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魔法学院物語シリーズ

リアル格ゲーキャラが悪役に成り代わったら

作者: 彪紗

突発的に思いついたので矛盾があるやもしれませんが、一応魔法学院物語シリーズです。



長い長い病床でついに天に召された後、私はよくある少女漫画の悪役少女、リリオ・アイズラントに成り代わっておりました。



なるほど分からん?



それはそうでしょう。


私もそれが分かった当初はワケが分かりませんでした。



…気づいたの、これから通う魔法学院の制服が届いたその日でしたし。



まぁ、悪役と言ってもヒロイン視点での悪役なので、実際の彼女の行動には筋が通っているのです。



一応この世界には身分制度というものがあります。


けど、職業に就いて身を立てるのは自由だから身分なんてあってないようなもの。



…ヒーローの家庭は責任の伴う家庭なので、それに見合った人が嫁がないといけないんですけどね。



さて。本当のリリオさんですが、彼女にはヒーローに対する恋愛感情があるものの、ヒロイン他、ヒーローに近づく女性たちには何もしないのです。



本当に、なにも。


彼が望むのならばその心のままに、という性格。



男女問わずにカリスマ性のある彼女を慕う取り巻きがヒロインに嫌がらせをして、その全責任をヒロインたちによって負わされるという哀れな少女なんです。



ヒーローは成り代わった私にとっての婚約者。


とはいえ仲のいい親同士が口約束で決めた程度ですから、結婚前にどちらかが本当に愛する相手が出来れば解消出来るよう、幼少の砌に私が父を説得してあります。



幸いヒロインの名前と容姿を覚えていたので、徹底的に無関係にできましたし。


前の人生で、いろいろ立ち回るのには上手くなりましたので。



私を慕ってくれる人たちも、嫌がらせなどをしないようにそれとなく発言を聞かせて。



悪役になって人生を壊されるのが私だけなら甘んじて受け入れますが、家族にまで迷惑をかけては申し訳が立ちません。




と、思っていたのですが。




「この人よ!この人にやられたの!」




テンプレ少女漫画ヒロインであった彼女が、どうして私に指を突きつけ、私が原作よりも多くの男性に睨まれているのでしょう。




……そういえば、失念していましたね。


この少女漫画、魅力的な男性が多かったために、恋愛ゲームにもなったんでした。



「リリィ…いや、リリオ…お前がそんなことをする女だったとはな」


正統派ヒーロー系イケメン担当にして私の婚約者、アゼル・マーロン。


私も貴方が一人をよってたかって責めるような男だとは思いませんでした。


本当に、どうして本物のリリオはアゼルが好きだったのでしょう。



「大人しい顔をして…人は見かけで判断できませんね」


敬語系イケメン担当のジョルジュ・カサール。


ご自分が人を見かけで判断していることを明確にしてくださりありがとうございます。



「どんな悪女でも適度ならイイけど、こういう性格ブスはちょっとね」


チャラ系イケメン担当のアロルド・ロイ。


私もあなたのように下の緩い男はご遠慮願います。



「…最低…謝れ…」


無口系イケメン担当のルーベルト・サンダー。


謝るのはどちらですか。



ふぅ。



一気に語りましたが、覚えなくても結構です。


だって、人を見る目がない方など、対等に扱う必要などないでしょう?



「…私が何をしたと言うのか…教えていただけませんか?彼女と関わった覚えがないもので」



事実、私はヒロインを避けていたから間違いない。



「とぼけるなんて酷いわ!最低!」


なおも私を糾弾するヒロイン。


いえ、ヒロインと呼ぶのもなんだか疲れてきましたので、アンナという名前の方で呼ばせていただきます。



「それでは、このような男性を周りに引き連れて私を糾弾する貴女は最低ではないのですか」



「今はそのようなこと関係ないだろう」



「いいえ、関係あります。人を最低とおっしゃる前に、自分の言動を省みていただきたいもので」



「往生際…悪い」



「あら。してもいないことを詫びさせようとするあなた方の往生際の方が悪いと思いますけど?」



「…埒があきませんね…」



「それならさ、決闘、しちゃえばいいんじゃない?」



決闘。


この学院には、古くからの習わしを忘れないよう、決闘という、どのようなことでも雌雄を決することのできる制度があります。


日本の多数決と同じで、勝者が絶対、敗者は必ず従わなくてはならないルールがあります。



「で、でも…私、怖い…」


びくびくと俯いて震えるアンナ。


ほらほら、口元が笑いを抑えきれていませんよ。



「大丈夫です。アンナが戦うわけではありませんよ」



「ああ、俺が代わりに戦ってやる」



「いえ、その役目は僕が…」



「…謝らせたいのなら、彼女…アンナさんが戦わなくてはいけないのではありませんか」



「か弱いアンナに戦わせようとするなんて、やっぱ性格悪ー」



「……」



「そうではありません。全員で、かかってらっしゃいと言っているのです」


いい加減、堪忍袋の緒が切れました。


一網打尽。


その方が分かりやすいでしょう?



魔法鍛錬場を借りて決闘をすることになりました。


決闘は公式な試合のようなものだから、立ち会いが必要です。



なので、私の親友…のお友達に頼むことにしました。


公平な立場でみてくれる方が必要ですからね。



「…本当に大丈夫なの?」


「大丈夫。心配しないで、シェリー」


「はいはい。ま、リリも見た目に反した強さだから心配してないけど…あなたもしっかり審判してよ?」


「分かってるー」



私の親友、シェリーにいつもくっついている、編入してきたばかりの男の子。猫の耳と尻尾が生えている獣混じりです。



シェリーが決闘について彼にレクチャーして、それで審判をやってくれるのだそう。


…面倒見のいいシェリーには、私もいつもお世話になっています。



「私たちが勝ったら、謝ってもらいます!」


「…なら、私が勝ったら…真実を皆に知らせてもらいます」



そして、決闘は始まりました。


…10分足らずで終わったけれど。



「勝者はリリオ・アイズラント。勝利時の要求は、真実」


「…っ」



言えるはずがありません。


全てが自分の自作自演だなんて。



「私も鬼ではないから、決心がついてから、とします」



「待って。それだと嘘を吐くことも考えられるから…お願いできる?」


「おっけ~ぃ」



彼が手を翳すと、アンナに魔法がかかりました。



「!何をした?!」


「何って、嘘吐いたら本当のことが文字と爆音になって浮かぶ魔法だよ。全部全部暴露されたくないなら、やらないだろ~?ま、オレは興味ないからいいけどね」


からからと笑いながらシェリーの元に戻ってきました。


…本当にシェリーが好きですね。



「…私、そこまでは頼んでないんだけどなぁ…」


「いいじゃん?」


「じゃあ、リリ。私たち先に戻るね」


「えぇ。ありがとうございました」


シェリーたちが立ち去ってから、茫然自失としているアンナ他数名をおいて、私も外に出ました。



「お嬢様」


マルタ・ピント。


私の家の使用人兼私の護衛の青年です。


彼も実は物語の中に出てきていて…唯一その場でリリオの味方をした勇気ある人物。



「何故、俺に黙って決闘などなさったのですか」


「私にも譲れないものはあります。あらぬ嫌疑をかけられて…黙っているのは性に合いませんから」


「…それでも、事前に俺に言ってください」



私のために心を砕いてくれたのでしょう。


ため息を吐く顔は疲れつつもどこか安心した表情ですから。



「ごめんなさい。貴方に相談すると、貴方に頼ってしまうから…」


「頼ってください。俺は貴女のものですから」



私が惚れ込んだ、情熱的な瞳。


…今世の私は、彼に恋をしています。


だから、とっくにアゼルとの婚約は破棄されているのです。



…身分に関係のない世界でよかったですね。


とはいえ、女から婚約破棄された人間がどんな目で見られるのか、分からないわけではないでしょうけど。



そして、彼女たちは知る由もありませんが…。


前世の私は異性を含む友人たちから、”リアル格ゲーキャラ”と呼ばれていました。


それほど、武術が好きで、特技でした。



だから―所詮少女漫画や恋愛ゲームのぶりっ子女とモヤシ男なんかに負けるはずがないんだよ。



魔法学院物語シリーズからの登場は二人。

シェリーはシェリアのことで、獣混じりの少年はタクトのことです。


書いてて楽しかったです。

それでは。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロイン屑vでもそこがいい! 普通に逆ハーきづいていたので満足していればよかったのに皆にかばわれ愛されている私!ってのがやりたかったんだろうな。 ヒロインとその取りまきの男性陣はどんな顔し…
[一言] 寧ろ、これからが楽しそうなのに! どうか続きをお願いします。
[気になる点] 誤字報告です。 あらすじの、人生の<膜>をおろし→人生の<幕>をおろし だと思います。 [一言] 楽しく読ませていただきました。 これからもがんばってください。
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