神の指図
「やってくれるな」
「はい、我が命に代えても」
神前騎士団の団長となってから、はや数年が経っていた。
この神前騎士団というのも、不思議なもので、神がいない間にその玉座を守ることが目的に作られたものらしい。
当然、天国に本部があるが、地獄の神も、守護範囲になっているため、地獄には支部があった。
俺はその団長として、本部に常に詰めている。
といっても、週に1回は完全オフがあるし、一日8時間、たまに12時間ほどの労働時間だ。
今回の頼みは、天使たちに命ずることがあるので、一旦玉座を離れるため、その守護をせよと言うことだ。
神からの直々の頼みに、俺は従わざるを得ない。
と言うのも、俺が天国にいるのも、騎士団長なのも、全ては神の采配だからだ。
「お前は左に、お前は右を見張れ」
「はっ」
副団長は二人いる。
その二人は片方は天国で俺の補佐を、もう片方は地獄で俺の代理をしている。
だが、玉座を守る時には、副団長を二人とも天国へ呼んで、俺と一緒に守ることになる。
ちなみに、上席なのは天国の方の副団長で、上級副団長と呼ばれていたりする。
「誰か近づいてきたら、遠慮はいらんから威嚇攻撃をせよ」
「了解しました団長」
今では、すっかりと副団長として二人は元気にしている。
「…そういえば、最近、神がいなくなるのが増えたな」
「もうすぐ計画が発動するからじゃないですか」
「計画?」
上級副団長の言葉に、俺は聞き返した。
「知らないんですか団長。神の計画って、始動したらしいんですよ」
「知らんな。どんな計画なんだ」
守ると言っても、玉座を狙うのはいない。
天国にあるからだ。
だから、こうやって大概雑談で時間を過ごす。
「なんでも、この世界をもう一度作り直すってことらしいです。ただ、ホントのところは謎なんですがね」
「謎か…いいな。面白そうじゃないか」
とはいっても、なぞ解きは苦手だ。
だから、この話はここまでとなった。
1時間後、神は帰ってきた。
「お帰りなさい」
玉座に紙が座ったのを見届けて、俺たちの守護任務は終わった。