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Excited Crowd  作者: 頭 垂
第二章:実力の証明
14/46

14!

リュウは自分の部屋に向かう。起きてからは二時間も経っていなかったが、これから自室で寝るつもりだ。集合を六時間後に設定したのは五時間を睡眠に充てて、残りの一時間を最後の思考の確認に使うつもりだった。

ぽてぽてと何を考えるでもなく自分の部屋に向かって歩く。さっき、司令部に向った時と同じく、ほとんど人通りはない。いたとしても忙しなく動いている。リュウの姿を見ても浅く会釈をして立ち去っていく。

最初にここに来た時のような無遠慮な視線をほとんど感じないので気が楽だった。

部屋の前につくと、そこには小鳥がいた。

「今時間ある?」

「ないと言えばないし、あると言えばあるね」

「なら、話ある」

小鳥はそれだけ言うと部屋の主であるリュウの許可も待たずに部屋に入っていったしまった。

まぁ、こうなるであろうことは司令部にいた段階で大体予想がついていた。司令部でリュウが呼び止めなかったから残りこそしなかったが、あの時小鳥は九と同じかそれ以上に心配そうな視線をリュウに向けていたからだ。

リュウは面倒くさそうに後ろ頭をかくと、小鳥に続いて自室に入った。

部屋に入ると、すでに小鳥はベッドに腰を下ろしていた。その姿はこの部屋の主のようではあった。が、繰り返すがこの部屋はリュウの私室である。リュウはその我が物顔の小鳥に苦笑すると、机に備え付けの椅子を引いて腰かけた。

「ん」

小鳥は自分の横をポンポンしている。要するにそこに座れと言うことらしい。

リュウが小鳥の横に座ると、小鳥はやっと口を開いた。

「説明して」

「何を」

「何で一人で行くのか。何で一人で危ないことしようとするの?」

「一人で行くのが一番効率がいいからだよ」

リュウからはこれ以上説明ができない。これ以上説明すると口を滑らせる可能性があるし、このことは終わるまで誰にも話さないともうリュウの中で決めたことであったから。

「私もつれてって。絶対足手まといにはならないから」

「うーん。今回のはそういう問題でもないんだよね。はっきり言って小鳥がボクより強くてもつれていくわけにはいかない」

小鳥の実力は知らないが、連れていけない。九だけでも大きすぎるぐらいの不確定要素なのに、小鳥まで連れて行ったら作戦そのものが破綻しかねない。

そうなったら、全部がご破算だ。

それに、失敗したときに死ぬのは僕だけで十分だ。九だったら最悪逃げ帰ってくれるだろう。そのぐらいの実力があることは察しが付く。出会いが出会いだったからね。戦場であれだけ自然体でいられるなら大丈夫だろう。

小鳥の実力がわからない以上、作戦に組み込むわけにはいかない。

小鳥のことを考えながら冷静に思考を展開していると、小鳥がすごく悲しい表情をしていることに気が付いた。

「……何で、リュウは昔から自分の命を切り売りするような作戦を立てるの?」

この昔と言うのは記憶を失うまでであろうことはリュウにも理解できた。

そうか、ボクは昔からこんな作戦をしていたのか。人ってのは変われないもんだね。

リュウ自身、今回の作戦の分が悪いことは理解している。そんな作戦ばかりしていたという昔の自分のことを考えると苦笑してしまう。昔から自分は相当なお人好しだったみたいだね。

そんな自分が嫌いではない自分がいること自体がリュウ自身、不思議で仕方がなかった。

「人はそうは変われないってことだと思うよ」

そういってリュウは笑った。

その笑顔を見た小鳥は胸に痛みを覚えた。その笑みは小鳥の中にあるリュウの最後の表情に酷似していた。リュウが上層階に挑戦する前夜の顔に。

出発直前にもこの笑顔を見た。その時はこの笑顔を見るだけで安心できたのだが、今は不安しか募らない。

そこで小鳥の頭に謎の風景が浮かんだ。小鳥の記憶ではあの時上層階にはリュウ一人で向かったはずである。だというのに、今小鳥の頭に浮かんだ風景ではリュウの隣に一人、人がいた。

人がいたことまでは思い出せる。だが、その人の名前も顔も体型も、何一つとして思い出せなかった。

そのリュウの隣にいる人物のことで小鳥が思い出せることは二つだけ。その人物とリュウは楽しげに笑い合っていたこと。そして、その人物は記憶の中のリュウが持っている太刀と同じような形の小刀を持っていることだけである。

その人物のことを思い出そうとすると、脳の中に焼きごてでも入れたのかと思うほど頭が痛んだ。

「大丈夫?」

自分は相当に酷い顔色をしていたらしくリュウが心配そうな表情でこちらの顔を覗き込んでいる。

出発直前のリュウにこれ以上心配事を増やすわけにはいかない。リュウは作戦の成功率を100%と言ったが、そんなはずがない。この世界に100%確実なものなど存在しない。それに経験則からいうとリュウが100%なんていうときのリュウの中での成功率は相当に低い。

自分に言い聞かせる意味も込めて高い数字を言っているのだ。そんなリュウの心配事を増やしてしまったらさらに成功率が下がること請け合いだ。自分のせいでリュウが死ぬなど耐えられるはずがない。

小鳥は無理に笑顔を作る。

「大丈夫。いつ行くの?」

「あと六時間後ってところかな。正確な時間なんてわからないけどね」

時計どころか何もない部屋で正確な時間を計れと言うほうが無茶だろう。太陽の位置からはかる方法も陰で測ることもできるが、太陽の位置が動かないこの世界ではそれもできないだろう。

だが、リュウは記憶を失う前は感覚だけで時間を正確に把握していた。リュウは昔から謎性能が多すぎる。

「なら……」

「ん?」

小鳥はリュウの胸に額をうずめた。その勢いのせいでリュウは小鳥と一緒にベッドに倒れこんでしまう。

「時間までこのままでいさせて」

小鳥はそれだけ言うと黙ってしまった。

うーむ、困った。この状況ではさすがのボクでも眠れないなぁ。ま、いっか。この状況でも考え事ぐらいはできる。

リュウはそう思って現状を甘んじて受け入れると、これからの行動と作戦について頭の中でもう一度確認を始めたのだった。


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