28!
ところ変わって《ナインヘッド》ホーム。
蟒蛇は医務室のベッドの上で寝かされていた。
蟒蛇を処置したのは医務室にいた四谷だった。と言うのも四谷のテリトリーがこの医務室だからだ。
四谷は諜報班。だが、四谷自身がホームから出ることはめったにない。四谷はこの医務室で病人や死人が運ばれてくるのを待って、その傷口から敵の情報を読み取るのを得意としているからだ。
治療をした四谷によると、蟒蛇の傷はそれほどやばい物ではなかったが、血を失いすぎていたのでそちらのほうがまずかったようだ。
それでも今はベッドの上で安らかな寝息を立てている。時折辛そうな表情をすることを除けば普段の蟒蛇と同じだった。
リュウが蟒蛇の髪をやさしい手つきで梳いている。自覚こそなかったがリュウは寝ている人間の髪を梳くのが好きらしい。
そうやって髪を梳いていると蟒蛇の瞼が開いた。
最初こそ目の焦点が合っていなくて、空ろに宙を眺めていたが、すぐにリュウの顔に焦点を合わせた。
「……リュウ?」
「おはよ。気分はどう? 何か違和感とかは?」
「……違和感?」
蟒蛇は寝ぼけているのか少し記憶が飛んでいるようだ。
が、すぐに思い出したようで左腕を右腕で探すような手つきになる。自分で左腕を動かそうともしているようだが、生憎その意思に応えてくれる腕はもう存在しない。
蟒蛇の左腕は今マダム・スカーレットの胃袋の中にある。
四谷の話では腕を回収してくることができれば繋げることは可能と言われたが、それはきっと無理だろう。
「……腕は」
「すまん、俺が助けるのが遅れたばっかりに。もうちょっと早く入ってれば左腕も落とされることはなかっただろうが……」
リュウは悔やむように唇をかむ。
足は何とか切り落とさせなかったが、左腕は守ってやることができなかった。
「……大丈夫」
そんなリュウに蟒蛇は薄く笑みを浮かべた。
「……右腕が……あるから」
大丈夫なわけがなかった。
片腕がないと言うことはそれだけでバランスがとるのが難しくなる。体の右と左で重さが違うのだ。バランスがとりづらくて当然と言えば当然だった。
それに片手がなければ万が一の時に対応できなくなる恐れがある。そして、蟒蛇は《ナインヘッド》の重要情報を大量に持っている。
そんな人間はもう一人でホームから出ることもかなわない。
頭のいい蟒蛇のことだそれにはもう気づいていることだろう。それでもリュウの肩の重みを少しでもなくすために微笑んでみせるのだ。
リュウの中で一つの決心がついた。
蟒蛇をこんな風にしたマダム・スカーレットを、ひいては《鮮血の夜》のメンバーを根絶やしにする。
そのためには自分の命などいくらあっても足りないだろう。
だが、そんなことは些末事だ。命など投げ捨てろ。仲間のためなら自分の命の一つや二つ安い。
仲間の腕を切り落とした《鮮血の夜》に蟒蛇以上の苦しみを与えてやる。そう蟒蛇の前で決めた。
さぁ、報復だ。




