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Excited Crowd  作者: 頭 垂
第二章:実力の証明
18/46

18!

「「……は?」」

九とイリスは少し時間を置いた後、二人そろって間の抜けた声を出した。二人はリュウの言ったことが理解できていないようで、放心状態のようだ。

そんなに変なこと言っただろうか? ただ、求婚しただけなのに。年齢以外に大した問題があるようには思えないのだが。

リュウは気づいていないらしい。年齢の問題がある時点で大分問題だ。

二人のうち、先に復活したのは九だった。イリスは当事者だからか、まだ復活していない。

「おい、今なんて言った?」

「え? 『結婚しよ?』って言ったけど?」

「空耳を期待した俺の期待を返してくれ」

「そう言われてもね」

九はリュウの発言のせいで毒気を抜かれたようだ。九の表情からは狂気の色が抜け、いつものような凛々しいがちょっと気の抜けた顔に戻っていた。

「はっ! お、お兄さん。何で結婚なんて話になるんですか!?」

九に遅れること数秒。

イリスもやっと正気を取り戻したようで、現実に戻ってきた。その声は上ずっていて、リュウの発言を意識していることが丸わかりだった。

「いやね? イリスを殺したくないなーとか、どうせイリスの行く場所ないんだろうなーとか。いろいろと理由がないこともないんだけど。端的に言ってしまうとボクはイリスのことが好きみたいだ。これじゃダメかな?」

イリスは第六階層のリーダーをやっていたこともあってか、ソロを使わなくても相手も今どんな感情を抱いているかぐらいはわかるようになった。

その勘によると、リュウがイリスに感じている感情は好感。イリスがこの世界に来て、ゲームマスターを始めてから、……いや、この世に生を受けてから初めて向けられた感情だった。

好感など向けられたことのないイリスは、それはもう面白いぐらいに挙動不審になる。

九はそれを見て、さっきまで本気で殺そうと思っていたことも忘れて笑い出す。

「な、何で笑うんですか!?」

「いや、お前が可愛らしくてな。そんなことよりリュウの申し出、受けたらどうだ? 少なくともお前にデメリットはないと思うが?」

「でも……」

イリスは未だに決めかねている。

その後もうんうんと数分の間悩んでいたが、最後にはイリスはうなずいた。

「わかりました。不束者ですがよろしくお願いします」

「うん。こちらこそね」

開けた草原の中、九の立会いの下、一つの番が生まれた。

九は二人を見て、また笑い出した。今度はさっきのように押し殺した感じではなく、腹を抱えてゲラゲラと。

「何でそんなに笑うんだい?」

「いやー、お前のことは大体理解していると思っていたんだがな。お前がロリコンだったとは知らなんだ」

「……その言いぐさは酷くない?」

「ろりこん?」

リュウはげんなりとした表情を浮かべ、イリスはロリコンの意味を知らなかったのか首をかしげる。

「お兄さん。ろりこん、ってなんですか」

「イリスは知らなくていいんだよ」

イリスが変な言葉を覚えないようにリュウはその言葉の意味を教えようとしない。

自分に知らないことが耐えられない性格なのか、イリスは頬をリスのようにふくらませる。

「お兄さんが教えてくれないなら、他の人に聞くからいいです。……そう言えば、そっちのお兄さんの名前は聞いていませんでしたね。私はイリス。よろしくね」

「あぁ、俺は九重 九だ。よろしくな。親愛のしるしとしてロリコンの意味を教えてやるよ」

「ありがとうございます」

「止めてー! イリスに変なこと吹き込まないでぇー!」

九がイリスにロリコンの意味を教えようとしだしたので、リュウはあわててイリスを自分のところに抱き寄せるとイリスの耳をふさいでしまった。

不満げな表情をして、文句を言うイリスにリュウはしどろもどろになりながらも聞かせたくない理由を伝える。

そこでいいことを思いついたとばかりに腰に差してあった小刀を鞘ごとイリスに渡す。

「これは何ですか?」

「結婚指輪なんて殊勝なものはないからね。これが結婚指輪の代わり」

「むー。ごまかされた気がしますが、これで我慢してあげます。感謝してくださいね、お兄さん」

そのやり取りを見ていた九は笑顔だった。

仲の良さそうな二人を見ていたら、イリスが第六階層のゲームマスターだったことや、イリスが大勢の人を惨殺したことなどどうでもよくなってきた。

ただ、この二人がずっと笑顔でいられるようならそれでいいかと思った。

ちょっと悪戯心が働いた九はちょっと悪戯をしてやることにした。

「リュウ、お前小鳥はいいのか?」

「いいって……何が?」

「いや、なんでもない」

小鳥がリュウのことを好きであろうことは見ていれば一目瞭然であろうに。気づいていないとは小鳥も報われないな。

そう思っていると、リュウが驚異の発言をした。

「まぁ、ボクは十二歳以上の女性の体に興味はないしね」

何も聞こえなーい。俺は何も聞いてなーい。……なんて流せるかよ畜生! とてもじゃねぇがスルーできる発言じゃねぇぞ!?

リュウをそういう目で見てみると、リュウのイリスに接する態度は普段よりも甘い気がする。目尻も本当に若干ではあるが緩んでいる気がする。

……気のせいだと信じよう。《ナインヘッド》実質的なトップがロリコンなんて信じないし、信じたくない。これは自分の心の奥に沈めておこうと、九はイリスとイチャイチャするリュウを見ながら決意した。

ひとしきりリュウたちのイチャイチャを眺めさせられて、げんなりしながらホームの扉を開けると、そこには戦場かと見紛うほどの濃い殺気が充満していた。

「あ、お帰りなさい。元気そうで何よりですよ」

宰が振り返るとその殺気が霧散した。それと同時に入口の奥から人がバタバタと倒れる音がした。

そういえば、忘れてた。

宰の本気の殺気に晒され続けた無関係な《ナインヘッド》メンバーに黙祷をささげながらリュウたちは。ホームの扉をくぐるのだった。

リュウの隣を歩くイリスは柔らかな笑顔を見せていた。


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