プロローグ
この物語は、作者の完全なるフィクションです。
2012年12月20日、23時59分。
今日も一日が終わり、もうすぐ次の日を迎えようとしていた。
人々は、思い思いに自分の時間を過ごす。
見たかったDVDを見る者。風呂に入って疲れを癒す者。夫婦で遅い晩酌を楽しむ者。とっくに就寝してる者。
しかし、そんな人々の心の片隅に、僅かにだが、そういえば明日、この世界が終わる日だなんていってた人もいたよなぁ、という記憶があった。
もし、それが本当なら、自分の命は後、1分ぐらいか? ははは、まさかな。
いや、21日に滅亡って事は、21日である24時間中なら、いつ滅亡してもおかしくないのか……。なんて考えたりして、なんとなく空を見上げてみたりする者もいた。
過去にも、世界が滅ぶといわれていた日があった。
滅亡してしまうくらいなら、今まで貯めていたお金を全部使ってしまえと、豪遊した人もいたとかいないとか。
だが、結果は何も起こらなかった。
豪遊してしまった人たちは、滅亡していない世界を見て立ち尽くしたのだろうか。
今からでも遅くない、滅亡してくれ! と天に祈ったのだろうか。
その人たちは今……。
いや、そういう番組ではない。
事が起こったのは、2012年12月21日、0時0分。
その日になった瞬間、宇宙からドデカい光の柱が日本に降りて来て、夜は昼へと姿を変えた。
それを見た者たちは、あの説は、マジか!? これが世界の終りの光景なのかと思った。
だが、それで世界が終わる事はなかった。
ただ、その舞い降りて来た光から澄み渡る声が響き渡り、世界中にメッセージを伝えた。
「地球はたった今、この時をもってアセンションした。
アセンションとは次元上昇という意味である。
これにより、競争社会は終わりを告げた。
他を蹴落として、自分さえ良ければと独り占めしている者は、今後生きづらくなるだろう。
今のままでは、世界中の8割の会社は倒産する。
成功したければ、 自分も楽しいけど相手も楽しいということを目指せ。自分が心安らぎ、心地よいと思うことをやり続けよ。
しかし、これは今までの生き方とは違う。無理にとはいわない、自らの意思で選び取るのだ。
日本の大和の心、和の心だ。
星の子たちよ、これに続け」
そういった後、光の柱は、宇宙へと引き揚げて行った。
そして、世界中は大騒ぎになった。
特番のニュースでも録画された映像が放送され、評論家が意見を交わしていた。
悪戯というには規模が大きすぎるし、世界中の人々の頭の中へメッセージを送るという技術があるなんて聞いたことがない。それにあの降りて来た光は何だ。
信じたくはないが超常現象かという声も聞こえた。
評論家も、なんと答えていいか良くわからない者が多いようだったが、資本主義の終わりという事についてだけ、そんな事はありえないと口から唾と泡を飛ばしていた。
世間がそんな騒ぎになっているとは、露知らず。ここに横たわって苦悶の表情をしている男がいる。
大変苦しそうだ。
そう、この男……無呼吸症候群だ。
世間の騒ぎとはなんの関係もない、持病だ。
こんな事になった理由は簡単。
……肥満だ。
男の名は、朝比奈 恵太23歳
身長193センチ 体重157キロ
大学時代は相撲部で、かなりいい所まで行ったが、自分がモテない原因は相撲だと思い立ち、大学までですっぱり辞めた。
そしたら、就職先もすっぱりなくなった。
現在は、ハローワーク通いである。
「ッ! ガハッ! ハッハッハッハッ……ハァ~。……すぅすぅ」
そして今、4分近くも息をしていなかったが、なんとかまた呼吸することが出来たようだ。
しかし、そんなことは、どうでもいい。
なぜ今この男を紹介したかというと。
先ほど起こった現象、アセンションによって、日本に住む、この恵太の身体にだけ、ある変化が起こった。
癒しの力、所謂ヒーリング能力の発現である。
死者を生き返らせることは出来ないが、怪我人、病人などの不調を、患部に手を当て力を込める事によって治癒することができるのだ。
そう、この物語は、ヒーリング能力に目覚めた元相撲部の太っちょが、アセンションした地球で生活していく話であーる。