33!
そんなこんなで九が威力偵察に来ている雑魚どもを銃弾で的確に殺しながら進んでいると少し開けた場所に来た。
その場所は、木々が成長を続けて言った結果にできた空白地帯ではなさそうだ。かと言って機械などの人の手で丁寧に剪定されたようにも見えない。
その周辺にある木々は何かの動物にでも根こそぎ食われたとでもいうように荒れていた。
そこで休憩がてら腰を下ろす。
「この階層にはこんな食い意地の張った生物がいるのかねぇ」
「私の記憶ではいなかったと思いますが……九は知ってます?」
「あぁ、一体だけ知ってるよ。そんじょそこらの猛獣なんて膝が笑って逃げ出しちまうようなやつをな」
「……あぁ」
九の説明は明らかに情報が削られている。
宰は理解できたようだがリュウにはさっぱりだった。リュウはわからないと言うことを体で表すように首をひねっている。
それを見て適度に肩の力が抜けた九が苦笑を向けてくる。
「わからんか?」
「皆目見当がつかないね。一体全体何のこと?」
「マダム・スカーレットだよ」
「? あれそこまでの化け物だったの?」
たぶんこの現状はマダム・スカーレット、もしくはマダム・スカーレットのソロによって作り上げられるものなのだろう。
だとしたらマダム・スカーレットはどれほどの化け物なのだろうか。
単体で森を削り取ることのできるソロ。イリスのソロの詳細を聞いたときにも思ったことだがソロってのは相当にぶっ飛んだ性能を持つものがあるらしい。
思案顔のリュウに宰が言葉を付け足す。
「ソロがすべて常識の埒外と言うのは事実ですが、その中でもマダム・スカーレットは別格ですよ。なんせ『四大孤高』ですからね」
「『四大孤高』? なんだい、それは」
聞いたことのない単語が宰の口から飛び出した。
『四大孤高』。その単語は聞いたことのない単語のはずだ。少なくとも今のリュウには聞き馴染みがない。
だが、その単語を聞いたとき不思議と心がざわついた。
なんというか……昔、何度もその名で呼ばれていたような不思議な感覚だった。
「『四大孤高』と言うのはこの世界において他の追随を許さないほどの圧倒的な力を持つ個人に付けられる称号のようなものです」
「ふぅん。それは良いんだけど何で孤高なの? もっとかっこいいと言うか、恐怖心を煽るような言葉はなかったの?」
「言葉と言うものには等しく意味があるんだぜ? 『四大孤高』がなぜ『四大孤高』と呼ばれるかと言うと理由は二つ。一つ目は『四大孤高』はその力が強すぎるせいで誰も共に歩く者がいない。ただの一人ぼっち。だから孤高なんだ」
要するにチート乙、と。
そんな奴と今から戦うのかと思うとほんの少しではあるがリュウの気持ちが沈む。
だが、九も宰もそんなことは気にしていないようだ。
「怖くないの?」
「あ? 怖くないって言えば嘘になるな」
「そうですね」
「だが、こっちにもその化け物と同格の化け物がいるんだ。ビビッてたらそいつに失礼だろ?」
「誰のこと? 宰?」
九の口ぶりからすると九ではないのだろう。そして、イリスはゲームマスターだからそんなのに選ばれるはずもない。
ということは消去法で宰だろう。こういう時に消去法と言うのは偉大だと思う。消去法を人類最大の英知と言っても過言ではないと思うぐらいには。
だが、人類最大の英知の力を借りたリュウの考えは間違っていた。
「私が『四大孤高』? そんな、おこがましいですよ」
「でも宰がこの中じゃ最強でしょ?」
「それはわかりませんが、『四大孤高』にはもう一つ必要条件があるのです」
「なにそれ?」
「それはソロを持っていることだ。まずソロって単語も『四大孤高』ありきのものだからな。圧倒的力のせいで誰も隣を歩けない孤高の者が持つ力。故にソロなんだ」
あぁ、謎が解けた。
なんでソロなんて呼ばれてるのかとか思ったけどそういう裏話があったのか。
ん? と言うことは誰だ。ここにいるソロ持ちはイリスだけだったと思うんだが……。
「お前何素っ頓狂なこと考えてるんだ? ここにいる『四大孤高』ってのはお前のことだぞ?」
「『逆賊』フィヨードル。『瞬間』モーメント。『悪食』マダム・スカーレット。そして、『雷神』五彩 柳。これが『四大孤高』って呼ばれてますね」
マダム・スカーレット以外の名前には少しの聞き覚えもない。かと思いきや最後の人間の名前には聞き覚えがあった。
柳。リュウと同じ名前だ。
と言うことはそういうことなのだろう。
話の流れ的に雷神と呼ばれた五彩 柳がリュウのことなのだろう。だが、一つ疑問が表出してくる。
リュウにはソロなんてものは使えない。そこが最大の疑問点だ。
「今のお前は使えないかもしれんが、昔のお前は使えたんだよ。俺も一回だけ生でお前のソロ見たけどあれはすさまじかったぞ」
「えぇ、そうですね。さすがと言った性能でした」
リュウは知らないが九と宰は知っているようだ。
なぜかもぞもぞする。自分の知らない自分を他人が知っていると言う感覚はなれようと思ってなれられるものじゃない。




