段ボールハウスに住む男
始めましてワヒトと申します。
今回は数ある作品からこの作品を選んでくださり誠にありがとうございます。
よろしければ誤字脱字がありましたらお教え頂けると助かります。
それでは、作品をお楽しみ下さい。
神楽町、その一角にひっそりと立っている段ボールハウス。
その前にはガスコンロを使いお湯を沸かしている一人の男。
「こんな寒いとか俺を殺す気か!!ガスボンベも残り少ないってのに…」
ボロボロな服にボサボサの髪の毛、いわゆるホームレスと呼ばれる者だ。
「今日は行きつけのコンビニの廃棄も出てなかったし…あぁ腹減った!!」
男は震えながら叫ぶと地面を見渡し手を伸ばす。
「俺の経験ではこれを食うと確実に腹を下す…しかし…」
男の手には地面からむしり取られた雑草。
「…腹を下してでも空腹よりはマシだ!!」
そう言い手に持っている雑草を口に放り込む。口に放り込むとすぐ顔を真っ青にしながら口に入った雑草を飲み込みやすいように噛み砕いていく。
「グッ…ゴクン…。はぁはぁ…クソまじぃ…」
そういいながらも地面に生えている雑草をむしり取り次々と口の中に放り込んでいく。
「おい、ナナシお前なにしてんだ…」
「ん?」
雑草を食べるのをやめ声のした方に振り向くと高そうなスーツを着こなし、高そうな腕時計をつけた渋い中年の男が呆れた顔をして立っていた。
「三枝のおっちゃんか、なにか用か?」
「なにか用かってお前なぁ…」
三枝は持っていたカバンからファイルを取り出し一枚の紙を取り出す。
「また事件だよ。今回は連続放火魔、それもお前の得意としているやつ関連だ」
「へぇ〜、俺の専門分野って事だ」
ニヤリとして立ち上がると三枝から紙を取り目を通す。
「連続放火魔ね…。普通に考えれば愉快犯か頭のおかしい奴の仕業、それを何で俺の専門分野だと思ったんだ?」
「そいつ自身が言ってるんだとよ、俺は炎に愛された怪だとな」
「だからってそれが本当とは限らないだろ〜、前にも似たようなことあったじゃん」
「今回は大丈夫だ、目撃者からの情報で犯人は手から炎の塊を出し火をつけているらしい」
ナナシは目を瞑り頭を左右に動かし歩き回る。
「連続放火魔…手から炎…自身が炎に愛された怪と言っている…」
「どうだ?お前の専門分野だろ?」
「うぅん…まぁ受けてもいいぞ。けどこれはいかほど?」
手で輪っかを作りニヤリと笑うナナシ。
「今回は俺らも困ってる案件でな。今回の報酬はこの位でどうだ?」
三枝は三本指を立てナナシの反応を窺う。ナナシは少し考えニヤリと笑うとポケットから何かの機械を取り出す。
「まいどあり。怪に関する物は俺の専門分野だ」
「受けてくれて助かるよ。ならよろしく頼む」
三枝はカバンからナナシがもつ機械と同じ物を取り出しボタンを押すとナナシの機械が光る。
「さて…報酬も前払いしてもらった事だし…。怪をぶっ倒しに行きますか!!」
そう言いナナシはニヤリと笑い夜の神楽町に繰り出す。
「待ってろよ怪。お前倒さねぇと報酬返すハメになんだからよ」
小さな声で呟くとナナシは人混みに紛れ消えて行く。
「怪専門退治屋、名前がない事からつけられた名前がナナシ。まっナナシが動いたからには大丈夫だな」
そう言い三枝も歩き出す。残ったのは段ボールハウスに湯気を出す鍋だけだ。