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Excited Crowd  作者: 頭 垂
第四章:強がりと意地と
42/46

42!

しかも、今の一瞬の防御に使ったせいで大分スタミナが削られている。必要だったとはいえ、根本的にもっと考えていれば防げていたことだ。そう思うと無駄に思えてならない。リュウは無様に膝をついてしまっている。

しかも、

『旦那様、大丈夫ですか?』

「問題ねぇよ」

ハチの巣にはならなかったと言っても完全に回避できたわけではない。左足に掠ってしまっていた。

その傷からジクジクと痛みが伝わってくるが、別段戦えないと言うほどではない。ならば引く理由にはならない。

それにイリスを取り戻すまで、リュウに引くと言う選択肢はない。

「千鳥、咲夜。このままで行ったら勝率は何%ぐらいだ?」

『よく見積もっても二割ってとこだろうな』

『希望的観測を完全に廃すると一割にいくかいかないかと言うところでしょうか?』

「せちがれぇな」

リュウはそういって軽く笑いを漏らす。

「見苦しく逃げてもいいのよぉ? あなただけは逃がしてあげるからぁ」

「ふざけてんじゃねぇぞブスが」

マダム・スカーレットが笑いながら言ってくるが、リュウは考えるに値しないと切り捨てる。

よく見積もって二割。現実的に言って一割前後。普段のリュウならしっぽを巻いて逃げだしているだろう。その程度には低い確率。

それでも逃げるわけにはいかなかった。

さっきも思ったことだが、イリスの屍の上で生きるぐらいだったら華々しく散ってやるのもいいと思っている。

『旦那、どうするんだ? 旦那ももう限界近いだろ』

「うっせぇ。限界だからって帰れるんならもうとっくに帰ってるんだよ」

『それはそれとしましても。旦那様、一度引くのが賢明かと存じます』

「黙れ」

咲夜の退けと言う提案にリュウは底冷えのする声で返答する。

「さっきも言ったがな。イリスを殺してまで生きていたいと思えるほど俺は生に執着なんてねぇんだよ!」

そう言って声を張ると体の奥から力があふれてくるような感覚があった。

それが錯覚であると言うこともリュウは感づいている。その空元気に頼らなければいけないほどにはリュウは満身創痍だった。

リュウは千鳥を杖のようにすることでかろうじて立ち上がる。

「あー、くっそ。勝ち目とかねぇじゃねぇか」

『それでもあきらめないんだろ?』

『聞くまでもありませんでしたね』

千鳥と咲夜の苦笑する気配が伝わってくる。

『ま、しょうがねぇから力貸してやるよ』

そう千鳥の声が聞こえたかと思うと千鳥から力が流れ込んできた。さっきリュウが感じた錯覚ではなく、実感として体中に力が満たされていく感覚がある。

その力は心を震わせるほど活力にあふれるものだった。その力が体に流れ込んできたおかげで俄かに紫電が増大する。

『わたくしも微量ではありますが、力をお貸しいたします』

今度は咲夜から力が流れ込んでくる。

咲夜から流れ込んできた力はとても静謐な雰囲気を持った力だった。その力が流れ込んでくると思考が澄み渡り、視界が開けたような感覚が襲ってくる。

「これは?」

『俺たちの本当の奥の手だ』

『わたくしたちは普段から旦那様の力を身の中に溜めています。それを旦那様にお返ししただけのことです』

二人が与えてくれた力の総量はこの戦いが始まる前の力の量を圧倒的に超過していた。

「何でこんなに……?」

『驚いてんな』

『これは旦那様が記憶を失う前から溜め続けていたものでございます。旦那様が記憶を失う前はわたくしたちがお手伝いするまでもありませんでしたので』

昔の自分が異常に強かったと言う事実を知り、思わず苦笑が漏れる。その二つの力と共に昔のリュウの思考が戻ってきた。

そして、表情を引き締める。感触としては戦闘前の実に五倍。それだけの力があって負けるのならマダム・スカーレットとの間には越えられないほどの高い壁があるのだろう。

だが、もう負ける気など欠片もしなかった。

「三散雷」

リュウが千鳥を振りぬくと千鳥から三筋の紫電がマダム・スカーレットに殺到する。

「馬鹿の一つ覚えぇ?」

マダム・スカーレットが甲殻を展開し、それで受けようとする。甲殻に当たったら何の意味もなく消えることだろう。

だが、そうはならなかった。紫電はすべて甲殻にあたる直前に無数の小さなものに分裂した。

それは一つ一つが必殺の威力を持った紫電の槍。紫電の槍が被弾したところから甲殻が抉られていく。

リュウは紫電を放った時には駆け出していた。マダム・スカーレットの甲殻があるのは前面だけ背後に回ってしまえば問題なく攻撃できる。

「なめないでぇ!」

背後に回って切りつけようとしたらさっきと同じように棘がリュウに向かって飛んできた。

だが、もうリュウは慌てない。千鳥にまとわせている紫電の量を瞬間的に増やし、ただ横に薙ぐ。それだけで棘はすべて消え去る。

リュウはすかさず千鳥をマダム・スカーレットに向けて振りぬく。が、それはマダム・スカーレットが展開した甲殻によって阻まれてしまった。

リュウはバックステップをし、距離を取る。

甲殻は前面にあるものもとっさに展開したものも崩れ落ちる。

「あなたどうなってるのぉ? あなた、昔に戻ったみたいぃ」

「おしゃべりしてる余裕があるのか?」

リュウはマダム・スカーレットの言葉など意に反さない。

「そうねぇ。私も余裕はないわねぇ。だから……全力で行かせてもらうわぁ!」


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