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Excited Crowd  作者: 頭 垂
第三章:開戦の号砲
27/46

27!

リュウは意識を失っている蟒蛇を脇に抱える。蟒蛇は意識を失っていても驚くほどに軽かった。

「ボクはこれで失礼してもいいかな?」

「いいわけないでしょぉ? 私はその子のせいでおなかが減ってるのぉ。その子を逃がすんだとしたらあなたがここに残りなさぃ」

「それは嫌かなぁ。それにね……ボクだいぶ怒っているからね?」

リュウは微笑んだ。相手に敵意を向けるときリュウは笑みを浮かべる。その笑みと敵意のギャップが恐怖心を煽るのだ。

「逃げられると思ってるのぉ?」

「逃げられるよ、宰」

「私の仕事が多いですねぇ」

唐突に包囲網の一角が崩れる。

そちらに視線を向けてみると、そちらを守っていた《鮮血の夜》のメンバーの体が斜めにずれる。そこに新しい人影が立っている。

そこには宰が柔らかな笑みを浮かべて立っている。手に持っている十文字槍の刀身は元から紅いのが、血で湿って鈍く光っている。

宰の姿を見てマダム・スカーレットは驚いたような声を出す。

「懐かしい顔ねぇ。《ナインヘッド》所属の化け物の大盤振る舞いみたぃ」

包囲網は宰の出現によってすぐに崩れた。

宰の周りにいた人間の行動は二パターンに分かれた。

無様に逃げ出すものと勇敢に宰に武器を向けるもの。まぁ、どちらも結果は同じだったが。

どちらも行動を起こした一瞬後には上半身と下半身が分離していた。

リュウは脇に抱えていた蟒蛇を宰に放り投げる。宰はそれを危なげなくキャッチする。

「蟒蛇を連れて最速で逃げて。ボクは殿を務めるから」

「六野の二の舞にはならないでくださいね」

「そんなへましないよ」

宰は余裕のある声で軽口をたたくと、駆け出して行った。

その後を追うようにしてリュウも駆け出す。が、少し行ったところで立ち止まると残っている《鮮血の夜》に目を向ける。

その目には鋭く、暗い殺気だけが宿っている。

「この報復はいずれする。楽しみに待っていてね?」

それだけ言い残すと、リュウは背後を警戒しながら駆け出して行った。

それを見た《鮮血の夜》のメンバーは追いかけようとしたが、それはマダム・スカーレットが止めた。

「追っちゃ駄目よぉ」

「なぜですか?」

「追っても死ぬだけだからぁ。あなたたちも名前ぐらいは知ってるでしょぉ? 《ナインヘッド》の柳と宰ぁ」

名前だけ聞いてもピンとは来ないようだ。

その自分の子供の不勉強を嘆きながらマダム・スカーレットは頭を振った。

「それじゃ、これならわかるかしらぁ? 雷神と血狂ぃ」

「……それは本当ですか?」

子供たちの動揺が伝わってくる。

さっきの実力から只者ではないことぐらいはわかっていたのだろうが、想像以上のビッグネームで驚いたと言ったところだろう。

雷神と血狂い。それはそれぞれリュウと宰が対外的に呼ばれている名前だった。どちらも《ナインヘッド》を代表する実力者だ。

雷神はたった一人で第二階層を攻略したことで一躍その名が知られるようになった。その異名はリュウの持つソロによるものだった。

血狂いは、まだ《ナインヘッド》に所属していなかったころから有名で、気に入らなかったから、目障りだったから。たったそれだけの理由で三つものチームを単独で壊滅させた男だ。殺した相手の血だまりの中で凄惨に笑っていたことから血狂いと呼ばれるようになった。

あの二人の実力は相当の物だ。二人を相手にするならソロをフルに活用したマダム・スカーレットでも引き分けるのがやっとだろう。

実際に、昔リュウとマダム・スカーレットが遣り合った時にはマダム・スカーレットが瀕死になるまで蹂躙された。今のマダム・スカーレットは昔とは段違いに強くなっているので以前のように負けはしない。

だが、今日のリュウは以前マダム・スカーレットに瀕死の重傷を負わせた時と少し違っていた。

具体的には優しい、昔のリュウからは考えられないほど甘ったるい口調でしゃべっていた。昔のリュウは誰に対しても荒々しい言葉遣いを徹底していた。

今のリュウなら以前とは違って楽に食べれそうだ。そう思うと溢れ出る唾液を抑えることができなかった。


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