楽しい物語を魅せてくれることを期待しているよ?


 泡は至極楽しそうにそう告げ、一つ一つ弾け、空間から消滅していく。

 それはとても幻想的な様子だった。

 プチプチと泡が弾ける音を聞きながら、人型たちは呆然と上を見上げることしかできない。


 「っ! お前の名前はなんだ!!」


 最後。消えていく泡が残り少なくなったころ、灰色の少年がめいいっぱい叫ぶ。

 このままじゃ、何が起きたのかさえ分からない。

 せめてものあがきだったのだろう。

 打てば響いた泡の声。ならこの質問にも応えるはずだと、灰色の少年は声を響かせた。

 泡は最後の一つとなったとき、言葉を発した。


 ―――我は『調停者』、始まりの賢者にして世界を傍観せし者なり。人は我を大賢者ガルドと呼ぶ


 泡が弾け、人型たちの意識は反転する。

 最後に聞いたその声は、確かに人型に刻まれた。

 そして夢から弾き出された人型たちは現実に戻るのだ。




 子供たちは言われたこと、起きたこと、訳の分からない夢の全てを、親へと吐き出した。嗚咽や涙が混じり、親が居る者は、その夜親と共に眠っただろう。

 夢の内容はとてもじゃないが親は口にできなかった。しかし、どういう夢を見たか、という事は子供を持つ親に瞬く間に広がった。




 世界中で『悪夢』に見舞われた子供がいる。

 後世で、『白と黒の悪夢』と呼ばれるその空間に子供たちが再び訪れることは無かった。

 さて、次の更新はいつになるやら………

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