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Excited Crowd  作者: 頭 垂
第一章:眼前に広がる未知
8/46

8!

部屋を出る直前まで喧嘩を続けていたというのに、部屋の外に出て扉を閉めたら中の音は全くと言っていいほど外に漏れてこない。驚くほどの防音性能だ。

小鳥は部屋を出るとリュウのほうを向き、リュウの顔色を窺うような表情になった。

「今からあなたの部屋に行こうと思うんだけど、他の施設とかも説明しておいたほうがい?」

「うん。そっちのほうがありがたいかな」

「ホント? なら案内してあげるね」

そう言った小鳥の表情は妙に明るかった。

今の話のどこに喜ぶようなところがあったのだろうか? リュウは内心疑問に思ったが何も口には出さない。ここで不用意な発言をして小鳥の機嫌を損ねてもいいことはないからだ。それこそ百害あって一利なしである。

部屋の中にいた時とは打って変わって上機嫌になった小鳥に連れられて、リュウはホテルの中のいろんな場所に連れて行かれる。

このホテルの中は最初に入った時も思ったが、廊下から見た扉の感覚と部屋の大きさが一致しない。要するに部屋の床面積が外から見た時よりも大きいのである。

そのことに最初こそ多少違和感を覚えたのだが、すぐに慣れてしまった。リュウは無駄に適応力が高い。その才能がいま発揮されたというわけである。

前方をルンルン気分で進む小鳥の背中を見ながら、このホテルのような場所の施設の配置を覚える。だが、共有のスペースには入口の扉にその施設名が書いてある。なので、必要最低限、大体の方向を把握しておけば大丈夫ということに気付いた。

なぜか説明のときに一か所、共有スペースではないところを教えられた。その部屋を教えるとき、妙に小鳥が赤くなっていた気もするが気のせいだろう。ちなみにその部屋は小鳥の個人部屋だった。

小鳥は熱心にリュウに話しかけているが、リュウは気のない相づちしか打たない。

そうこうしているうちに施設の説明は終わっていたらしく、ある扉の前で小鳥は止まる。考え事をしていたリュウは小鳥の背中にぶつかりそうになったが、なんとか踏みとどまることができた。

「ここは?」

部屋の入り口には何も書かれていないのでここが共有スペースではなく個人のための部屋だということはわかる。だが、だれの部屋なのかは皆目見当がつかない。

「ここはリュウの部屋よ。ここで私の案内は終わり。何かあったら私の部屋に来てね」

そう言い残すと小鳥は足早に立ち去って行った。

「……何であんなにボクに説明している間、機嫌がよかったんだ? 訳が分からない」

この発言を本気でしているあたりがリュウのリュウたる所以なのかもしれない。

リュウが部屋の扉を開けて、一歩部屋の中に足を踏み込んでみる。部屋の中には机と机に備え付けの椅子、あとはベッドぐらいしか物がなかった。その部屋には生活臭というものが希薄だった。その部屋に物があまりないのを見て、少し安心した自分がいたことにリュウ自身が驚いていた。

部屋の窓から見る外の風景も太陽の位置すらも全く変わっている感じがしない。そのことに少しだけ違和感を覚えた。

リュウは窓についていたカーテンを閉めると、ベッドに横になる。横になるとすぐに大きく息を吐いた。周囲に誰もいないという状況になってやっと一息つくことができた。別に周囲に人がいたとしても思考する分には何の支障もないのだが、一人のほうが気が楽なのも確かだ。

今日は一日いろいろと思考していたせいか体が疲れたと言いながら休息を要求してきていた。

リュウはもうその思考に逆らう気もないので瞼が落ちるのに任せて思考を手放した。


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