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Excited Crowd  作者: 頭 垂
第二章:実力の証明
13/46

13!

部屋の中に残ったのはリュウを含めて四人。リュウと九と六野と宰だ。

「それで話と言うのは何なのですか?」

宰が単刀直入に口を開いた。宰は物腰は柔らかいのだが聞きたいことや言いたいことはズバズバと言ってくるタイプのようだ。

「いや、ボクは一人でやるって言ったわけなんだけどね。『イリス』の情報をあんまり知らないわけなんだよね。だから、もうちょっと鮮明な情報がほしいなって」

「鮮明な情報……ですか? さっき九が言った情報ですべてだと思うのですが……」

「うん。それは知ってる。それが全体で共有してる情報だってことも知ってる。ボクが聞きたいのは何を持ってそういうことを考えるに至ったのか。要するに第六階層でどういうことが起こったのか。それを聞くために残ってもらったんだ」

この人選にも理由があった。九は明日のことを話し合うためでもあったが、さっきの会議を見ている限り、九がある程度ナインヘッドをまとめているようだったから九に情報が集まっているのだろう。

宰はその情報を客観的な視点で冷静にとらえて現状を解析してくれそうだったから。

六野は……諜報部隊であればだれでもよかったのだが一番とっつきやすそうなのが六野だった。四谷はわかりやすいぐらいにリュウのことを馬鹿にしているし、八木に至ってはリュウのことを嫌悪している節がある。八木に聞いたら意図してガセを流す危険性があった。

「そうか……俺も六野から情報をもらっている立場だからな。六野に聞くのが一番いいだろう。八木は信用ならんしな。だが、六野は口下手だからなぁ……」

九はリュウの意図を理解したらしい。だが、六野の顔を見てため息をつく。

六野が口下手だということなんて百も承知だ。さっきの会議にいればわかる。六野は自発的に一言も発していないし、口を開いても一言二言しか発さない。そんな六野に詳しい説明を求めるのは酷だろう。

リュウが六野に視線を向けると、六野はなぜ自分に視線を向けるのかがわからないというように首をひねる。

今までの話聞いてなかったのかよ……。

「六野。第六階層の話聞いてもいいか?」

「……蟒蛇」

「ん?」

「……蟒蛇」

これは蟒蛇って呼べってことか? 名字が嫌いなのか名前に誇りを持っているのか。

「蟒蛇。これでいいのか?」

「……うん」

「なら、蟒蛇。第六階層のことを聞いてもいいか?」

「……いいけど」

蟒蛇はそういうと口をもごもごさせながらこちらをじっと見てくる。

口下手と言うのは本当らしい。何か伝えようとしているのはわかるのだが、口には出せないらしい。と言うよりはうまく言語化できないのかもしれない。

リュウはそんな蟒蛇に笑みを向ける。

「別に拙くても構わないよ。事実であるのならね」

「……そう」

蟒蛇は安心したように微笑んだ。蟒蛇は口下手なだけで感情はあるらしい。その笑顔は普通に可愛らしいものだった。

そこから蟒蛇は拙いながらも話をしてくれた。

イリスが無差別に人間を襲うという。イリスはあの第六階層に入った人間を誰でも襲うらしい。老若男女の区別なく。そして誰かがイリスの気を逸らして、遠くから狙撃しようとしたところスナイパーライフルの引き金に指を掛けた時に何の前触れもなくそちらを向き、その人間にその辺に転がっていた石を投げつけ、殺したらしい。

イリスの圧倒的な膂力についてはリュウ自身が実際に目で見ていたので省いた。あの膂力は実際に見ないと理解できない類の物だろう。

「……これぐらい」

蟒蛇は説明を終えると疲れたように椅子の背もたれに体を預け、大きく息を吐いた。普段からあまり会話をしないであろう蟒蛇には、だいぶ苦痛になったのであろう。

リュウは蟒蛇の頭をやさしくなでる。蟒蛇はその手を払うこともなくリュウにされるがままにしている。撫でられるのが嫌ではないのか、疲れたから抵抗する体力もないのかは判断に悩むところではある。

「今の話に何か新しい情報あったか?」

「そうですね。さっきの九の説明で事足りたかと思います」

九も宰も首をひねっている。確かに今の話を聞いただけでは、リュウの答えまでたどり着くのは不可能だろう。リュウも一つ情報を隠しているのだから。その情報がなければ絶対に答えにはたどり着けないのだから。

リュウはひとしきり蟒蛇の髪の感触を味わって満足したのか、蟒蛇の頭から手を放した。蟒蛇は一度身じろぎするが、それ以上のアクションは起こさない。

蟒蛇のおかげで確信が持てた。これならたぶん死ねことはないだろう。

「うん。九、明日キミには露払いをやってもらうことになると思う」

「元よりそのつもりだが?」

「うん、そうだろうけどね。条件が一つあるんだ。ボクとイリスがいるところに誰も近づかせないで。もちろんキミも含めてね」

「辛いが……何とかしよう」

「それと、宰にも頼みたいことがあるんだ」

「私もですか?」

リュウは次に宰に視線を向けた。宰はまさか自分に言うことがあると思ってなかったのか驚いたような声を上げた。その声はわざとらしく場の空気を和ませるためにしたのであろうことが安易に分かった。

「うん。ボクたちが『イリス』の攻略に行っている間、だれもこのホームから出さないで」

宰はもうリュウの言いたいことも、なぜそうする理由があるのかも全部把握しているらしく、何も聞き返しては来ずにただうなずいた。

これで作戦の前にできることは全部すんだ。あとできることは……ないかな? 強いて言うなら体調を万全にするぐらいかな?

「出発は、六時間後、入口に集合で。それでは」

リュウはそれだけ言うと後ろを振り向きもせずに退室した。

これ以上、話すことはないしこれ以上言えることもない。ならば、これ以上同じ部屋にいても建設的なことは何もないだろう。


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